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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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「彩雲」〜平成三十年度 海上自衛隊遠洋練習艦隊 体験航海

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練習艦隊が晴海から出航地である横須賀に移動する際に
一般見学者と乗員の家族などを乗せてクルーズする特別企画、
体験航海に、今年は同乗させていただいております。

艦内で行われる最初の展示であるヘリのローター稼働がおわり、
「かしま」が当艦「まきなみ」を追い越す際に行われる登舷礼、
発光信号が実際に送られている様子を見るなど、次々に
見学者にとっては見逃せないイベントが続きます。

続いては甲板に搭載されている飛び道具の動的展示、ということで、
まずは近接防火器システム、ファランクス・シウスを動かして見せてくれます。

アメリカでは正式には「シーアイダブリューエス」だそうですが、
案の定、それが面倒な人がその形から「R2ーD2」と呼んでるらしいです(笑)

動かす前に、シウスの下側にある扉が開いて、中から人が出て来ました。
実際にこれが実弾を撃つ時にはここは開けっ放しにしないと思うのですが。

シウスはただ動かしてもあまり見ていて面白いものではないですが、
この時の展示ではご覧のように結構限界まで上を向けて見せてくれました。

「まきなみ」が搭載しているのは最新型の一つ手前だと思います。
(「かが」が搭載している白ではなくグレーのCIWSが向上型最新タイプ)

「まきなみ」の はそれまでのタイプに比べてマウントの改良により
俯仰角が大きくなったということですので、それを披露しているのでしょう。

空砲を撃つ時、弾倉が「ガラガラガラガラっ!」とすごい音を立て、
見学者はその度に「わっ」とびっくりします。

わたしはこの時、舷側の舫杭(ちょうど一人がけのスツール状)に座って
撮っていたのですが、その近くにいた海士くんとそのマミーが写り込んでいます。

展示が終わってから海士くんに

「どこの配置ですか」

と聞いてみると、通信士だとの答え。

「今はお仕事しなくてもいいんですね」

「家族が乗っている者は一緒にいてもいいことになってます」

そこで母上に、

「半年間息子さんが遠洋航海に出てしまったらちょっと寂しいですね」

この秋から息子が家を出る親としてはついそのように聞いてしまいましたが、
お母さんは笑いながらそんなこともない、との答え。
海上自衛隊に入った時にすでに親元を離れているので、今更、ということのようです。

確かに、ソマリアに派遣されるならともかく、練習艦隊の遠洋航海なら
親としての心配もかなり軽くなるのかもしれません。

続いては主砲オトー・メララの動的展示です。
これも、空砲を撃つとかそういうことはできないので、
砲身をぐーるぐーると動かして見せてくれるだけです。

しかし、この展示でわたしはすごいことに気がついてしまいました。
オトー・メララが台座ごと180度後ろを向くことができるということです。

つまり自分で自分を撃つことも理論的に可能だってことです。
てっきり何があっても自分には絶対に当たらないような設計だと思ってたのに。

そして砲口のカバーにこんなマークが入っているのも初めて見ました。
肉眼では「何かある」と思っても正体を確かめることはできませんが、
写真を拡大して初めてこれがメカジキのようなモチーフであることに気づきました。

ところで、わたしの頭上で話をしていた通信士くんとマミー。

わたしが声をかける前ですが、息子がふと、母親に向かって

「彩雲が見えるよ」

と優しい調子で呟きました。

わたしと彼の母親が空を見上げると、薄いですが綺麗な彩雲が
太陽の周りをぐるっと描く円となって浮かんでいます。

「あ、ほんとだ」

その母に向かって息子は

「彩雲が出ると吉兆だから、きっといいことがあるよ」

かつて彼が小さな男の子だった時、母はその手を引いて息子に
空を見ながら同じことを言ったことがあったのかもしれません。

その息子は長じて海上自衛隊の制服に身を包み、遠洋航海に船出しようとする今、
あたかも母を安心させるように吉祥の現れた空を指し示しているのです。

この会話に、わたしは息子を持つ母としての我が身を重ね合わせ、
彼らに思わず声をかけてしまったというわけです。

そこまでは聞きませんでしたが、「まきなみ」は大湊所属の船なので、
このお母さんはわざわざ青森から駆けつけてきた可能性もあります。
そうでなくてもただでさえ朝から立ちっぱなしで疲れているに違いない、と考え、

