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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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「幸福な乗員とは(腹が)満たされた乗員だ」〜戦艦「マサチューセッツ」

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戦艦「マサチューセッツ」艦内には、特別にメモリアルルームや
「戦時の女性たち」「PTボート」などのテーマにそった展示がありますが、
それとは別に所々に戦時資料などが飾られてあったりします。

この「日本軍の双眼鏡」もその一つ。
解説によれば、インドネシアはボルネオのバリクパパンで、
アメリカ海軍のモーター魚雷艇部隊36が鹵獲したものです。

バリクパパンというのは、18世紀末にオランダの石油会社が油田を掘り、
以降石油の産地として発達した街でしたが、1942年1月10日、同島の
タラカンを占領した日本軍が2週間後に占領しました。

このとき海軍は軽巡洋艦「那珂」を旗艦とする第4水雷戦隊の他哨戒艇、
そして掃海艇によって輸送船と揚陸の援護を行いました。

このとき泊地に侵入したアメリカ海軍の駆逐艦4隻の攻撃によって
輸送船「南阿丸」を沈めましたが、(バリクパパン沖海戦)
日本軍部隊のバリクパパンへの揚陸を阻止することは出来ませんでした。

ちなみにこのとき船団の一隻に主計中尉として乗り込んでいたのが、
のちの内閣総理大臣中曽根康弘でした。

wiki

その後日本軍は輸送船を使い2月10日にバンジャルマシンも無血占領。
これによってボルネオ島はほぼ日本の制圧下に置かれることになります。

幾つか行われた連合国軍と日本軍との戦闘の間で、この双眼鏡は
アメリカ軍の手に渡ったと言うことなのだと思われますが、
その説明に、こうあります。

「石油の産地で日本軍が侵略するまでは
オランダの石油会社がコントロールしていた」 

日本人としては、産油国からの日本への石油の輸入を遮断した
ABCDラインのDがオランダだった、ということ、そもそも
インドネシアを最初に侵略したのはどこだったのかということも
全くなしでこういう言われ方をすることには大変抵抗ありますがね。



さて、あらためて双眼鏡を見てみましょう。
口径は10cm〜15cmといったところでしょう。



俯仰角の調整ができることから、対空用であると思われます。



暗くてなかなか焦点を合わせることができない中、
なんとか製造プレートを見つけて撮ることに成功しました。

十二糎高角双眼望遠鏡

三脚架 第四十八號

日本工学工業株式会社(不明)製造

昭和14年11月

やはりニコン製、海軍の対空哨戒用であるらしいことがわかりました。





艦内のいたるところには展示用のガラスケースがあります。
左側は誰でも知っている、猛将ウィリアム・ハルゼー提督。
(まあ、山本五十六がどこにいるかわかる?といわれて
コンマ秒で指さしたら、『なぜわかるの』と驚かれたことがある
わたしとしては、ここでの常識が決して世間一般の常識でないのも
よーっくわかっておりますが)

右側はトーマス・キンケイド海軍大将。
まあこの辺になると「聞いたことがある」程度でも許しましょう。(何様?)
第7艦隊の司令としてレイテ沖海戦に参加した司令官で、
終戦と同時に大将に昇任しています。

では真ん中は?
ヘルマン・ゲーリングに少し似ているけど、こんな人見たことないぞ。

Jhon Hyes Hanly

名前も聞いたことがないし。

でも、まわりにずらりと並べられた勲章の数々は、明らかに
このリア・アドミラルの戦功に対してアメリカ海軍から授与されたもの。
ブロンズスター、パープルハート、アメリカンディフェンス、アメリカンキャンペーン、
アジアティック・パシフィック・キャンペーン、第二次世界大戦、
アメリカ海軍忠実勤務(フェイスフルサービス)勲章・・。

なのに、いくらぐぐっても出てこないんだ。この人の名前。
この人をかたどったメダルまであるのに、なぜ?



これなど、

右、太平洋で使われていた竹製阿片用パイプ

下、現地のスールー族の酋長がハンリーに送った手彫りの刀の鞘

左、同じく、刀の鞘

スールーとは南東フィリピンにいた部族です。
それはともかく、これすべてハンリーグッズなんですよ。
誰?ハンリーって誰?
それになぜアメリカ軍人が阿片のパイプを持っていたの?



