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アンカー・ウィンドラス・ルーム〜重巡洋艦「セーラム」

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戦艦より階数が少なくコンパクトな重巡は、一つのフロアに
実にいろんなものがあり、特にセカンドデッキと言われる
甲板の下の階は、士官にとっては衣食住医療娯楽全てがそこで賄える場所です。

それだけでなく、セカンドデッキには錨を巻き上げるためのウィンドラス画ある
アンカー・ウィンドラス・ルームというものもあります。

錨は艦首にあるので、この区画はどんな船でも同じ場所にあるのですが、
セカンドデッキにあるのが普通かどうかはわかりません。

戦艦「マサチューセッツ」のように懇切丁寧な説明がついていない「セーラム」ですが、
なぜかこの区画だけは非常に細かく解説がなされています。

まず

USS「セーラム」は二つの錨が装備されている
いずれも22,500パウンド(10トン)の重さで、
「バウワー・ストックレス」タイプである 

そしてこの部屋についての説明が。

この区画にあるのは2基の「アンカーウィンドラス」に関する機械で、
鎖を上げ下げするためのものである

 

それぞれのアンカーウィンドラスは水圧ポンプ(C)で動かされ、
それがウィンドラスの上にマウントされているモーター(H)を動かす

それぞれのアンカーウィンドラスは「ワイルドキャット」(シャフト、F)を動かし、 
主錨の巻かれた「スプロケット」(歯車)、あるいは
ロープを繰り出すための大きなキャプスタン(G)を動かす

電気モーターが直接強力にキャプスタンを動かす代わりに
水圧モーターがそれを行う
二つのワイルドキャットはそれぞれ一つの錨を360フィートの海底から
1分間に36フィート同時に引き上げることができる

それぞれのキャプスタンは40,500パウンドの重量を
10インチのマニラロープで1分間に134フィート引き上げられる

「8ウェイトランスファーバルブ」Dはウィンドラスを動かすためのポンプに
一つづつ繋がっているが、これは余剰性があるので
例えばポンプが一つ壊れても、もう一つのポンプで二つのウィンドラスを
(同時にできるかどうか知りませんが)動かすことができる 

ウィンドラスは通常「シップ・カーペンター」によって操作が行われる

ということです。
Cはかろうじて左上に見えますが、Hが写っていないのは残念。

アルファベットが写っているだけ説明すると

J フリクション・ブレーキ ウィンドラスのスピード調整を行う

K フリクション・ブレーキ・ハンドル ハンドルそのものはメインデッキにある

I  メイン・リダクション・ギア

電話より直接的に連絡を取るもののように見えます。
(右下のプレートにはいくつかの部署の"A-312-T"などという番号あり) 

「オフィサーズカントリー」というのはもちろん正式名称ではなく、
地図によるとこの部屋はウォーラントオフィサーの部屋です。
その隣がCPO(チーフ・ペティ・オフィサー) 下士官トップの部屋。

自衛隊だとそれぞれ「准尉」「海曹長」となります。

扉が閉じられており説明もありませんでしたが、地図によると
ウォーラント・オフィサー・メスということでした。

おそらくこの中に大きなテーブルがあり、彼らが従兵にサーブしてもらって
食事をする場所なのだと思われます。 

ウォーラント・オフィサーの部屋。
各部屋に二人が同居することになっていたようです。

大きな換気パイプが部屋のベッドの上を横切っていて、よく見ると
穴が空いて空気が出てくる仕組みになっています。
パイプには「ベント・サプライ」と書いてあるのが見えます。 

ちなみに、前回にも言いましたように、米海軍で初めて空調設備がついたのは
この「セーラム」の妹艦である「ニューポートニューズ」からです。
当然「セーラム」には空調はなかったことになりますが、つまりこれが
クーラーの代わりだったということでよろしいでしょうか。

ウィンドラス・ルームを中心に、艦首部分のセカンドデッキには
右舷に士官、左舷にウォラント・オフィサーの居室が集まっています。

この区画に、かつてセーラムのチーフウォラントオフィサーだった
ジョン・シャイファーの思い出のために、という銘板がありました。

我々の僚友でありセーラムのレストアに多大な寄与をし
そして惜しみなく助言を与えてくれた


下に続く細いラッタルがありましたが下は真っ暗。

士官の個室です。

エンジニアオフィサーも個室がもらえたんですね。
デスクの上には魔女が箒に乗って飛んでいるシルエットが書かれた

「ウィッチズ・ブリュー」(魔女のコーヒータイム、みたいな?)

という艦内のお知らせパンフが置いてあります。

 

「チャプレン」、つまり従軍牧師の個室。

従軍牧師は軍属、あるいは士官の階級を持っていることもありますが、
戦時国際法では衛生兵と同じように国際保護資格を有します。
軍人ではあっても非戦闘員、さらに赤十字によって保護される対象です。
 

従軍牧師の役割というのは

礼拝や教育、記念行事などの宗教に関連する式典の執行
戦場や医療の現場で臨終の人員を見取る

宗教教育や統率訓練、部隊や将兵に対する精神面からの支援など

多岐に渡ります。
息子の学校には専門のチャプレンが勤務していますが、
例えば学校で大きな事故があったとき(生徒の不慮の死や自殺など)
には生徒の精神的なケアを行うために待機し、学校側からも
問題があったらチャプレンに相談に行くように、と指示があります。

従軍神父は「特殊で高度な技能の持ち主」(wiki)として扱われるため、
例えば潜水艦ですら艦長と同じ個室待遇を与えられます。

しかし、特権階級にはノブレスオブリージュが伴うもので、従軍牧師たちも
いざという時には自分の命を犠牲にして兵の命を救うことがありました。

以前このブログでもご紹介しましたが、陸軍輸送艦に乗り組んでいた4人の司祭が、
Uボートに攻撃されて沈みゆく艦の上で乗組員の救助活動を行い、
最後は自分の救命胴衣を渡して艦と運命を共にしたということもあります。

四人の司祭


余談ですが、MKに「フォー・チャプレンズ」って知ってる?と聞くと、

「知らん。アカペラグループ?」

ちげーよ。


自分で産んでおいてなんですが、こいつは絶対にわたしの子だと確信しました。

従軍神父は赤十字に登録し、同じ扱いを受けることとなっていました。
このブラッドリー神父は、硫黄島の戦いそしてベトナム戦争にも参加しています。

検索すればいくつも動画が上がるくらい有名な神父だそうですが、
「セーラム」に勤務していたこともあったのでしょう。 

 

「チャプレン〜神聖なるサービス」

というメモには、従軍司祭についての任務の詳細が書かれています。
大きな船には必ず一人は神父が乗り込むことになっており、
彼らは多くの場合コマンディングオフィサー( 佐官クラスで艦長と同位)
の階級を与えられていました。

いかに従軍神父がキリスト教国家のアメリカで尊敬されていたかがわかります。
文章の最後にはこのような言葉が・・

「神無くして生きることは、すなわち困難な道を歩むことに他ならない」 



続く。

 


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