さて、バトラーという交戦システムを用いたサバゲー方式の
模擬戦は青軍の勝利で終わり、いよいよ本題であるところの空挺降下です。
まずは降下に先立ち、試験降下が行われました。
UH-1ヒューイから一人降下!
最初にコンディション確認のために降下する試験降下員です。
試験降下を行う隊員に特別の資格が必要です。
この日、何百人もが習志野の空に舞った降下始めの、
その先陣を切るたった一人になる訳ですから、それも当然。
流石に安定の降下であると素人目にも思われました。
ふわりと軽々着地。
後ろに赤い風船がいくつか見えていますが、これは風向、風速の確認のために
時折一つづつ空に放され、その都度華やかな色彩となって昇っていきました。
さて、上空にチヌークヘリがやってきました。
どこに行くのかと思ったら・・・。
我々の前に後部ハッチを向けて着陸しました。
ローターの巻き上げる枯れ草が飛んできて、ゴミが目に入ってくるし、
しかもそのおかげで冷たい空気が吹き付けてくるのです。
今までこんな近くにチヌークが降りたことは降下始めではありませんでした。
しかも、もう一機やってきて前に降りるではありませんか。
ただでさえ「寒い」「寒い」とあちらこちらから声が上がっていたところに
眼前にチヌークが2機も駐機して、しかもローターが強力に回りっぱなし。
「ローターの風、キツイですね」
「あーもう、早くどこか行ってくれないかな」
周りからはそんな声が上がっていたほどでした。
しかしなんのために?
招待客の観客席向こうにも一機駐機するようです。
なるほど、空挺隊員が乗り込むところを皆に見てもらうためですね。
ところで、これは・・・・・!
よくよく見れば、いや一目でわかりますが、アメリカ軍の方ではないですかー!
「指揮官降下と聞いていましたが・・・」
「だからアメリカ軍の指揮官ですよ」
「なるほどー、確かに指揮官らしい体型の方ですね。
あまり鍛えてないっていうかデb・・いやなんでもない」
それにしても、陸軍の偉い人いうのは日米ともに揃えたように
「こういう感じの体型」なの?
自衛隊の方は”ゴツイ”感じ、米軍はそれに脂肪をトッピングした
プロレスラー型という違いはありますが。
去年の部隊と同じであれば、この方は現在沖縄県に駐留している
の大隊長ということになります。
このブログでも、アメリカ滞在中に観たテレビ番組、
グリーンベレー兵士になるための厳しいテストのドキュメントを
報告したことがありますが、海のネイビー・シールズ、海兵隊特殊部隊、
さらにデルタフォースなどのような特殊な試験と訓練に耐えた
エリート集団のトップがこの人というわけ。
指揮官搭乗をエスコートしているのは陸自の隊員です。
グリーンベレーの参加は2017年の降下初めからで今年2回目です。
ちなみにアメリカ軍が空挺降下を行うときの合図は単に「GO!」で、
日本のように「降下降下降下!」などと3回繰り返したりしません。
降下者は飛び出しながら「AIRBORN!」と叫ぶのがお約束だそうです。
続いてもう一人、重量級の指揮官が乗り込むようです。
お尻にパッドみたいなのを付けてますが、まさかこれクッションですか?
着地の時に尾骶骨を骨折したりしないように?
