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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「危険な道」〜スカイフック作戦前夜

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アメリカ映画「危険な道」、二日目です。
真珠湾攻撃で映画は始まったわけですが、この映画は攻撃について、
真珠湾から避難した重巡洋艦と駆逐艦の視点からしか語られません。

腕を負傷しながら帰還した重巡の艦長トリー大佐(ジョン・ウェイン)は、
「CINCPAC1」という役名の実質ハズバンド・キンメル中将に呼び出されます。

なぜ実名を使わなかったのかというと、この後少将に降格されたキンメルが
映画公開時はまだギリ生きていたということかもしれません。

トリーを呼びつけて何をいうかと思ったら、

「君はジグザグ航行を怠った上で査問委員会にかけられる」

いやお待ちくださいあの非常時に日本軍を追えと命令したのは閣下だったのでは?

「燃料不足だったものですから」

「それならなぜ帰港しなかった?」

いやあなたがそれ言っちゃいますか。酷いねどうも。
そして、

「わたしも艦隊を失った責任を取るつもりだ。
お互いに好結果を信じて処分を受けよう」

キンメルは真珠湾の責任を取らされる形で大統領命により降格となり、
CINCPACは2週間の仮任命(ウィリアム・パイ中将)を経て
チェスター・ニミッツに引き継がれることになります。

さて、ここはハワイの遺体保管事務所(というかんじのところ)。
自分の出航中、よりにもよって陸軍少佐と不倫していて事故死した
妻の遺体確認にやってきたポール・エディントン中佐です。

事務所で家族を探しに来ているのは見たところ日系人ばかりの模様。

遺体確認中

「連れの男は?」

つい不倫相手のことを聞いてしまうエディントン。

「AAF(Army Air Force)が二、三日前に引き取りました」

その足でふらふらとバーに行き、陸軍航空隊の軍人の

「女を紹介してやるぞ」

という軽口にキレていきなり殴りかかるという有様。
あれだな、嫁の相手が陸軍だったというのがよっぽど堪えたんだな。

そして陸に上がって帰宅する前に営倉行きに・・・。

こちらは艦長を解任されたロック大佐です。
見送ってくれるのはバーク(アーレイ)中佐のみ。
艦長が艦を去るというのに、誰も振り向きもしません。

帽振れとはいわんけど、サイドパイプすらないのはいかがなものかと。

営倉にぶち込まれていたエディントンの引き取り人になったのは
艦長の任を解かれたばかりのトリー大佐その人でした。

喧嘩程度なら上官がカスタディ(custody)、つまり引き取り人になればOK?

ところで、このカーク・ダグラス、今年2020年の2月に103歳で亡くなっています。
死因は不明ということですが、この年ならもう老衰でいいのでは。

営倉からの帰り、彼らはハルゼー艦隊に加わる新型巡洋艦を目にします。

「AA巡洋艦だ」

AA(対空)砲を積んでいるということでCLAAという類別が与えられたこのクラス、
「アトランタ」級の防空巡洋艦を指しているものと思われますが、
艦番号が82というのはこの種に属していないのでちょっとわかりません。

ロックはうっとりと、

”She 's a tiger."(獰猛なやつだ)

といいつつ、

”A fast ship going In harm's way."(危険な道に突き進む艦だ)

とここでさりげなくタイトルを口にしております。

営倉出立ての部下と左遷されたばかりの上司。
この二人と最新鋭巡洋艦の対比は、ある評論に言わせると
皮肉なメタファーとしての表現なのだそうです。

真珠湾から3ヶ月後、ロックは骨折の予後を見るため海軍病院に出向きました。
レントゲン写真の撮影を手伝うのは医療部隊の看護師中尉です。
結果、腕のギプスは取れることになりました。

