映画「地球防衛軍」、最終日です。
今日は本作で「防衛軍」と呼ばれているところの自衛隊的組織に属する
軍人たちを描いてみました。
制服はいずれも実在しない軍なので映画の衣装部が用意したものです。
藤田司令らが着用しているサンドベージュの通常服なのですが、過日、
市ヶ谷に海幕長の表敬訪問に行ったら、幕僚長がこれとほぼ同じ格好をしていました。
「これが噂の新しい制服ですか」
実際見ると、本当にこの映画のにそっくりです(笑)
陸自チックに思えましたが、幕僚長によると、米海軍を意識しているのだとか。
ネットでは不評のようでしたが、米海軍と言われると、確かにその通りで、
途端になかなか宜しいような気がしてきました。
さて、従来の攻撃法では今のミステリアンに勝つことはできないことを
いやっというほど思い知らされた地球防衛軍ですが、
国連の方から来た科学者のご指導ご鞭撻と、アメリカ軍が本土より
巨大戦略輸送機で運んできた物資のおかげで、
なんとか互角に戦うことができる光明が見えてきました。
防衛軍司令部では、地下要塞の完成を阻止するために、とりあえず
マーカライトファープで攻撃を実施することが決定されました。
ただ、ここでわたしは大変なことに気がついてしまいました。
すでに何人か女性が人質に取られ、昨日も二人拉致されたばかりだというのに、
彼女らの身の安全の担保について言及する関係者が一人もいないのです。
民間人の安達博士ですら冷酷にもこんなことを言い放ちます。
「江津子さんや弘子さんを犠牲にするには忍びないが、かといって
助け出すことは不可能じゃないかな」
これはあれかな。
米軍の捕虜がいるのがわかっているのに広島に原爆を落としたアメリカ的な?
半径120キロの住民(静岡県、山梨県、神奈川県一部)が
続々と避難を始めました。
実に空気抵抗の多そうなイケてないデザインですが、これが
噂のマーカライトファープを輸送するマーカライト・ジャイロです。
英語では、
Marker-light FAHP(FAHP は Flying Attack Heat Projector )
何しろこの兵器、有効射程がたった1.5キロしかないので、これを
近くに持っていくロケットとセット販売されているのです。
本体は中央に組み込まれていて、設置する上空にきたら
ロケットのように部品を切り離してファープだけを目標に落とします。
「攻撃開始!」
旗艦α号に座乗した司令官とインメルマン博士。
なぜかインメルマンがファープ切り離しのスイッチを入れます。
α号とファープはデータリンクしてるってことなんですねこれはすごい(棒)
切り離されたファープは、自力で着地しました。
光線が発射されるディッシュ部分がターゲットに照準を当てます。
それはいいんですが、特撮の仕事が甘くて、このディッシュの形状が・・。
ハンダ加工がうまく行っておらず、エッジがデコボコしていて手作り感満載。
飛来するこの謎の物体に、ミステリアンたち、顔を見合わせています。
マラカートファープ、ドームに攻撃開始。
もちろん従来の攻撃ではドームを破壊することはできません。
この武器の特徴は、相手の撃ってきた光線をレンズで反射させることにあるのです。
ここで、科学者の一人渥美博士がとんでもない暴走を始めました。
「人も二本脚、ミステリアンも二本脚」という独自理論に基づき、
生身で基地に潜入し、単身人質を救い出す決心をしたのです。
確かミステリアンドームの地下道への入り口は本栖湖の湖底から
繋がっていたと記憶しますが、渥美博士はなんの道具も使わず、
あっさりここまで潜入することに成功しました。
畳み掛けるように地球防衛軍、略して地防軍は実在の武器、
MGR-1「オネスト・ジョン(正直者ジョン)」を撃ち込みます。
ドーム付近の地面が穴だらけになるほどふんだんに。
あーもうこれ、ドームは無事でも地下要塞は陥没してるかも。
当然捕虜の命は全く考慮していないようです。
ミステリアン部隊に非常呼集がかかりました。
しかし、ドームが意思を持って勝手に戦っている設定のミステロイド軍で、
この雑兵たちがなんのために集められ、これから何をするのか全く謎です、
思った通り、ミステリアンは科学力は高いけれども、個人の能力は大変低く、
渥美ごときの力でもあっさりと警衛を(と言っても立ち話してただけ)倒し、
武器を奪って深部に潜入を許すほどでした。
これにはちゃんとした理由があって、彼らは地球より重力の軽い火星で
幾世代にもわたって生活してきたせいで、地球上では人類より動きが鈍いのです。
攫われてきた地球人女性たちは、とりあえず今のところ、
結婚させられた(婉曲表現)様子もないようで何よりです。
そこに一人のミステリアンがやってきました。
「わたしと一緒に来なさい」
白石の妹さん、この声に聞き覚えはないんですか?
