アメリカのテレビ番組、「HOADERS」から、一つの番組中
前回のジョニという元教師と並行して語られていたもう一つのストーリー、
アメリカ国中で推定300万人いるという「溜め込み癖のある人々」
=ホーダーズの一人について今日はご紹介します。
もう一人の溜め込み屋さんの話は、まず彼女の娘の証言から始まります。
「物に執着したり居間を散らかすだけなら好きにすればいいけど・・
とにかく何を言っても右の耳から左に抜けてくのよね」
英語でもこのことを
”go in one ear and out”
という言い方をするんですね。
彼女の名前はミリー。
自宅の庭でガーデニングに勤しんでいる彼女は実に勤勉そうで、
一見花を愛する普通の主婦にしか見えません。
草花の手入れは決してものぐさな人間にできることではない、
というイメージがありますが、花を咲かせるのが好きな人間が
片付けも好きとは限らないわけで。
そういえば、日本でも、家の前にたくさん鉢植えを置いて
草花を育てるのが好きな人が住んでるんだなというお宅がありますが、
得てしてそういううちの玄関はぎっしりと安物のプラスチックの鉢が並んでいたり、
酷いのになると発泡スチロールの箱をプランターにしているなど、
控えめに言っても「素敵」とか「おしゃれ」とは程遠かったりするものです。
もう少し量を減らしてちゃんとしたプランターなどに咲いていれば
通りゆく人々の目を楽しませることもできるのに、もしかしたら
こういう人たちは人の目などより自分さえ楽しめればいいという考えかな、
と残念な気持ちで通り過ぎるのですが、ミリーさんは
アメリカ版のこういうゴーイングマイウェイ型ガーデナーなのかもしれません。
とにかく彼女はガーデニングをしていると「幸せ」だとは言っています。
そして家に一歩入ると中はこの通り。
ミリーの長女、ジェシカさんが証言を行います。
「ドアの中に一歩入ると、そこは物の山よ。
まず中に入るのもたいへんなの。
椅子なんかどこにあるのかもわからないわ」
しかしミリーはここで生活をしているわけですから、
それなりにそこには「けもの道」ができているようです。
彼女の家はアメリカのごく普通の庶民の家です。
前回のジョニさんと違い、彼女の「ホーダー」ぶりは
家の中限定らしく、近所から苦情が来るような事態にはなっていません。
ジェシカさんは、そんな母を全否定しています。
なぜなら
「わたしは自分が本当にイケてる (have some really cool stuff)と思ってる」
からですが、母はそんなことを考えたこともないだろう、とのこと。
これは次女のチェルシーさんの写真です。
こんな写真立てにせっかく娘の写真を入れたのに、それを飾る場所もなく
物の山のうえに置かれているのです。
彼女はいいます。
「わたしの『家の最初の記憶』は、全力で走って、それから
服の山にジャンプする遊びをしたことでした」
彼女は祖父の家で2週間過ごしたとき、気づいたそうです。
うちはおかしい、と。
それから彼女は母にコンタクトを取らなくなりました。
彼女は母を捨てたのです。
これが若き日のミリーさん。
なかなかキュートな女性なのですが、どうも知性的にかなり問題があるようで、
娘が祖父の家に逃げたとき、当然の流れとしてCPSが調査にきたことを
「怖かった」
なんて言っているのです。
CPS(Child Protective Services)とは日本の児童相談所のような組織です。
母親のホーディングのせいで、チェルシーは過去6年間の間、
母親のいる自宅を出たり入ったりすることになりました。
そして、ついに母親に最後通帳を突きつけたのです。
「家を散らかすかわたしか、どちらかを選んで」
つまり母親がこのままため込み生活を続けるのなら、わたしは帰らない、
と宣言したのです。
ミリー自身は、彼女のホーディングは彼女自身の早い時期に
その原因があったと信じています。
よくわかりませんが、反抗期があったとか・・・・?
