江田島を出航した練習艦隊をお見送りした二日後、朝一番の羽田発飛行機で
わたしとTOは神戸空港に到着しました。
その日は神戸港に練習艦隊が入港する上、午前中には近くの川崎重工業で
潜水艦「しょうりゅう」の引き渡し式に参加することになっていたのです。
ANAの羽田発神戸行きは1日に朝と晩の2便しかなく、
一便目は0630発だったりするので、当日は4時半起きでした。
呉地方総監部から頂いたお知らせだと0930から歓迎行事だということでしたが、
直前に関係者に確かめると、9時ちょうどには入港してくるとのこと。
空港に着いてから朝食を食べる時間があったので、
そこだけオープンしている上島珈琲店に入りました。
上島珈琲は神戸発、今は関東にも展開していて六本木や横浜元町にもあります。
どこの店舗でもBGMにジャズを流しているのですが、六本木と元町は
バップ系のモダンジャズで一貫しているのに対し、神戸空港店では
どういうわけかいつ行ってもジャズヴォーカルが流れています。
1時間くらいは時間があるかとのんびりしていたら、携帯にメッセージが入りました。
「すみません(*_*)かしま8時半には入ってくるらしいです」
時計を見たら8時20分でした(O_O)イカーン
とりあえずすぐさま空港を出発です。
空港からポートターミナル駅まではポートライナーで18分かかります。
どんなに急いでも「かしま」入港には間に合わないこと決定。
ポートターミナル駅に到着すると、ポートライナー車上からもう入港を済ませた
「かしま」と、これから入港してくる2隻が見えました。
これも車内からガラス越しに撮ったもの。
2隻のタグボートを従えた「いなづま」です。
手前に「PORT TERMINAL」の看板の一部が写り込んでおります。
電車を降りて、今度はターミナルの二階窓から撮りました。
ナイスな構図です。
ターミナルの一番端の出口から岸壁に降りると、すでに「いなづま」が
「かしま」の向こう側にメザシ状に接舷しようとしていました。
朝早いというのに、神戸入港をお迎えするためにすでにたくさんの人がいます。
自衛艦旗の小旗を持った女性は乗員の家族でしょうか。
手前のように、自衛艦の写真を撮りにきたらしい人も多数。
なんと、「偉い人」がお忍びで練習艦隊のお迎えに来ておられました。
本来ならば地方の入港に立ち会うことはないですが、この日はたまたま
この後近くの川崎重工業で「しょうりゅう」の引き渡し式があり、
そのために近隣のホテルに宿泊しておられたので駆けつけて来られたのでしょう。
出張先にもジャージを持って来ておられた「偉い人」は、
部下を従えてここまで20分かけて走って来られ、
ジャージをお持ちでなかった「偉い人」は30分かけて歩いて来られたそうです。
当たり前のようにそういうことを「偉い人」が行っておられるのです。
なんというか、若い自衛官たちに対する深い「愛」を感じました。
周りにいる誰もがこの「偉い人たち」の正体に気づいていません。
ご挨拶したらわざわざ帽子を取られ、普通に頭を下げられましたが、それは
「自衛官は帽子を被っている時敬礼を行う」
という慣例に従うにはちょっと不似合いな状況だったからだと思います(笑)
「かしま」と「いなづま」の間に舫が渡されました。
「いなづま」のオランダ坂の上と下に立って、
海曹たちがキビキビと入港作業を行います。
向こうには最後に入港する「やまゆき」の姿が見えます。
あっという間に「かしま」と「いなづま」のマストが綺麗に並びました。
さすがは海上自衛隊、この作業の手早さと正確さ。
「いなづま」の左舷を押していたタグボートが、作業が終わるや否や、
船体が傾くほど勢いよく向きを変えて、「やまゆき」を迎えに行きます。
この2隻のタグボートが練習艦隊3隻を全て支援するんですね。
あっという間に「やまゆき」に取り付いて、舫の受け渡しを行います。
もうこの写真ではタグボートは舫を受け取っているのがわかります。
この旭日旗は、わたしの横でこれを振っていたお迎えの女性が、
(最近知ったところによると『潜水艦の母』と言われていた方)
「邪魔になってごめんね〜」
と声をかけて来たので、
「いえ、それどころか一緒に写させていただいていいですか」
とお願いしてわざわざ写り込むように振っていただきました。
「やまゆき」は「かしま」と「いなづま」の後ろの岸壁に接岸させるので、
向こう側の押し船が艦体の後方を押して回転させていきます。
「タグボートって健気だなあ・・・」
一緒にいたTOがこの一連の作業を見ながら呟きました。
「でしょ?わたしがタグボートに萌える気持ち、わかる?」
「わかる。可愛いよね」
これまでわたしが、何かと船可愛い!飛行機可愛い!タグ健気!