白石の元婚約者さん、あなたも、この声聞いたことありませんか?
この時、地上では地防軍とミステロイド軍の激しい攻防が行われているのに、
地下は嘘のように静かで、防音設備は完璧。
流石の技術力の高さを感じさせます。
オネストジョンとマーカラートファープの波状攻撃を受け、
苦し紛れにミステロイド軍はα号を攻撃しますが、おっと残念、
α号の機体にはマーカライトが塗布されており、光線を跳ね返すのでノーダメージです。
ただしですね。
「マーカライト半減」
映画でこのセリフだけを聞いた人は、きっと意味がわからなかったことでしょう。
劇中説明もされませんが、マーカライトの有効時間は75分だけなのです。
一体どういう物質やねん。
そもそもα号は巨大なので、マーカライトを塗り始めてから塗り終わるまで
余裕で75分くらいかかりそうなんですが。
しかし出演者は大真面目です。
「アトニジュップン!」
マーカライトの効き目が切れる時間をカウントするインメルマン博士。
「トゥエンティミニッツ!」
東京裁判の日本側弁護士だったジョージ・ファーネス。
もう少しちゃんとしたセリフを喋らせてやれよって思いました。
膠着状態をなんとか逆転せんと、司令は前回撃墜されてしまったβ号の後継機、
第二β号の発進を命じますが、まだ電子砲が装着できていないとの答え。
防衛軍技研、仕事が遅いよ仕事が。
ドームが沈んだり浮いたりしているのは苦しんでるという表現?
「すぐに攻撃中止の要請をスル。
攻撃中止しない場合は報復手段をトル」
ミステロイド軍の不思議なところは、戦っている現場が全く映らないことです。
ドームから光線を出す指令を出しているのは一体どこなのか。
それはともかく、日本側が攻撃中止するから即時退去せよ、と迫りますと、
ミステロイド軍司令兼大統領兼王は片手をかるーく上げました。
次の瞬間海底が持ち上がり、本栖湖の水が溢れ出すではありませんか。
唖然。これで捕虜が生きていると思う方がおかしいというものです。
大量の水は村々を襲い、なぜか此の期に及んで避難していなかった
(買い物かごを下げて歩いている人あり)人々を飲み込んでいきます。
橋を渡って逃げている人も。
東京電力の看板がなぜか何回も登場します。
その様子を見て楽しんでいるミステリアンの皆さん。
ふっふっふ、と笑っている様子が肩の動きに表れています。
ところが突然館内が停電しました。
その原因は渥美博士。
ミステリアンから奪った銃で辺り構わず破壊行動を起こしておったのです。
ミステリアン基地に忍び込むのにチロリアンハットをかぶって、襟には
イカしたスカーフまで覗かせているあたり、お洒落へのこだわりが見られます。
この直後、銃が弾切れ(光線切れ)を起こし、あっさり捕まってしまいました。
マーカライトの効果あと5分、という時になって、ようやく
第二β号が発進しました。
先端のレドームには電子砲を搭載しています。
渥美一人がちょっと紛れ込んだくらいでもう基地内はてんやわんや。
科学技術が発達しているという割に身近な危機管理ができていない組織と見た。
こちら謎のミステリアンに導かれた拉致乙女たち。
「皆を連れて早く逃げろ」
その声にようやく婚約破棄された元婚約者が気づいて
「亮一さん!」
気づくのが遅いよ。
「兄さん!」
だからあなたたち、今まで元婚約者と兄の声にどうして気づかなかったの。
「俺は絶対に帰らない」
白石は渥美に研究の残りの論文を託しました。
「ミステロイドの研究は完成したよ」
ミステリアン体験のみならず、連中のスポークスマンまでしたんだから、
そりゃかなりのことがわかったでしょうさ。
「この大要塞が完成すればボタン一つで大東京が灰になる。
俺はミステリアンに騙されていたんだ」
学者って、基本世間知らずのせいか、とりあえず目の前の人の
いうことを聞いて信じ込んでしまうような人が多いそうですね。
騙されていることに最後の最後まで気づかないみたいな。
ほら、誰とは言いませんけど元首相経験者にもそういう人がいるじゃないですか。
元学者のあの人も、実際に会って話した人は皆いい人なんですよって言うもんなあ。
きっと人が良すぎて周りに利用されまくってるんだろうなあ。
「俺にはまだやらなければならないことが残っている。さよなら!」
そういって基地に戻っていく白石。
ああ・・・と皆が見送っていると、
「早く逃げろ!ここはすぐにぶっ壊されるぞ」
じゃみなさん逃げましょうか、と言う雰囲気になったら、その時、
「ミステリアンの悲劇は地球にとっていい教訓だ。
高度な科学もその使用を誤ると悲惨だ」
え?まだなんか言ってるよと皆が思った時、
「地球はミステリアンの悲劇を繰り返すな!」
いいから早く行けよ。
ようやく白石の姿は消え、書き割りの奥からは爆発のような光が!