ギプスも取れたことだし、官舎のルームメイトである特別情報部員の
パウエル中佐(バージェス・メレディス)とオアフの懇親パーティに繰り出します。

パウエル中佐は女優の妻と絶賛離婚協議中という設定で、
しかもこりもせず同じことを三度繰り返している女好きのようです。
自分のことを「USシビリアン」と言っているので予備士官でしょう。

それにしても、真珠湾攻撃から3ヶ月後なのに懇親パーティとはね。
説明によると、「どこかの金持ち」のひらいたパーティだというのですが、
どちらにしてもアメリカ軍って余裕があったのね。

早速女性と熱烈友好を始めた中佐に置いてけぼりにされ、
一人になったロックに話しかけてきた女性がいます。

どこかで見たと思ったら、レントゲン撮影の時の看護大尉じゃありませんか。

「ジェレマイア・トリー少尉のお父さんでしょ?」

顔を合わせるなり彼女は、PTボート部隊にいるトリー大佐の息子の話を始めます。

まるでそのへんのおばちゃんのようです。

「トリー少尉はわたしの部下でルームメイトとつきあってるの。
彼女は純朴なタイプ(a green kid  from Vermont)だけど
彼は優等生タイプだから(a smooth Harvard type)。
彼女は彼と本気になりそうでそれが心配なのよ(直訳)」

この組み合わせで恋に落ちたとしても何が悪いのか。
っていうか、二人が本気になろうとあなたには全く関係ないのでは?

ところが驚いたことに、トリー大佐ったらこれを聴いて驚いています。
今の今まで息子が海軍に入っていたことすら知らなかったようです。

「息子は妻が育てていたんだ。
海軍に入っていたのか・・・!」

おいおい。
同じ苗字を名乗っているのにいくらなんでもちょっと連絡くらい取っとけよって。

そういえばトリーが艦長室で一人見ていた写真、これは
別れた妻と息子だったというわけですね。

ちなみにこの写真の子供は、映画「シェーン」にでていた男の子役です。
ということは・・・・?

その夜、すっかり暇になってしまったロックはPTボート基地に足を運びました。
PTボートはJFKが艇長を務めていたことで有名な魚雷艇です。

MTB squadrons と看板にかかれています。
MTBとは「モーター・トルピード・ボート」のことです。

トリー大佐は息子のジェレマイア、愛称ジェアが見張りをしていると聞いて
やってきたのですが、息子の顔を知らない悲しさ、赤の他人に

「君はトリー少尉か?」

と尋ねてしまうというお間抜けぶり。

トリー少尉とワッチをこっそり代わっていた乗員はあわてて

「すぐ上に行け、ベタ金だぞ!代理がバレた」

アメリカ海軍ではベタ金(大佐以上)を”Brass”というようです。

「トリー少尉です。サー。お呼びでしょうか。サー」

「わたしは君の父親だ」”I'm your father."

おお、あの映画以外でこの同じセリフが聞けるとは。

「イエス。サー」

「君は・・・母親似だな」

「イエス。サー」

「彼女は元気か」

「元気です。サー」

トリー少尉、全盛期の卓球の愛ちゃんのように律儀にサーサー言ってます。

そして、上官(父)に聞かれるままに指揮官であるブロデリック提督の側近になるため
不本意な任務であるPTボートを志願した、と状況説明します。

PTボートは腰掛けで、大学の専攻であるジャーナリズムの道に進むため、
無益な戦争だがせいぜいこの機会に海軍で広報をやりたい、
と小賢しいことを言い放つ小僧に思わずムカつくロック。

「無益な戦争?」

「これはルーズベルトの戦争ですよ。違いますか」

うーん、ある意味それは歴史的真実をついているがね。
それを軍人が言うことはご法度なのでは・・。

さらに、この生意気な少尉は、ブロデリック提督の作戦「スカイフック」に参加する、
と得意げにいい、それを大佐が知らないことを小馬鹿にするじゃありませんか。
怒気を含んだ声で、