と乗り物愛を熱く語るたびに彼は、
「可愛いかなあ・・・わからん」
と首を捻っていたものですが、これだけ長い間入港作業を見たのは
初めてということで、彼なりに何か感じるものがあったようです。
その健気な押し船一隻の力で、「やまゆき」の艦体は目の前で
ゆっくりと向きを変え始めました。
こんな角度から入港する護衛艦を見たのはわたしにとっても初めてです。
艦体がほぼ正面をこちらに向けた時、なかなかの感動がありました。
軍艦とはなんと洗練されたカタチをしているのでしょう。
その時の「やまゆき」艦上では。
艦橋左舷デッキでは接岸のための見張りが一人。
右舷デッキでも後方の見張り。
甲板艦首部分では接岸のための舫の用意。
信号旗のあるデッキには新任幹部たちが並んでいます。
甲板には一部始終を記録するカメラマンもお仕事中。
誰一人として何もしていない人がいません。
後ろの押し船が艦体後部を押し、手前の船は舫で艦首側を少し引いています。
この作業で艦体を岸壁と平行にしていくのです。
平行になった艦体を静かに岸壁に向かって2隻で押します。
サンドレットを投げる前の甲板の乗員たち。
二十人少しいるらしい実習幹部は、これらの入港作業を真剣に見守っています。
マストに揚がっている信号旗はバース信号でしょうか。
その頃岸壁では。
先ほど写真撮影に協力してくれた方たちがこれでもかの
旭日旗とUW旗を持参して、記念写真を撮っておられました。
その時岸壁前の海面に浮き上がって来たクラゲも旭日旗模様(笑)
調べてみたところ、これは「アカクラゲ」という日本近海にいる種類で、
なんと偶然にも、放射線状の模様は16条だそうです。
あれかしら、お隣の国の人が見たら、こんなんでも発狂しちゃうのかしら。
「やまゆき」艦上からサンドレットが投げられ、舫が岸とつながりました。
艦首の旗竿にはまだ国籍旗はありません。
今岸壁では舫を持ってはダッシュ、の「舫ダッシュ」が行われているはず。
艦上でも三人がかりで舫を引き延ばす作業真っ最中です。
次の瞬間、国籍旗が揚げられていました。
海上自衛隊においては、日の丸と同じである国籍旗は停泊時の日中のみ掲揚されます。
心なしか岸壁に人が増えてきました。
偉い人たちの姿はここから見えませんでしたが、もしかしたら
この時も人目につかないところから見守っておられたのでしょうか。
新任幹部たちにも「偉い人降臨の件」が伝わっていたらいいなあと思いました。
お仕事を済ませた押し船が、気のせいか意気揚々と引き上げていきました。
そして、この一連の入港作業をじっと見守っていたのは海上保安庁の
PC18、巡視艇「はるなみ」です。
ちなみに海上保安庁の船艇においては、旗の位置は海自と正反対で、
船尾に国旗、船首に海上保安庁庁旗が掲揚されるということですが、
海保の巡視艇は航行中艦尾の国籍旗だけを掲揚します。
というわけで、関係各位の皆様のご尽力により、無事に練習艦隊は
神戸港に入港は果たしました。👏パチパチパチパチ👏
続いて岸壁では入港歓迎行事が行われます。
続く。