まあしかしその選択は結局彼女自身がしてきたことであり、
現在の状態はその結果ということなんですけどね。
家の中があの状態、そして外ではこうやってせっせと土いじりをする。
彼女の頭の中はやはり何か病的な問題があると見るのが妥当かもしれません。
ジェシカは母親に対してチェルシーよりもおそらく強い怒りを持っています。
彼女が自分のことしか考えていない母親失格であると語り、
自分自身と母親の関係はすっかり破壊されてしまったと断言しました。
チェルシーが母親の更生次第では家に戻るという余地を残しているのに対し、
ジェシカはもうそんな段階をとっくにぶっちぎっているので
チェルシーについても「信じられない」と言い放つ始末。
しかし、今回番組に応募しプロフェッショナルの助けを借りることにしたのは
娘たち二人の考えだったということです。
そこで番組御用達のホーダーズ専門心理学者であるトンプキン博士が登場。
早速彼女と会って「セッション」を始めますが、ミリーは
博士に対しても大変防御的な態度を取り続けています。
投げやりで問題解決しようという意欲にも乏しく、
「いっそこのホーディングの中で死んでしまいたい」
みたいなことを言うのでした。
わたしは部屋を片付けられない(あるは片付けたくない)という人が、
「いっそみんな燃えてしまえばいいのにと思う」
というのを聞いたことがあるのですが、同じ心理ですかね。
ミリーの件に駆り出されたもう一人のプロフェッショナルはこの人。
そう言う仕事があること事態おどろきますが、このドロシー・ブレインガーという女性は
「オーガナイジング・エキスパート」つまりプロの片付け師です。
早速片付け作業に突入したミリーの家ですが、そのドロシーに、
ミリーは娘たちに対する愚痴をぶちまけ始めました。
さらに自分の状態を無茶苦茶にする彼女を「軽蔑する」という言葉まで出てきたので
これはいかんとドロシーはスタッフに一旦作業を中止させました。
この後に及んでミリーさん、処分するものすべてをチェックし、
全てに触れてすべてを調べたいと言い出したのです。
なんならこれも捨てる前に触ってチェックせんかい。って言いたくなりますよね。
そんな母親にジェシカはキレて、
「なんだってわたしがこの家を片付けてると思ってんの?」
という言葉とともに、わたしはあんたの子なんかじゃない、
などとまたしても言い放ちます。
ミリーさん(´・ω・`)←冒頭写真
しかしこの人、感情の起伏が平坦というか、心理学者やオーガナイザー、
娘に何を言われても「右の耳から左の耳」で飄然としています。
自分のことなのにこの他人事感はどういうことなんでしょうか。
そのくせ物を捨てるのにいちいち干渉し、娘たちにも言いたい放題。
「そうよ、でもあなたがわたしの人生を惨めにしたのよ」
なんて我が子に向かっていいますかね普通。
壊れかけたランプを「これは幸福の灯りよ」
賞味期限切れの食べ物も「捨てないで!食べられるわ」
ミシンも置いとくんですか。
どこで縫い物するんですか。庭かな?
一向にが見られないので、ドロシーは物の山を整理するのを手伝うことによって
ミリーを軌道に戻すことを試みましたが、これがなかなかうまくいきません。
なかでも、彼女がこの小さな石さえ取っておくと言い出した時には、
手伝いに来ていた彼女の妹が怒って遠くに放り投げてしまい、
彼女はブチギレるという非常事態?に。
しかし、番組スタッフはその石をもう一度こっそり拾っておいたようです。
何にするかって?それは後のお楽しみ(棒)
そしてドロシーが娘になり代わってミリーを宥めたり透かしたり、
ときには子供のように褒めながら、なんとかゴミが片付きました。
さて、ミリーさんの場合は、ちゃんと片付けるとこまで漕ぎ着けたので、
ここで番組から素晴らしい「贈り物」が用意されます。
モノがなくなった家をプロの手で徹底的に掃除し、
見違えるようにしてくれるというサプライズです。
掃除期間を経て、次の朝」我が家に戻ったミリーの見たものは。
必ず同じ角度からの「ビフォー」を紹介します。
作業の様子もテレビでは放映されますが、電気のシェードや天井まで
くまなく清潔に掃除するだけでなくモデルルームのようにアレンジしてくれます。
なんとこれ、わずか一晩で魔法のように仕上げているのです。
しかし、床の大きなシミは取れないみたいですね。
でたー、アメリカ人の常套句、
「ママを誇りに思うわ」
ここまで片付けたのは母ちゃんじゃないんですがそれは。
「猫みたいな臭いがしないわ」
猫は清潔好きな動物なので、ちゃんと飼っていれば臭わないんですが。
猫に謝れ!