「帰るよ。君をひっつかんで魚の餌にする前にな」

というと、息子はいきなり父の目を睨み据え、

「あなたが母を捨てた時わたしは4歳で全くあなたを覚えていません。
18年間私のことなど思い出しもしなかったくせにどうして今夜来たんです」

いたたた、これはお父さん痛いわ。

「・・・ただ来ただけだから、帰る」

こうして二人の再会は後味の悪いものとなってしまいました。

次の日、テント下でのランチ会場では、近くに座っているのに
目も合わさない父と子二人のトリー。

ロックが情報将校のパウエルからスカイフック作戦について尋ねますと、

「極秘の最高機密だが、誰から聞いたんだ」

「あそこの若い少尉から・・・・実はあれは俺の息子だ」

「ええ〜?話してみたいな」

「やめとけ!」

 

さて、看護師マギー中尉はやる気満々、次のデートを自分から申し込み、
ロックは満更でもなくそれを喜んで承諾しました。

そして看護師の宿舎に迎えに来ると、そこで息子とばったり鉢合わせ。
息子はマギーと同室の看護師と付き合っているのですからあるあるな話ですが。

「気が合うな」

「蛙の子は蛙です(I'm just a chip off the old block, Sir.)」

ん?なんだかお二人さん、ナースたちのおかげで和気藹々っぽい?

さて、マギーさん初デートでいきなり手料理を振る舞うという荒技に出ました。

そして最初の会話が、別れた夫(陸軍大将だった父の補佐官)の悪口ですよ。
これは落としに来ている・・・・のか?

さて、こちらは息子ジェアとガールフレンドのアナリー・ドーン少尉。
行く先は提督の「腰巾着」、オーウェン中佐の宿舎です。

アナリーとダンスのどさくさに紛れてクンクン髪の毛の匂いを嗅いだりして
上司としての役得とばかり「充電」に余念のないオーウェン中佐ですが、
でもこれ女の方にもちょっと問題がありそうです。

明らかに恋人の上司に対する儀礼を超えた誘うような目つき。

そのくせ急用でオーウェン中佐が出て行き、二人っきりになるとジェアを押し除け、

「安っぽいのは嫌なの!」

無自覚なのかわざとなのか。
さっきまでのオーウェンに対する目つきはなんなんだ。
これは誠実にお付き合いしたい男なら怒るよね。

「そうやって焦らせる方が安っぽいよ」

「なんですって?」

こういう「小悪魔Bッチ」はそのうち痛い目に遭うよ?(伏線)

さてこちら熟年カップルのデートの行方はというと、
ロックも、流れでマギーに身の上話を始めました。

別れた妻の家がいわゆる名家であったこと。
息子ができたとき嫁の実家から海軍を止めて会社を継ぐように言われ、
それが別れにつながったこと。
そして海軍に残ることを決めてから妻にも子にも会っていないこと。
(でもなぜか離婚はしていない模様)

互いの不幸話で中年カップルはすっかり盛り上がるのでした。

翌日、トリー大佐はパウエル中佐から、護衛艦が3隻、
元フランス海軍基地のあるトゥルボン島に送られる、すなわち
「スカイフック作戦」についての情報を受け取りました。

B17が着陸することのできる島をおさえることに成功すれば
000マイル四方の近海を制覇できるのです。

トゥルボンは架空の地名です。

トリーが官舎に戻ると、なんとマギーが玄関先で座り込んで待っていました。
明日戦地に出動を命じられ、もう会えないかもしれないという思いが
彼女をこの行動に借りたてたのでした。

「ハロー、セイラー」

トリー大佐もまた同じ作戦に参加することになっていましたが、
そのことは触れないまま、同室のパウエルにいきなり電話をし、

「今夜他所に泊まってくれないか」(=帰ってくるな)

 

