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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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「いせ」と「かが」〜護衛艦「いせ」転籍壮行行事

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さて、カラオケの話が前回意外にに盛り上がりましたが(笑)、
カラオケの効用といいますか、乗組員の皆さんのオフの顔を見たことで、
なんといいますか、お見送りするのにぐっと思い入れが深まった気がします。

壮行行事が終わり、乗員が乗り込んでいった後、佐世保に向かう「いせ」は
出航に向けて作業が行われています。

ラッタルは機械操作でハッチに収納されていきます。

もやい杭にかかったもやいの輪を3人がかりで外します。

一度岸壁から海を覗き込んでいますが・・・・

3人で輪の部分を運んでいきます。

ただ外すだけでなく、色々とポイントがあるようです。
わたしがこの作業を写真に撮っている間に舷側に登舷礼の列ができていて、
声がかかりました。

「帽振れ!」

甲板上で帽振れを行う乗員はほぼ全員が海曹たちでした。
少なくとも海士は一人も見えません。

こちら艦橋から後ろの甲板。
彼らの前にある盾のような形状のものは、後ろにある物体の「蓋」だと思うのですが、
これは展開式の救命ボートですか?

ベテランの海曹長の横にまだパリパリの三等海曹がいるという・・。
こういう時の並び方は特に階級に厳密ではないのかも・・。

むむっ、この左の女性士官は確か昨日の懇親会でお見かけしたような。

懇親会には、これも士官の任務ということなのか、先任伍長以外は全員が士官で、
艦長の一佐を筆頭に三尉まで、全階級を網羅していました。

そのうち女性は水雷士の二尉と通信士の三尉。
彼女は水雷の方ですが、先ほど壮行行事で隊員に号令をかけていたと記憶します。

彼女と少し話したのですが、今水雷には結構女性が多いということでした。
もう一人の女性士官は「通信士B」と役職が書かれており、
同じ三尉の男性が「通信士A」だったので、彼女と話をした時、
なぜBなのかを尋ねたところ、「Aが上司」だということでした。

彼女は結婚しておられましたが、夫はやはり同じ水上艦勤務で、
少し前に「いせ」に乗っていたとのこと。

「ということは入れ違いですね」

同じ艦艇に夫婦が割り当てられることはまず自衛隊もしないでしょうが、
だからと言って夫と妻が転勤ですれ違いっぱなしというのも・・・。

「佐世保では部屋を借りるとかされるんですか」

と聞くと、なんと答えは「船に住みます」でした。
別の士官の奥様は、転勤先には必ず付いてきてくれるということです。

「でもまあ、子供が学校に行きだすといちいち引越しするわけにいかないので、
単身赴任になってしまいます。
そんななので、うまくいかなくて離婚する人は多いです」

「そうなんですか・・・・」

これを聞いて、迂闊に自衛官に結婚しているかと聞くことはやめておこうと思いました。




ところで例のカラオケの時、同席した士官がわたしと鉄火お嬢さんに、

「水雷士(わたし)と通信士(鉄火お嬢)」

とふざけて任命してくれたんですが(笑)
それだけどちらも女性が多いってことなんでしょうかね。

この間にも「いせ」の艦体は岸壁を離れ始めます。

「帽振れ」が終わった時にはすでに岸壁から10m以上離れていました。
昨日懇親会で、「出航準備で大変だった」と幹部がいうのを聞いたのですが、
こうやって岸壁から離れるまでに、いくつもの用意と手順と確認を踏むのです。

ただ舵をとって動かせばいいというものではないのですが、
もちろん外の我々にはそういったことは一切見えません。

完璧に岸壁を離れ、わたしのいる位置から普通レンズで艦全体が捉えられるようになりました。
これが個人的にDDHがもっともかっこよく見える角度だと思います。

途端に支援船、YTをつけたタグボートがやってきます。
タグボートが「ご安航を祈る」の信号旗を揚げているのに気づき、笑みがこぼれます。

しずしずとバックしていく「いせ」を見守るように、
回頭するポイントまでタグボート二隻が両側を併走していくと、

「『いせ』はこの後転回していよいよ出航となります。
皆様、どうぞ前方の岸壁に移動してお見送りください」

とアナウンスがありました。
早速全体が突堤の端まで大移動を始めます。

袖にベタ金の幹部たちも移動中。
「いせ」の同じ岸壁には「さざなみ」が停泊しているのですが、この時
ブルーの作業服の乗組員たちも全員艦首側に移動しているのに気づきました。

「いせ」の乗員と地上の自衛官しか目に入りませんでしたが、
「さざなみ」からもお別れの帽振れが行われていたんですね。

二隻のタグは、一隻が艦首側、一隻が艦尾側を押して、
「いせ」を左回転させるつもりのようです。 

「いせ」がいなくなったので、向かいの岸壁が見えるようになりました。
なんと、練習航海真っ最中の「かしま」がいるではないですか。

江田島で出航をお見送りした練習艦隊旗艦「かしま」、あの後
九州まで行き、それから瀬戸内海を神戸まで行って、呉に帰ってきていました。
この後舞鶴、大湊、北海道にも行って、そのあとは遠洋航海に出発する
横須賀に5月には入港する予定です。

