ところで、習志野駐屯地演習場の極寒に耐えたあと、
立ち上がった時には足首から先の感覚がほぼなく、
寒い時に人が寝るとなぜ死ぬのかよくわかったような気がしました。
ジンジンする痺れがましになったのは車まで戻り、
イオンタウンのなんとかいうご飯屋さんで遅昼を食べ、
暖かいものを体に入れ終わってからのことです。
秋田のスキー場のランタン祭りですらこんな辛くなかったのに、
ひとところでじっとしてると寒さというのはこんなにも凶暴に
人の体力を奪うことを改めて体で知ったといいますか。
ところで日本の昼間でこんな辛いのに、平昌五輪って大丈夫なの?
しかも開会式は夜らしいけど、下手すると低体温症で死ぬよ?
迫撃砲が2基、フィールドに設置され、支援のための陣地が構築されました。
前に置いてあるスコープは狙いをつけるためのもの?
と思っていたのですが、これが何かはあとでわかります。
盛んにどんぱちやっているのでもう攻撃は始まっているようです。
彼らは赤軍の部隊の進攻を支援するという任務です。
偵察部隊の偵察の後、赤軍が進撃を開始しました。
説明が聞こえないのでこちらからは状況が全く見えなかったのですが、
招待席にいた知人(陸上自衛官の父上)から後で訓練について
メールで教えていただいたところによると、
「レーザーを用いた交戦装置、通称バトラーでの模擬戦」
だったことが判明しました。
しかもこの模擬戦、「赤が自衛隊、青が仮想敵国」ではなく、
完全にガチの模擬戦?で、シナリオはなかったようなのです。(え、あった?)
バトラーとは、小銃などに取り付けられた発射機(プロジェクター)から
発振されたレーザー光線を受光機(ディテクター)が感知し、
命中弾を判定する装置のことで、正確には
レーザー交戦装置、交戦用訓練装置
(自衛隊呼称:BAttle TRaining Apparatus:BATRA、通称:バトラー)
自衛隊の装備です。
BATRAならば英語圏なら「バートラ」とか「ベイトラ」と発音しそうですが、
両者よりはバトラーがかっこ良さげに聞こえるかもしれません。
この装備は、陸戦訓練を行うときに銃器に取り付けた光線発射装置により、
実弾を使用することなく実戦同様の交戦訓練を可能にしてくれる機材で、
これで陸自の人は演習の時、口で「ばんばーん!」とか言わなくてもよくなったのでは、
と彼らのためにその開発導入を喜んでいる次第です。
しかも装着可能な装備は小銃だけではありません。
機関銃・無反動砲・戦車・攻撃ヘリコプター・対戦車ミサイルの発射機、
全てにこの搭載が可能で、しかも戦車などの車両では、射撃時に
擬似的な発射音や煙を発生させる補助装置
が使用できるので、訓練していて気が削がれることなく、
割と実弾に近い射撃練習が行えるという優れものの装備なのです。
それだけではありません。
攻撃の内容だけでなく、バトラーはリアルタイムで訓練部隊や隊員の位置、
死亡者、負傷者数など被害が統計、記録されるという近代らしいシステム搭載。
バトラーは基本富士トレーニングセンターでの訓練に使われているということなので、
空挺団へは降下始めのために貸し出されたということでしょうか。
ところで、招待席から見ていた方の解説によると、この後
「んーんっ!優勢と思いきや丘の手前で堅固な青軍陣地に苦戦中!」
となったらしいのですが、もちろんわたしたちのところからは
説明も聞こえないので何が起こっているかわかりません。
チヌークがやってきてはリペリング降下によって兵員を追加していきます。
(この後の写真は失敗///)
こちらは青軍の部隊だったそうですが、赤軍が展開している陣地より
後方にあるので気づかれていないという設定。
なぜか白いヘルメット?の偵察が二人物陰に潜んでいました。
後方に侵入した青軍が前進するための偵察を行っていたようです。
招待席とその周りに立つ案内係の自衛隊員の人垣越しのアパッチ。
この写真でも確認できますが、ローターの周囲は巻き上げられた土で
土色に煙っています。
この高さにだけ土色の帯ができる理由はわかりませんでした。
チヌークからこちらにもリペリングで人が降りるようです。
後からメールで知ったところによると、これが青軍のヘリで、
これからリペリングで大量投入された部隊による強襲があったそうです。
え?もしかしたら本当にシナリオなし?