マギーはその間もずっとタバコを吸っています。
実はパトリシア・ニールも超ヘビースモーカーで、それが原因かはわかりませんが、
頭蓋内動脈瘤を三度も患っています。


ただし、亡くなったのは2010年なので、タバコが寿命を縮めるという説は
彼女にもウェインにも当てはまっていません。

彼女はウェインと最初に共演した若い頃は彼を嫌っていたそうですが、
このハワイで行われた撮影では二人はとても「うまくいった」そうです。

二人ともいいように歳をとって角が取れていたのかもしれませんね。

話を戻しましょう。

つまりこの二人はこの夜結ばれたということになるわけですが、
二人のビジュアルに(ウェイン58歳、ニール39歳)配慮してか、
ラブシーンはなく、ロックが電話を切ってマギーの名前を呼ぶと、
マギーがナースシューズを脱ぐ足元だけが映り、あとは想像にお任せ、です。

しかし、この頃の39歳の女優って、今の同年齢より老けていてびっくりします。
ウェインの58歳で大佐役というのはサバ読みすぎで論外ですが。

さて、こちらトゥルボン基地のポール・エディントン中佐、
ハワイのカヌーに乗り、間抜けなレイをつけて登場です。

実はポール、基地の敷設隊で本人曰く
「ガソリンスタンドで車が入れ替わるのを見ているような」
つまらない仕事に甘んじています。

まあ、営倉入りしちゃったら、左遷もやむなしですわ。

何しにきたかというと、同基地に到着した看護師部隊のお迎え。

ロックからの言いつけで、マギー・ヘインズ大尉に花輪とバスケットのフルーツ、
そして底に忍ばせたお酒を届けに来たのでした。

そこでおっさん、若くてキュートなアナリー・ドーン少尉を見るなり目の色を変え、
一人の看護師に一旦掛けたレイをわざわざ外して進呈するという露骨ぶり。

こんなだからああいうの(不倫中事故死するような妻)を掴むのだとなぜ学ばないのか。

そして相変わらずアナリー、こちらも相変わらずというか、
自分に関心を持つ男に対し明らかに思わせぶりビームを放出しております。

そんなことしているとあとでろくな目に合わないよ?くどいけど。

さて、ロックはハワイ島内で民間航空防衛の監視所に、
部下のマッコーネル中尉、マックの妻ビバリーを尋ね、
直々にマックが行方不明であることを告げます。

乗っていた駆逐艦は二本の魚雷によって沈没し、中尉は
遺体も見つからないMIA(戦闘中行方不明)になってしまったのでした。

「大佐、夫は犬死ですか?」

彼女は、夫からの手紙にブロデリック提督には作戦を遂行する能力がなく、
この責任は彼にある、と書いてあったことを伝えました。

一介の中尉が提督を無能と文書で批判するのはいくらなんでも不味くないですかね。

その晩、ロックに驚愕の人事が下ります。

司令官邸におけるパーティの席で、キンメルが降格されたあと
太平洋司令官になったCINCPAC2という役名のニミッツ(ヘンリー・フォンダ)が、
ロックを大佐から准将(Rear Admiral)に昇任させるという通達を発表したのです。

ジョン・ウェインが大佐にしては老けすぎてるから?

というのは冗談で、今回ロックが処罰どころか昇任したのは、
ジグザグ航行中止の判断はやむなく、むしろ魚雷を受けた後の対処が正しかった、
とパウエルが処分を覆して昇級を強く主張したからでした。

うーん、パウエル中佐、何者?

准将となったロックに、ニミッツはスカイフック作戦遂行に際し、
有り体に言えばブロデリック提督の能力には疑念があるので、
君を送り込むのだ、と匂わせます。

「リンカーンが、官僚的仕事はできるが統率力のない
ジョージ・B・マクレランに手を焼いたときと同じだ」

残念ながら日本語字幕にはこの名前は翻訳されません。

「そこでリンカーンはグラントという名の”ヤンキー”を呼んだ」

そしてニミッツはトリー准将に自分の襟章を託しました。

 

さて、ロックはトゥルボンで作戦指揮を執り、
「太平洋のグラント」となることができるのでしょうか。

 

続く。

 


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