しかしわからないのでスルーして次に行きたいと思います(おい)

さて、そこで、通路の上側になにやら説明を見つけました。
どうも右側のスピーカーから聞こえて来る、エンターテイメントの説明のようです。

艦内娯楽システム

艦内の娯楽として、士官及びおよび下士官兵には、非番の時はもちろん、
作業によっては任務中も好きなラジオ放送をセレクトして聞くことが許されていました。
ラジオの個人所有は許されていたりそうでなかったりと様々で、
(ゆるかったんですね)中央に設置された受信機からここにあるような
スピーカーで放送を聞くことができるように配信されていました。

スピーカーは乗員用には人が集まる共通の場所に設置されており、
士官の部屋にはそれぞれ個別のスピーカーが備え付けてありました。

通常、ニュースや音楽といった放送はこのシステムで放送されていましたが、
乗組員たちがこっそりと聴きたがった超人気の番組があります。

それは「トウキョウ・ローズ」でした。

「トウキョウ・ローズ」は個人の名前ではなく、
日本人と日系アメリカ人で構成された、連合国側に対して
プロバガンダ放送を行うブロードキャスターの「総称」で、
アメリカ兵の心を惑わせ、戦闘意欲を無くさせるような放送を行いました。

ある「マサチューセッツ」の乗組員はトウキョウローズについてこう言っています。

「もし自分たちがどこにいるかとか何をしたいかを知りたいと思ったら、
すべきことはたった一つ、トウキョウローズを聴くことだった」



もともとこの放送は、日本にいる連合国の捕虜が、
本国の家族に向けて手紙を紹介するという内容で行われた

「ゼロ・アワー」

という番組でした。
男性アナウンサーはその経歴を持つ捕虜が放送を行い、女性の方は
日系アメリカ人など、数人がいましたが、名前が分かっていて、
戦後裁判にまでなったのは、

「アイバ・戸栗・ダキノ」(1916〜2006)。

ゼロ・アワーは終戦前日の8月14日まで行われ、特に太平洋戦線の
アメリカ兵に大変人気となりました。

「トウキョウローズ」という愛称は日本側ではなく、これらアメリカの
兵士たちによって誰言うともなく付けられたもので、若い男性である彼らは
その蠱惑的なため息に胸を躍らせたものでした。



さすがはアメリカの軍艦。
「マサチューセッツ」には専属バンドがありました。
音楽隊として入隊したのか、それとも楽器のできるものが志願したのか、
その辺については説明されておりません。



800人も人がいれば、バンドぐらい組めてしまうのがアメリカ。
これを見る限りかなり本格的な構成です。



捕虜の中にプロのアナウンサーが何人も見つかるくらいですから、
元プロという人を集めてもこれくらいできたのかもしれません。
バンマスというか指揮者は下士官っぽい雰囲気ですね。

こういうバンドにはなぜか士官が加わることはないようです。



さらに進んでいくと、アメリカのIKEA (イケアじゃなくアイケアと読んでね)
のレストランにあるような、また飛行機で食事を運ぶような
トレイケースが見えてきました。 



あら、いつの間にかさっきと反対側のgalleyに出てきたんですね。
一人で立っている水兵さんが向こうに見えています。

こちらにあるメニューは向こうと違って、ベーコン、ポテト、
そしてパン。
まあ、いずれにしてもアメリカ人の食べるものって感じです。
もう少しポテト以外の野菜を食べようよ。野菜を。

ここで、当キッチンの調理係だったハロルドさんが一言。



「俺のギャレーに食べに来る水兵は、みんな
”お皿を(なめて)綺麗にするクラブ”のメンバーだったぜ!」






このあたりは、ベーカリーや食器洗い場などがあります。



これは、パンを作るための「フラワーブレンダー」。
厳密に分量が決まっているのか、機械の上に書いてあります。

水、塩、ショートニング、小麦粉、ベーキングパウダー。

「必要に応じて粉ミルクも入れる」

アメリカのパンなんて、どれも同じだと思うんですが・・。
(砂糖の入ったあの柔らかいパンかホットドッグかハンバーガーのバン)



左側にずらりと並んでいるのは電気パン焼き器でしょう。
向かいはドウを寝かせておくスペースではないでしょうか。



パンが焼きあがってオーブンから出したところ。
いい匂いがいかにも漂っていそうですね。 



ベーカリー

このスペースは「マサチューセッツ」のベーカーが粉を混ぜ、
クルーのためのパンやパティスリーを作ったところです。

夜にここに来ると、焼きたてのパンがオーブンから出てきて、
試作品などを味見することもできたので、乗組員たちの人気のスポットでした。

パンやパイを焼く魅惑的な香りは水兵たちの食欲を刺激します。
食欲の満たされた乗組員は幸せな乗組員である。
さればこそ、調理員やパン焼き係は、 彼らを喜ばせることを目指しました。



続く。


 

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