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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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グラーベンの三位一体像(ペスト記念柱)〜ウィーンの街を歩く

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契約の時間はとっくに過ぎているのに、一向にツァーを終わらない
ガイドさんの案内で、ウィーンの街を延々と歩いております。

「サウンド・オブ・ミュージック」などを見ていても出てくるのが、独特な形の
教会の尖塔ですが、これらも、屋根の瓦も、全てハンドメイド。
最初からこうなっていたのか、経年の影響でこうなったのかわかりませんが、
写真に撮ってみると、屋根の瓦が波打っているように見えます。

石塔の内部はこのように壮麗な装飾が施されているものが多いですが、
ここでは鳩除けに、ネットが張られていました。

丈夫で軽い素材が開発されるまでは鳥の団地と化していたに違いありません。

「ウィーン建築」という言葉があるくらい、この地には独特の建築文化が、
オットー・ワーグナーアドルフ・ロースなどによって花開きました。

この花模様のビルは、オットー・ワーグナーのマジョリカハウス、右側は
同じくメダイヨン・ハウスと称する1800年代後期の作品です。

マジョリカハウスの花の彩色は、マジョリカ焼といって、
スズ酸化物を釉薬に加えて焼いたものなので、120年近くたっても
その鮮やかさが全く変質していないのです。

この歴史的建造物にも普通に人が住んでいます。

ウィーンのコールマルクトは、宝石店などが並ぶリッチな商店街です。
ここにある「ガードナー」宝飾店は、現代建築の巨匠だった
ハンス・ホラインによって、1982年設計されました。

こちらもホライン設計。
ガイドさんはなぜか、

「私はこの人とはあまり合わなかったです」

と謎の一言をつぶやいていました。
どういう知り合いだったんでしょうか。

ユリウス・マインルはウィーンの高級スーパーです。

「ユリウス・マインル二世は62歳の時に22歳の田中路子と結婚したんです」

ガイドさんの一言で、わたしはオーストリアで活躍した日本のオペラ歌手、
田中路子の最初の夫の名前を思い出しました。
昔、田中路子の伝記を読んだことがあって、かなり鮮明に覚えていたのです。
そこで、

「で、二度目に結婚したのがデ・コーヴァだったんですよね」

(ヴィクトル・デ・コーヴァはオーストリアの俳優。
彼女は夫のことを『デコちゃん』と呼んでいた)

とつぶやくと、えらく驚かれました。

「ええっ、よくご存知ですね!」

東京音大で齋藤秀雄と不倫の噂が立って、逃げるようにウィーンに留学、
そこで社交界にデビューし、40歳年上の富豪の妻になり、
その財力で歌手デビュー、数々の男性と浮名を流し、カラヤンやベーム、
超大物政治家にもタメで付き合いがあったという伝説の女性で、
有名指揮者がステージから客席の彼女にわざわざ挨拶したり、
死ぬ直前まで年齢不詳の若さを保っていたりと、とにかくすごい。

今でもウィーンで最も有名な日本人女性かもしれません。

田中路子

「田中路子」の画像検索結果

レッスンをする田中路子、45歳。

わたしもガイドさんに本で読んだネタを教えてあげました。

「付き合っていた男たちの中で最低だったのは早川雪洲って言ってたそうです」

「へえ、知りませんでした」

ガイドさんのウィーン音大の友人だか知り合いは、亡くなる直前、
田中路子の「かばん持ち」をしていたそうですが、きっと
下の者にはすごい気難しい人だったんじゃないかという気がします。


1670年代、ヨーロッパでペストが流行しました。

ペストは元々ネズミなど齧歯類の罹る病気で、ノミがネズミの血を吸い、
そのノミが人間の血を吸うと、その刺し口から菌が侵入して感染します。

かつては高い致死性を持っていて、大流行した14世紀にはペストのせいで
地球の人口が1億5千万人減ったというくらい猛威をふるいました。

罹患すると皮膚が黒くなることから黒死病と呼ばれていたそうです。

ペストはだいたい100年に一度くらいの割合で流行を繰り返していますが、
この時ウィーンでは死者10万人が亡くなっています。

なんとかその流行も過ぎ去った時、時の施政者レオポルド1世は、

「ペストを終わらせてくれて神様ありがとう」

という意味を込めてこの賑やかな像を建造しました。

ごちゃごちゃしていてわかりにくいですが、ここに
「父と子と精霊」、つまり神(玉を持っている)とイエスキリスト
(十字架を持っている)、そして精霊(多分周りにいっぱいいる人たち)がいて、
この部分が

「三位一体」

を表しているのだということでした。

マリア・テレジアのお祖父さんというレオポルド1世が、
ペストを終わらせてくれてありがとう、とお礼を言っております。

レオポルド1世の下の部分には、天使によって、突き落とされている
醜い老婆の姿があって目を引きますが、これがペストを擬人化したものです。

なぜペスト=老婆なのか、現代の感覚ではちょっと考えてしまいますね。
疫病=老いた醜い女、ってどういう偏見なのっていう。

何でもかんでもポリティカル・コレクトネスの洗礼を受けずに済まされない
昨今なら、たちまち人権活動家の槍玉に上がること間違いなし(笑)

 

続く。

 

 




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