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オペレーション『MOE』〜平成三十年度 練習艦隊 体験航海

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格納庫前ヘリ甲板で手旗信号と信号ラッパの展示が終わったとき、
わたしたち御一行様にエスコート役のイケメン自衛官が招集をかけました。

「これから艦内の見学を行いますので私についてきてください」

ツァーはここから出発です。

「クラッシュクルー レスキューツール」。

うーん・・・意味はよくわかりますが、

「クラッシュした場合にレスキューに当たるクルーのツール」

なのか、

「クラッシュしたときクルーを助けるツール」

なのかどちらなんでしょうか。


さて、ツァーは始まり、わたしたちはこの画面左奥にある階段から階下に降りました。

有害ガス検知器とは、大気中の可燃性ガス,毒性ガス(硫化水素・一酸化炭素)
などを検知する器械で、ポータブルのものが市販されています。

応急工作、というよりもしかしたらダメージコントロール、といったほうが
もしかしたら皆様にはピンとくるかもしれません。

応急工作は海上自衛官の職種であり、つまりこのドアの中は
応急工作員の執務室?なのだと思われます。

応急工作とは、艦艇に乗り組んで火災や浸水から艦を守る仕事で、
船体や機械部品等が損傷した際に、溶接や旋盤で部品を作成したり、
修理を行ったりする隊です。

その特殊な技術は第2術科学校の海士応急工作課程で
5ヶ月をかけて習得します。

例えば、隊員食堂の前にあった角材、これなども
ダメコンに使うためのもので、自衛艦には必ずどこかに装備してあるものです。

応急工作員はこの木材を使ってドアを抑え、防水作業を行います。

右列が応急工作ならびに艦上救難員の任務の紹介です。

普段は艦内の修理などを行なっていますが、艦が危険に晒された時、
彼らの本来のスキルが本領発揮となります。

ちなみに左の「デミスター装置」には、気体中に含まれる液体の微粒子を
分離除去する機器という定義がありますが、ここでは空気を取り込んで
エンジンを稼働させる役割であるということです。

さて、エスコート自衛官がわたしたちを連れていったのはこのドアの前。
なんの変哲も無いドアには「倉庫」と小さな札があります。

「この部屋はなんだと思いますか?」

自衛官はわたしたち全員に質問しましたが、皆黙ったまま。
わたしとTOを除いて、全員、護衛艦に乗るのは初めてという人たちです。

そこで、

「・・・・艦内牢屋」

わたしが小さな声で答えると、

「その通りです!」

「えーすごーい」(周りの人)

いや、だって格子がついてるし下には食べ物を入れる窓があるし。
アメリカの軍艦に必ずあったジェイルのことを思い出したのさ。

自衛官の説明によると、普段は実際にも倉庫として使われているこの部屋、
いざとなったらチェンジャブルかつリバーシブルに牢屋に早変わりします。

アメリカの軍艦にある牢屋の役割は、主に規律を守らなかった乗員を収監することです。
が、まさか我が海上自衛隊が規則違反の自衛官を檻に閉じ込めるはずがありません。

つまりこの牢屋は、海賊対策で「まきなみ」がソマリアに派遣されるにあたり、
拿捕した海賊船のメンバー等を仮収監する為作られたのだそうです。

そして、なんとびっくり、実はこの牢屋には、実際に4名の海賊様ご一行が
ご宿泊されたことがあるという話を聞いてしまいました。

外国人の、しかも海賊を収監している間、「まきなみ」乗員も怖かったと思いますが、
捕まって海軍艦の牢屋に入れられる海賊はもっと怖がっていたと思います。

しかしながら、日本国自衛隊、他の国の軍隊みたいに問答無用で船を撃沈したり、
海賊をキャッチアンドリリースして海上に漂流させたりしませんし、
収監に当たってももちろん殴る蹴るなどの暴力もなく、それどころか
空調の効いた艦内で毎日三度三度ご飯を食べさせてもらえるし、下手したら
金曜日にはカレーが出たりするわけですから。

自衛隊に拿捕された海賊はまだしもラッキー!と思ったのではないでしょうか。

ほとんどの護衛艦はだいたい似たようなものが似たところにあります。
確か「あきづき」も、先任海曹室は食堂の階にあったと記憶します。

そして、ドアにはなにやら凝ったプレートが掲げられているのも共通。

 

食堂の全体写真を撮らなかったのは、そのテーブルというテーブル、椅子という椅子に、
すでに疲労困憊した人々が座り込んで虚ろな顔をしていたからです。

我々一行の家族連れは、食堂で空いたテーブルを見つけるや座り込み、

「わたしたちここでちょっと休憩しますからみなさん行ってください」

 

冷凍庫に「アイスクリーム」と書かれているので、TOは

「アイスクリーム食べられるの?」

と目を輝かせましたが、残念、自衛艦のアイスクリームというものは、
乗員たちの大事な大事な楽しみで、アイジャンで取り合うことはあっても、
一般客に売るために載せているのではありませんねん。