何をやった白石。
β号の機長は、電子砲を考案した科学部隊の隊長(右)です。
どうやら地球防衛軍の制服は、空軍がグレー、陸軍がサンドベージュ。
個人的に残念ながら、海軍は全く作戦に参加しておりません。
この時代にはクロスドメインという概念はまだ防衛軍には無いようです。
ところでこの隊長、電子砲で相手にダメージを与えたとわかった時、
「(よっ)しゃあ!」
と叫んじゃったりして、なかなかかっこよろしい。
自衛官なら絶対こんなこと言わないと思いますが。
マーカライト効果はあと1分で消滅です。
間に合うのかβ号。
その頃基地内は反乱を起こした白石のせいで惨憺たる有様に。
電子砲がドームに照射されました。
地下からはモゲラが出てきました。(生きとったんかい)
マーカライトファープを足元から掬って地道に倒していく作戦です。
ちなみにこのモゲラの中の人、中島春雄というスーツアクター兼俳優は、
本作でミステリアン幹部/防衛軍幹部/戦車から飛び出す自衛隊員と
一人4役をこなして演じているそうです。
中島さんはゴジラの中の人をやったことでも有名です。
ミステリアンは今や寝返った白石に次々と虐殺されていきます。
最初から味方を裏切るような奴を信用するからこんなことになるんですよ。
ミステリアンの肉体は核戦争の後遺症で異常を来たしており、
顔面にはケロイドが浮いているのが標準なのです(wiki)
電子砲の攻撃はドームの基幹部を破壊し、それだけでふらふらになった
基礎体力のないミステリアンたちは、宇宙ステーションに退避を始めました。
洞穴から外界に脱出した拉致乙女らと渥美は、大きなキノコ雲のあと、
何処へともなく飛び立つ数機の円盤を目撃しました。
β号の勇猛な隊長は、去っていく円盤を2機撃ち落としますが、
残りの5機は夕暮れの空に消えていきました。
安達博士は呟くのでした。
「彼らは永遠に宇宙の放浪者です。
我々は決して彼らの轍を踏んではならない。
「妖星ゴラス」にも同じ映像が登場したという人工衛星の図。
これが、アメリカが打ち上げたという偵察衛星のようです。
「彼らは二度と地球に近づくことはできないだろう」
終わり。
ところで、白石亮一はその後一体どうなったの?
ミステリアンを撃ち殺していたので、今更仲間になって
円盤に乗って行ったとも考えにくいし・・・・・。
やっぱり基地を破壊された時に死んでしまったのでしょうか。
それから、どうしても突っ込んでおきたいことが一つ。
α号、β号の動力は原子力ということなんですが、第一β号が撃墜され
空中で木っ端微塵になってしまうという展開において、
特殊な原子炉を保護するカプセルでも発明されていなければ、
原子炉も同時に破壊されたかもしれなかったのです。
それについて何も言ってないので多分大丈夫だったんだと思いますが、
それにしても安達博士のいう、
「彼らの轍」
とは、核が地球を滅ぼす危険性にのみ仮定が限定されていて、その実、
自分が今まさに乗っているところ原子力兵器になんの問題もなく、
その兵器が破壊されてもかけらも影響について心配していないらしいのが、
なんだかスッキリしない結末でした。
って、真面目に心配するなって話ですが。
終わり。