彼らもそれなりに衝撃を逃がすための受け身を習得していると思われますが、
それでも万が一の体の防護に手抜きは行わないということなのでしょう。
まあ、お国変われば空挺の思想も変わる、ってことですが、
日本というのは昔から結構個人の技能に多くを任せる傾向にありますよね。
陸海空迷彩の集団が移動を始めました。
機上から降下を視察する一団だと思われます。
先ほど米軍の指揮官が乗り込んでいったヘリコプターに、
防寒の迷彩の上着を着せられた一般人の団体が乗り込んでいきます。
どうやら、自衛官だけでなく、チヌークに同乗して空挺降下を機内から見学する、
という夢のような?体験を許された人たちではないかと思われます。
「わー、いいなあ・・一度くらい乗ってみたいですね。写真はダメだろうけど」
「頑張ればなんとかなるんじゃないですか?」
「頑張るったって何をどう頑張れば・・・・」
続いて、空挺を行う4名の隊員が乗り込みます。
どうやらこれが指揮官降下を行う指揮官たちのようです。
本日の降下始めは、空挺降下そのものを強力にアピールするという構成上、
今まで高み、じゃなくて低みから見物していたその他の指揮官もすべからく飛ぶべし、
ということで、指揮官も大量投入されているのだと思われます。
降下始めそのものの内容が変わったのは、わたしが来なかった昨年からでしょう。
決定後、指揮官降下対象になった一佐以上の指揮官の中には
現役を離れて、マインドはともかく体力的にかなりやばい!
と冷や汗をかいた人が一人くらいいたんでしょうか。
それとも空挺団は必ず技能を維持するために1ヶ月に最低一度は降下すべし、
と決まっているため、一佐だろうが海将補だろうが、
いつでもばっちこーい、な状態なんでしょうか。
いくら年齢を考慮しても部下と満場の観衆の前で指揮官が失敗、
例えば傘が流されて隣に行ってしまったりなんてことになったら
やっぱり部下の統率はできなくなることは間違いなしなので、
指揮官たちにとってもこの降下始めは緊張するものでしょう。
組織を上から下まで引き締めるという意味で、第一空挺団が今回
降下始めで空挺降下を中心に据えたことは、大変有効だったと言えます。
こちらにも4名が乗り込んでいきます。
ということは、指揮官降下を行うのは全部で8名ということになります。
その時、習志野上空に白と青のスマートなヘリがやってきました。
陸自の誇るVIP用特別輸送ヘリ「EC225」です。
国内の要人はもちろん、来日した各国の国賓や首脳などの移動手段となるヘリで、
“スーパーピューマ”の愛称を持っています。
平成18年度から、木更津駐屯地の陸自「第1ヘリコプター団」隷下の
「特別輸送ヘリコプター隊」に3機が配備されています。
フランスのユーロコプター社製で、前のAS332に比べ機内が広く、
20名を収容できる(旧型は12名)ゆとりの大きさで、さらには
振動を低減するため、メインローターを5枚羽根にするという配慮がなされています。
コクピットガラスに防衛大臣旗が貼ってありますね。
シャキーン!シャキーン!と音がしそうなくらい折り目正しい歩き方で
ドアを開けるために歩いていく陸自隊員。
小野寺防衛大臣を先頭に何人かが降りてきました。
ローターが頭の上で回っているとつい頭を屈めてしまう人。
特別ヘリから観閲する席まで歩いて向かいます。
防衛大臣といえども、この草地を歩いて行かなくてはならないのが定め。
去年はここを稲田朋美元防衛相が歩いたわけか(遠い目)
まさか、まさかパンプスとスカートで来たりしてなかったですよね?
しかし小野寺さん、またここに来られて嬉しいだろうなあ。
防衛大臣旗が途中までお出迎えに来ております。
それから陸自の隊員の中に、空挺降下を行う直前みたいな格好の人がいます。
空挺隊員が防衛大臣をご案内〜。
ということは、この方はこれから指揮官降下を行う
第一空挺団長兒玉陸将補である可能性が高いですね。
それにしても、先ほどのサバゲ、じゃなくて模擬戦闘は、
防衛大臣が来る前に終わってしまったわけですが、これはつまり
全くの「前座」扱いだったってことになりますね。
2年前までは、島嶼奪回をシナリオとした模擬戦が後半のメインだったはずなのに・・・。
今年は本格的に、空挺降下を中心に据えた訓練展示をするつもりなんだ、
とここでようやく気づいた現地のわたしでした。
続く。