食堂には本日の手書きによるメニューが貼られております。

ちなみにこのメニューの下段、「具だくさん汁」のところをご覧ください。
「白葱」の「葱」の漢字を間違えたくらいで訂正印を押してあります。

「楽京」はラッキョウのことらしいのですが、こんな漢字だったっけ。

と見ているだけで楽しい(うるさくつっこんでごめんねー)メニューですが、
なんといっても最大の発見は、左上の「ポークカレー」が
カレー曜日の金曜日ではなく、月曜日の昼食であることでしょう。

どうも「まきなみ」では金曜日以外にもカレーを食べているらしいのです。

その「まきなみカレー」はポーク入り。
ちなみにレシピを拝見しましたが、しょっぱなに

「前日から鶏骨、人参、玉葱、キャベツ、にんにくを7~8時間煮詰める。
旨みの出ただし汁を作る。」

もうここで一般人には再現不可能、土下座して「まいりました」の世界です。
大量に作るからこそこのようなこともできるわけで、そりゃ美味しいはずだわ。

TOが衝撃を受けて写真を撮っていた、「食べ過ぎご飯例」。
トレイはお茶碗と違うのでついご飯を盛りすぎてしまうようです。

艦艇勤務は、運用などの目に見えてカロリー消費しそうな職種でなくとも
艦内を行ったり来たり、階段を昇ったり降りたりなので、多少食べすぎても
太ることなどないのでは、と一般人は思いがちですが・・。

若くて代謝のいい人はともかく、ついつい消費カロリー以上に食べ、
お腹周りに脂肪を備蓄しがちなお年頃の隊員に向けての警告かと思われます。

隊員の胃袋を賄う食材を搭載するのも大事な仕事です。
「ぶんご」で補給を見たことがありますが、やはりこの写真のように
バケツリレー方式で物品を運び込んでいました。

「まきなみラーメン?食べてみたい!」

「火曜日はラーメンの日」のご紹介。
これも大量に仕込むから、とんでもない手のかけ方をしているはず。
スープとか絶対に超美味しいよね。

 自衛隊の給養員は退官後、「行列のできるラーメン屋」も開けそうです。

 

電測と通信の任務を紹介しています。

電子整備(エレクトリックテクニシャン、つまりET)の係は、
高いマストに登って整備を行うこともあるとのこと。

また、万が一事故でアンテナが折れてしまった時も、
応急空中線(アンテナ)を展開して代替できるんだそうです。

軍艦には思いもつかないところにも二重三重にセーフティネットが張られています。

こちらは先ほど見学したCIWS(左)、アスロックなどの紹介です。

左はシウスの砲身を外して油を染み込ませた布を使い手入れしているところ。

オトーメララとHOSの紹介です。
先日紹介した砲口カバーのカジキは、「まきなみ」のロゴマークだそうです。
赤字で「百発百中!」と力強く言い切っているのが頼もしいですね。

経理の仕事にもちゃんとスポットを当てて紹介。
経理はメッセンジャーの仕事をすることもあるなどと書かれています。

真ん中の甲板散水、このシステムは、かつて米海軍で起こった
空母艦上の誤射爆破事故をきっかけに開発されたと聞きます。

違ってたらごめんなさい。

食堂を出たところにはどんな自衛艦にも大抵備えられている艦内神社。
「まきなみ」の御祭神はなんと奇遇にも、金比羅神社でした。

この体験航海の直後、わたしは金刀比羅での掃海殉職者追悼式に参加しています。

いつもそうするように、お参りの後ガラス戸を開けてお賽銭を寄進しました。
艦内神社で溜まったお賽銭は隊員さんのジュース代になることもあるようです。

食堂前通路にあった謎の蛇口。修理のため閉鎖中!です。

大抵の護衛艦内部の施設には、カメラと携帯は持ち込むのも不可です。
先日訪問した航空基地では、航空機内部や作戦司令室など、
わたしたちはもちろん、基地司令ですら携帯を預けて内部に入っていました。

ここはソナー室かCICか・・・・?

みんなと一緒に移動しながらだと。設定を変えないでシャッターを押すので
写真がことごとくお見苦しいものになりますがご容赦ください。

練習艦隊司令官勤務方針

伝統の魁 練習艦隊

「不屈」「向上」「自覚」

とあります。
晴海の艦上レセプションで泉練習艦隊司令官がおっしゃっていた

「三つのC」、

「うれC」「おいC」「うつくC」

とは一体なんだったのか。

コントロールルームにやってきました。

そしてこちらが艦内に異常がないかチェックするダメコンパネル。
(というのかどうか知りませんが)

このデスクの上にはいつも刻々と変わる艦の状況を書き込むノートがあり・・、

実習幹部らしい乗組員がなにやら書き込んでおりました。
別の護衛艦見学で、誰も周りにいないのを見計らって内容を写真に撮ったこともありますが、
今回は自粛しました。

艦内ツァーはこれにて終了。
あとは適宜好きな場所で過ごし、入港の時に操舵室を見学、ということになりました。

ツァーを終えて外に出たところには掃除道具をまとめてある箇所があります。

で、出た〜〜!

溺者救助人形「ミス・マキナミ」は、目力のめっぽう強い美人さんです。
遠洋航海での寄港先で「まきなみ」を訪れ、彼女を目にする外国の人たちは、

「さすがは日本のネイビー、溺者人形まで『MOE』(萌え)か!」

と我が意を得たりで感嘆することでしょう。

知らんけど。


 

続く。

 


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