こちら台所でございます。
おっと、キッチンにはアイランド型のカウンターテーブルがあったのか。
マットの色と食器を合わせ、美味しそうにパンを盛って、
なんとディナーキャンドルまで灯されているではありませんか。
シンクも蛇口も磨いただけでこのとおり新品のようです。
本人はもちろん娘たちも感激しまくっています。
洋服で床が見えなかった寝室も・・
この通り。
壁は塗り替え、リネンや窓のカーテンも新調したようですね。
よく見ると鏡の枠まで色を塗り替えてあったりします。
オーガナイザーが見繕ったのでしょうか。カエルのプランターまで。
そしてなんと。
「この寝室はチェルシーさんに住んでいただくイメージで改装を行いました」
つまり、これならお母さんのもとに帰ってこれるでしょう、というわけです。
「まあ、なんてゴージャスなの!」
これですっかり(いつのまにか?)一緒に住むという合意は成り立ったわけで・・
「一緒にいられなくて寂しかったわ」
とハグをしあう彼女らでした。
感激の涙を流すミリー。
めでたしめでたし・・・・・
といいたいところですが。
そのときトンプキン博士が最後に皆を外に呼び集めました。
ミリーに向かってこういいます。
「あなたの娘たちと妹さんが、あなたがため込んだものを始末することができるか、
疑いを持つようになった、とわたしが思った瞬間がありました」
「この石がその象徴だったんですよ」
「いいですか、これは”招待状”なのです。
あなたがこの石を手放すことで、この”旅”を
今後も続けても構わないと思っていることを
みんなに知らせることになるのです。
さあ、これを捨ててください!」
「捨てて!」「捨ててよ」
ところが全く空気読まないミリーさん、この状況で言い放ちました。
「わたし、この石を取っておきたいの」
博士「・・・」
ジェシカ「・・・」
チェルシー「・・・」
妹「・・・」
「だいたい昨日されたことだってまだ怒ってるわ#」
・・だめだーこれあ。
トンプキン博士、呆然。
家族も呆然。スタッフももちろん呆然だったでしょう。
ビフォーアフターの映像をバックに、博士は語るのでした。
「せっかくいいエンディング用意してやったのに、
なんだあのBBA台無しにしやがって空気嫁」
・・・・じゃなくて、
「それはわたしにとって大きな失望でした。
ミリーが病気の深淵にいかに深く彷徨い込んでいるかがこの言葉ではっきりしたのです」
これだけのサプライズを用意されても、それは彼女の心を
1ミリー(ミリーさんだけに)たりとも変えることはできなかった、つまり
彼女の「病気」はサプライズや心理学の領域ではもはや如何ともし難い
ということがわかってしまったというわけです。
博士はまだ17歳のチェルシーは(そうだったんだ;)
我々がきっかけを与えることで自分を解放し、いつでも元に戻れる場所を得たので、
ミリーが元の生活に固執しない限りは、娘である彼女も
普通の生活を送れる可能性があるだろう、と語りました。
彼女はそうなる価値のある人間だ、と。
まあここまでやったら、他人にはもう手の下しようもありません。
どうなっても彼女ら自身でなんとかするしかないのです。
プロである博士にはおそらくこの後訪れる破綻も見えていると思われますが、
番組としては希望のありそうなことを述べて手を打つしかないですよね。
つまりこのきれいなキッチンが上の写真の状態に戻るのは・・・
そうだなあ、よく保って2週間ってとこだとわたしは思います。
「ミリーはセラピストとオーガナイザーに今後の生活を
維持するためにセラピストとオーガナイザーのアフターケアを受けている」
しかし二人の後ろにいる博士(笑)と娘二人の表情が全てを物語っています。
彼らにはおそらく今後の破綻が手に取るように見えているのに違いありません。
終わり