「どうかお座りください」

わたしは立ち上がって自分の座っていた舫杭を彼女に譲りました。

ダイジェストでも書いたように「風の塔」を間近で見るのも今回初めてです。

右側の、高さ90mの大きな塔はアクアトンネルへ外気の給気、
75mの小塔はトンネルからの排気と二つの塔の役割は違います。

東京湾上で南北に抜ける風は2本の塔の間を通り抜けます。
この時、ベルヌーイの定理により効率的な換気ができる設計です。

この青と白のストライプは、羽田空港を発着する旅客機からの景観や、
船舶からの視認性を高めるために採用されたとのことです。

ちょっと遠いですが、アクアラインの「海ほたる」が見えます。

週末空港に行く時、時間に気をつけないと、海ほたるに行こうとする車が
湾岸線にはみ出してきて渋滞が起こるんですよね(´・ω・`)

たかが海の上にあるパーキングエリアなのに、どうしてあれほど人が詰めかけるのか。

さて、続いてはヘリ甲板です。
ローターを回す展示が終わったあと、柵がもう一度元に戻され、
ローターが後ろ側に束ねられて、甲板への立ち入りができるようになりました。

ヘリパイと一緒に写真を撮ってもらう人あり。

ヘリのピトー管は固定翼機と形が違います。
空気を取り込むノズルにたくさん穴が空いています。

根元には「持つな」とダイレクトな注意が書かれていて、
ついウケたので写真を撮っておきました。

窓から覗いて撮ったコクピットテーブル。

コクピットの左舷の窓は機体の下部を目視できるようにドーム型です。
これをバブルウィンドウという模様。

ウィンドウの下の羽根状のものはパイロンなんですって。
その気になれば武器を牽引することができます。
海上自衛隊で武器を搭載することがあるのかどうかは知りません。

ローターを固定させておく器具は回転方向だけを抑えるものであることが判明。

息子を抱きかかえる父親の向こうにスネアドラムみたいなのがありますが、
フライトデータが記録される、つまりブラックボックスに相当するもののようです。

なぜ外付けになっているかというと、それは万が一海に墜落した場合でも
浮かび上がって回収することができるようにではないかと思います。

四角い箱はそうは見えませんが、チャフ・フレアランチャー。
ミサイルの接近を検知すると、自動でチャフやフレアを射出し、
ミサイルを誤誘導させます。

手前の親子三人は我々のグループの参加者です。
張り切って歩いている男の子はこの日をむちゃくちゃ楽しみにしていて、
ほとんど彼の希望で参加が決まり、一家は静岡県からわざわざ出向いてきたとか。

女の子はお兄ちゃんほど熱心ではないせいか、要所でぐずって
お母さんを手こずらせていました。

子供でもコクピットを覗けるように足台が置かれています。
女性海曹の左下に見える灰色のものはFRIR(forward looking infra-red)
 前方監視型赤外線装置といって、熱線映像装置です。

ヘリパイの左腕にあるマーク、日章旗じゃなくて海上自衛隊旗だったんですね。
OD色に紅白の旭日旗・・・・うーん、クール!

海曹のパパに坊主頭をどつかれながらというのと傾向は違いますが、
これもまたパパの職場見学の姿。

「パパー、わたし大きくなったらヘリコプター操縦する人になる」

とか?
今は回転、固定翼を問わず、女性パイロットが増えているそうですよ。

通信科の展示が始まることになり、同行の家族は
前列の特等席から見学することにしたようです。

まず、いきなり手旗で女性海曹が信号を披露しました。

「なんと通信したかわかりましたか?」

わたしが周りにしか聞こえない声で

「まきなみへようこそ」

というと、その直後、

「正解は『まきなみへようこそ』でした!」

おお、とどよめくわたしの周りの人々。
しかし実は全くの当てずっぽうでした。
というか、こういう時に通信することといえば、それ以外にないでしょう。

続いて、総員起こしに始まり、出航、巡検など信号ラッパの披露です。

格納庫の隅に、ヘリの着艦記録ボードがありました。
T/L U/L F/L  の意味を聞くのを忘れましたが、とにかくこの日で
トータル7540回の着艦を行なったということです。

「まきなみ」が就役したのは2004年の3月ですから、14年2ヶ月の間、
搭載日数はおよそ収益日数の半分、ヘリを搭載していたことになり、
述べにすると1日に1.4回平均の発着を行なっていたことになります。

このあとわたしたちはエスコートの自衛官からの招集によって
軽い艦内ツァーに出発することになりました。

 

続く。

 

 


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