昭和埠頭の入り口からこの岸壁まで歩いて来る途中、車が追い越して行き、
中からどなたかがご挨拶してくださっていたのですが、後から聞くと
それが練習艦隊司令の眞鍋海将補であったようです。

この写真を拡大すると、どうやら一番左が眞鍋司令である模様。
「いせ」見送りのために乗艦されたのかもしれません。

タグボートが健気にお仕事中。
「いせ」が転回してちょうど真正面を向いた時に撮りました。

いつのまにか登舷礼が左舷に移動しています。

登舷礼をみると、よくもこうきっちりと等間隔に
間違いなく並ぶものだといつも思います。

登舷礼は英語で”Manning The Rail”といいますが、英語の「Rail」は
「舷側」と考えて、直訳すると「舷側の仕事」みたいな感じですかね。

これはもともと、帆船時代にそういう場合にはヤード(セイリング)
に立つ儀礼を "Manning The Yard "と言ったことから転じています。

Manning the yard

こんなところに立って出航しなきゃならないなんて、
帆船時代の船員も大変だ。

こんな巨体を小さな二隻で回してしまうのですから、曳船のパワーってどんだけ。
例えば「ロナルド・レーガン」などの空母を動かすのも、
たった二隻のタグボートだといいますから驚きますね。

やはりそういう役目のため、曳船はトルクバリバリの
1万馬力くらいのエンジンを積んでいるのだそうです。

「いせ」が完全に左舷側を見せました。
艦橋が間にないので、全く途切れない綺麗な登舷礼ができています。

それにしても人と人の間の距離、どうやってこんな短期間に等間隔に取れるの。

もう一度、「帽振れ」の声がかかりました。
回頭して今度こそ本当の出航です。

岸壁の全員が手や帽子を降って「いせ」を見送ります。
「さざなみ」乗組員も帽振れしてますね。

向きを変えてもしばらくの間、曳船は近くを離れません。
まるで、

「もう大丈夫かな」

と見守っているように見えます。

 

「いせ後援会」の他にも水交会や隊友会など、支援団体がお見送りしていました。
これは防衛大学校同窓会の旗。

そうそう、岸壁で出航準備を待っている時、

「昨日はどうもありがとうございました」

と声をかけてきた女性がいました。
誰かと思ったら、二次会でカラオケをしたバーのママさんでした。
そういえば隊員の皆さんに

「明日見送りに行くからね」

と言っておられたのを聞いた覚えがあります。

わたしはこういうのをすぐに海軍と結びつけてしまうのですが、かつて
軍港に店を構える置屋で、海軍御用達の料亭に務める芸者のことを

「ネイビー・エス」(エスはシンガーのS)

と言い、彼女らもまた艦隊の見学に行ったり、また出航の時には
見送りに行ったものだそうです。

彼女はこういう時には必ず隊員の門出を見送るのが常で、
そのために水交会にも入っているということでした。

曳船が離れていき、「いせ」が遠ざかっていきますが、
登舷礼の列はずっとたち続けています。

「いつまで立ってるんでしょうね」

「多分完全に港を出るまででしょう」

「いせ」のこちら側を、ピンクの塗装をした船が通り過ぎました。

「おんど2000」という瀬戸内で活動している海面清掃船で、
浮遊するゴミや油の回収・清掃業務を行うだけでなく、
水質・底質の健全度を調査し、データを取って公開しています。

今日はこれからどこに行くのでしょうか。
くっついているといいことがあるのか、鳥が一緒に飛んでいました。

突堤に来て初めて気づいたのですが、沖合になんと!

「かが」がいます。
レディかが、お姉様が出て行った後、同じ岸壁に入れ替わるつもりか?

この写真を拡大してみたら、岸壁からは肉眼では見えませんでしたが、
「かが」にもちゃんと登舷礼ができていました。

「いせ」は後をよろしく頼みます、と、挨拶をして往ったんですね(´;ω;`)ウッ

さて、いつまでも見ていたいところでしたが、S一佐から車で
次の場所まで送ってくださるというお申し出をいただき、
ありがたくお言葉に甘えることにして、入り口まで歩いて戻りました。

潜水艦が今日はいっぱいいいます。
この中のどれかが、この間引き渡しを見送った「せきりゅう」のはず・・。

奥の「かしま」と練習艦隊僚艦である「やまゆき」(3519)
向こうに同じく「しまゆき」(3513)がいます。

練習艦隊ともまた横須賀で会えるといいなあ。(願望)


さて、というわけで「いせ」のお見送りは終わったわけですが、
わたしたちの「呉」は、まだ始まったばかりなのだった(笑)


続く。

 

 


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