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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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艦底のウェルドック〜ドック型強襲揚陸艦「アルビオン」

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晴海埠頭に来襲した女王陛下のドック型揚陸艦、「アルビオン」。
いよいよその中に入っていくことになりました。

揚陸艦の中に足を一歩踏み入れた途端、なぜ見学の列が
硬直したように遅々として進まないのかその理由が氷解しました。

入って直ぐのところにいきなりミリヲタならずとも目を輝かせて
興味津々で食い入るように見てしまう珍しい装備があるではないですか。
しかもムード満点、偽装網までデコレーションしてあります。

「こりゃー動きませんわ」

わたしと連れは頷きあったのでした。

乗艦した入り口の直ぐ右には、こんな車両が。
現地には説明が全くないので、何かわかりませんでした。

車両置き場で見張りをしている若い人、眠そう(笑)

ここに展示してあるのも岸壁にあった「ヴァイキング」ですが、
通信車両らしく、機器が展示されていました
左下は簡易アンテナでしょう。

直撃弾を受けても壊れない(たぶん)ハードユースのパソコン。
左はパナソニック製です。

ヴァイキングはドアを開けて展示してありました。

全員が写真を撮りながらなので、当然先に進みません。

ギザギザのブレードを備えたローラー、「ロードレイヤー」。

見学者の質問に、

「イエス、こんな風に地面を均すものだよー」

とアクションしながら説明しているロイヤルネイビー。
彼の階級はNATOコードのORー2、一等兵です。

ローラーを真横から見るとこんなになってます。
このページを見ると、このロードレイヤーの使い方がわかります。

ローラーに巻かれているのはブレードではなく金属の板で、
これを地面に押し付け、自分で板を踏みつけながら均していくわけです。

ロードレイヤー車を横から。
ローラーに巻かれた金属板をタイヤが踏んでいることに注意。

移動の時にローラーはどういう状態になるんでしょうか。

ローラーの向こうには冗談抜きで息を呑むような光景が展開してました。
ウェルドックと呼ばれるデッキ状の格納庫です。

岸壁の舷梯から乗艦した水陸両用車両は、ここに見える傾斜を降りて、
艦尾部分にあるハッチから展開し、揚収されます。

「ヴァイキング」以外にも舟艇や車両が格納されています。
右側の車両はとてもそうは見えませんが、ここにあるということは
水陸両用車で海に浮くことができるはず。

艦体はちょうど縦に半分で仕切られており、こちらは
ご覧のように下まで降りて見学ができるようになっていました。

何を見ているのかわかりませんが、とにかく人がいっぱいです。
わたしも連れも午後から用事が入っていたのでここはパスしました。

ところで、わたしはこの部分を見学しながら、ある「臭い」に気がつきました。
よく海岸近くで嗅ぐことのある、魚介類や海藻の腐ったような匂い。

それがここに立つと、どこからともなく立ち昇ってくるのです。

「なんか・・・磯臭いですね」

「まあしょっちゅう船や車を降ろしたりあげたりするわけですし」

ただ、もし運用しているのが海上自衛隊なら、毎日清潔にして
こんな匂いがするまで放置しておかないのではないかという気もしました。

この後、見学コースは甲板に続きます。
壁に掛かっているのは舟艇の取り外し式モーターのようです。

ベルトのようなものは舟艇に乗る際に使う安全ベルトだと思われます。

普通の陸用車両はこの階(岸壁と同じ高さ)に格納されています。

展示されている(というか普通に格納されている)車輌を見ながら歩いていくと
見学路が傾斜の車路が甲板までつながっていくという流れ。

現地の説明が一切ないので苦労しましたが、画像を検索していると
英語のオークションページにこの車が出品されているのを見つけました。

ROYAL MARINES WINTER/WATER LAND ROVER WOLF
110 HARD TOP

なんとイギリス陸軍ではランドローバーを標準採用していることが判明。

「ウィンター/ウォーター」というのは防寒装備と水密性を備えた、という意味です。
シュノーケル(車の右側についている煙突のようなもの)の装備で、
フロントガラスまでの水深でも走行が可能ですし、また
エンジンを予熱させる流体エンジンヒーターの装備などの改修点により、
車両や乗員は極限状態においても活動することができます。

海兵隊で運用されているのは強襲上陸作戦用の特殊深度走行型で、
潜望鏡付きのシュノーケルのほかは防水加工された電子システムおよび機器を装備し、
必要時にはヴァイキングのような完全防水装備の車両と一緒に行動できます。

また後部ドアはストラトにより支えられており、水の流入を許すことで
車両が漂流されるのを妨げ、着岸直後には急速な排水をすることができ、
車両による上陸演習時においても、乗員の身体が濡れることもありません。


ちなみにオークションでいくらの値がついて売れたのかどうかはわかりませんでした。

HMT600装甲車 コヨーテ(SUPERCAT社製)

Coyote Training

映像は冗長ですがお時間のある方はどうぞ。
究極のオフロード車っぷりがよくわかります。

別バージョンの名称は「ジャッカル」。
「コヨーテ」の先発でこちらは少し小さなタイプになります。

そして、今回最も驚きだったことの一つ。

見学者は艦内で一切階段を使わず、この車輌運搬用のスロープで
甲板まで上り、同じ車路を降りて退艦します。

この写真でもお判りかと思いますが、傾斜角はかなりのもので、
この坂を車輌に乗って移動するなんて信じられないほどです。

 

ところで、ロイヤルネイビーのHPから活動記録を調べてみると、
「アルビオン」は少なくとも7月8日(一般公開のほぼ1ヶ月前)には
日本に寄港していて、この日に保土ヶ谷にある英連邦兵士の墓地に
公式に弔問していることがわかりました。

HMS Albion proves big in Japan on landmark visit to Tokyo

文中、「東京の横浜墓地」とありますが、これはもちろん間違いです。

英連邦戦死者墓地は横浜にある「もう一つの外人墓地」です。
第二次世界大戦における捕虜の死者や戦後のイギリス連邦占領軍の任務中の
病死・事故死者も含む約1,800名が埋葬されています。

なお、このページによると、「アルビオン」は来日してすぐに
横須賀のアメリカ海軍第7艦隊で1ヶ月に亘り修理を受けたそうです。

やっぱり日本では憲法の関係で修理も頼めないので、ということでしょうか。


艦長のティム・ニルド大佐は今回の訪問について、

「我々は東京の訪問者として目を見張るような素晴らしい週末を楽しみました。
六千人を超える人々にご支援を頂き、また体験を共有することで
偉大な二つの国の間に強固な友情を築くことができたと思います」

そして

「われわれの訪問は、グローバルな英国海軍の活動をを証明するものであり、
当然のことながら、日本との緊密な関係を築くことが目標でありました」

と語っています。

この日の多くの見学者にとっても、「アルビオン」を通して
イギリスという国への理解が若干なりとも深められたことでしょう。


続く。



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