どうしてアナウンスが聞こえにくいかこの写真を見てわかりました。
ボーズのこの小さなスピーカーを、しかも向こうを向けて設置してあるのです。
スピーカーが何個かはわかりませんが、これではこちらには聞こえません。
おお!陣地を死守する赤軍の前、素手で仁王立ちになる兵士がいる。
とかなんとかやっているうちに、決着がついたようです。
赤い旗があるここは赤軍の本部だったのですが、右手からきた青軍の
急襲部隊によって、今制圧されたのでした。
青軍が戦国時代のような幟を持っているのですが、
これを持って攻撃したってことなんでしょうか。
結局最後まで戦車は投入されませんでした。
実を言うとこんな広いフィールドなのに人間が走り回るのが基本なので、
なんか豪華なサバゲーを見学しているような気分だったのですが、実際に
「レーザーが当たればその場で戦死」
と認定されるというシステムの上でまじでやっていた戦闘だったのです。
「サバゲーみたい」じゃなくこれは本格的なサバゲーだったことが判明しました。
なんでも、その死傷率は両軍60パーセント超えると言う結果だったそうです。
♪ ソードソードミードミードソミドミドソド〜(状況終了)
現場では何がどうなったのかわからないままでしたが、ともあれ青軍が勝ちました。
偽装車はこの時になって初めて動き始めました。
模擬戦中、中で寝ていた人もいたと思う。
ところで前回この車のことを、もふもふしているから「モフ車」と呼びましたが、
「カ”モフ”ラージュ」から取ったのではなく、ただの偶然です。
先ほど小走りに皆の前に現れた小隊は、その間ずっと胡座をかいて待機。
隊長はずっと膝をついて同じ姿勢でした。
こういう時には体育座りをするものだと思っていましたが、
体育座りを想像してみるとちょっと迫力?に欠けるかもしれません。
さて、この人たちは何かと言うと、空挺隊員です。
第一空挺団なんだから当たり前なんですが。
ということは、全員落下傘降下を体験している人たちな訳です。
何をするためにここにいたかというと、飛行機から降下のために
飛び降りる時の姿勢、空中での姿勢を実演してくれるのです。
「降下始め」ってくらいですから、空挺降下をアピールするのが意義、
いわば原点に立ち返ったということなのでしょうか。
一番前の人は今飛び降りているところ。
二番手がハッチに手をかけて準備。
全員降下中なう。
全員着地、いまっ!
ということで、飛び出してから着地までの基本姿勢がよくわかりました。
皆さんご苦労様でした。
次は、空中で傘がどのように開いていくかをゆっくりと、
目の前で実演してくれました。
実演者が立ち、あとの二人は「黒子」です。
飛び降りる降下員。
背中に負った落下傘につけられたベルトは、機体にカラビナで接続されています。
飛び降りることでベルトが引っ張られ、
傘が伸長していきます。
背中のバックパックの折りたたまれた部分には、傘の紐が
丁寧に畳んで収納されていますが、紐がバックパックを開き、
傘の紐部分が人体の重みで展開していきます。
バックパックは背中から離れます。
傘、バックパック、傘の紐、人体という順番。
これで傘が全部伸びきった状態です。
傘が風で開きます。
無事に開傘し、無事に降下するというわけ。
展示を終えて退場していく演技者の皆さん。
傘はそのまま後ろの人が抱えて持っています。
ちなみに、落下傘の重さは2.5kgということでした。
招待席で事態を把握しながら見ていた方は
「驚くべきは死傷率で両軍60%を超える結果に、此れが戦闘の現実かと・・。
攻めても守っても、勝手も負けても被害は甚大で完勝などあり得ないということです」
戦車を投入し、ドカンドカンと火砲を炸裂させてシナリオ通り
「敵を制圧しました!」
とやるより、ある意味戦争のリアリティをじわじわと感じさせる模擬訓練です。
これが訓練で無くなる事態、つまり戦争だけはやっちゃいかん、と、ある意味
どんな派手な訓練より切実に思わせる効果があるとわたしは思いました。
続く。