映画「危険な道」三日めです。
営倉入りになってからこのトゥルボン島の設営隊に飛ばされた
ポール・エディントン中佐ですが、真昼間から入り浸っている娼館に
ブローデリック提督が迎えを寄越しました。
ロック・トリー大佐がこの付近に派遣されて作戦を行うことに
この議員上がりの提督は危機感を抱き、動向を探るために
エディントンをスパイとして送り込もうというのです。
つい最近までロックの副長だったことを知ってか知らずか、
大佐に昇格させてまでガバブトゥ行きを命じました。
「へ?誰かの人間違いでは?」
「トリー准将の参謀長待遇だ」
腐っていたエディントンには願ってもない命令です。
ガバブトゥにトリー准将を乗せてきた水上機、これは
わたしがサンフランシスコのヒラー航空博物館で見てここで中身までご紹介した
HU-15 アルバトロス
に間違いありません。
これな
アルバトロス が初飛行を行ったのは1947年ですから
この頃ならおなじグラマンの「グース」G-21かPBY「カタリナ」ですね。
飛行艇からエディントン大佐が迎えるボートに乗り込むジョン・ウェイン、
60近い年齢を感じさせずにはいられないほどもたもたしています。
ポールはロックに陸上で迎えたグレゴリー大佐のことを
「パラ・マリーンズ」
と紹介しています。
パラ・マリーンズとは海兵隊空挺部隊のこと。
そう、この映画、真珠湾の映画かとおもたらなんと空挺作戦が登場するのです。
准将たちを乗せたジープが海兵隊のと列の間を走っていきます。
彼らは本物の海兵隊員ですが、ただしカネオヘ基地の軍楽隊メンバーだそうです。
ちょうど仕事がなくて全隊出動可能だったのかもしれません。
この撮影で彼らは追加の出演料を受け取らなかったということです。
水上艇や飛行機、こういう装備は本物ですが、後半の海戦シーンでは
ほとんど艦船の模型を使ったためか、ウェインとダグラスの大物スターが
出演した作品のなかでは最も制作費が安いのではといわれているようです。
トリー准将、ガバブトゥに着任し、司令部の皆さんにご挨拶しますが、
露骨にオーウェン中佐とトリー少尉(つまりブローデリック一味)を無視。
なかなか大人気ない准将です。
無視されても執拗にコンタクトを取ろうとするオーウェン中佐が、
無理やり握手にこぎつけ、
「提督は前線と密に連絡を取るべきだとお考えですが」
というと、冷たく
「提督との連絡は私を通せ。繰り返す、私を通せ。何か質問は?」
((((;゚Д゚)))))))
続いて作戦会議に入りましょう、というところで空襲が始まりました。
防空壕に避難してロックがが地図を示し説明中ですが、
地図を見なければならないほとんどの人が地図の後ろ側に立っています。
「名付けてアップルパイ作戦。
簡単だからではなく、島を三つにスライスするからだ」
まず島に空挺隊を降下させ、日本軍をおびき寄せて防御を薄くし、
三つのパートから敵の飛行場を襲い、供給を断つということだと思います。
そしてその後議題が「空挺の航空機使用に提督の許可が必要だ」という話になると、
ポールはオーウェンとトリーを会議から締め出してしまいました。
もちろん彼らに聞かれては困るからです。
敵を欺くにはまず味方からってね。
そして、提督に嘘の申請をして許可を取ることを示し合わせました。
というわけで五分くらいで仕事を済ませたロック准将、
ポールを連れて島内の病院に真っ先に駆けつけました。
目的はもちろん看護師中尉マギーに会うことです。
ハワイで最後の夜を共に過ごして以来の再会に胸をときめかせる准将に対し、
マギーの第一声は、
「影になるからどいて!」(`・ω・´)
叱りつけた相手がトリーだと知ると彼女はどぎマギーして、
「朝ならもう少しマシな顔をしてるんだけど///」
「大丈夫だよマギー、十分だ」(ただし綺麗だとは言っていない)
「どう?提督になって看護師を見たご感想は?(直訳)」
「大佐の時と同じさ」
さて、いよいよ空挺作戦が開始されました。
輸送機に乗り込んでいく空挺隊員たち。
もちろん本物の海兵隊空挺隊ですよ。
「大佐、飛行機に同乗してもいいか?」
空挺降下の飛行機に乗りたがる海軍提督というのも珍しいのでは。
まさか自分も飛び降りたいとか言い出さないよね?
こちらはオーウェン中佐とロックの息子トリー少尉。
報道陣を引き連れてやってきたブローデリック提督のお迎えです。
海兵隊に空挺部隊があることはあまり知られていません。
実際、太平洋戦線で空挺隊が空挺降下する場面は一度もありませんでした。
「スタンドアップ(起立)!」
号令により空挺隊員が一斉に立ち上がります。
アニメ「桃太郎 海の神兵」を思い出すなあ・・・。(←独り言です)
「環をかけ」というところ、英語では「フックアップ!」と言っています。
開傘させるために索を飛行機のバーに掛けるやり方は世界共通です。
「グッドラック、大佐」
「レッツゴー、メン!」
という言葉とともに飛び出していく空挺隊員。
それを入り口に座って見ているウェインの図はちょっと間が抜けています。
「🎵あいよ〜り〜あ〜お〜く〜」
この部分は実写ですが、第二次世界大戦時の訓練の映像だと言われています。
海兵隊空挺が登場するアメリカ映画は本作を含めたった二本でだそうです。
もう一つが1944年、戦争中に制作された
という作品です。
本作「危険な道」は全て架空の地名となっていますが、
こちらはガダルカナルで展開したという設定の空挺部隊の話となっています。
隊員がジャンプ真っ最中、准将のこのこ前方まで歩いてきて、
「戦闘機を2機援護に残してあとは帰還させろ」
なんかすごい勝手にフライトプランを変えさせてるんですけど。
「なんのためですか」
「観光旅行だ」
さてこちらはブローデリック提督、報道陣を集めて得意げに
「名付けてアップルパイ作戦。島を三等分するからだ
山、海岸、丘陵地帯から攻め込み落下傘部隊の降下地点で落ち合う」
ってそれどこから聞いたんだよ。
怒りのポールがジェア・トリーを隣の部屋に引っ張っていき、
「なんで提督があの作戦を知っているんだ!」
このときエディントンはジェレマイアを「ルテナント」と呼んでいますが
トリー息子、いつの間に昇進したんだろう。
昇進したせいか、腕を組んで反抗的なトリー中尉。
「残念ですが知りません、サー。」
「いいか、君らの親子関係がどうなっているかは知らん。
だがこれだけは言っておく。
オーウェンは馬鹿だが君の親父は稀に見る本物のセイラーだ」
「オーウェン中佐が馬鹿だという評価は受け入れられませんね」
「残念だがこちらも君がロック・トリーの息子だとは受け入れがたいな。
多分だれか別の奴がいつの間にか本物の息子と入れ替わったんだろうな」
この部分『親父を陥れるとは』となっていますが誤訳です。
エディントンが言っているのは「息子とは思えない」という嫌味です。
ジェレマイアはこれに激怒し、
「おい、ちょっと待てエディントン!」
「エディントンた、い、さ だ。わかったか?」
こちら降下後の空挺隊員は現地のオーストラリア人に案内されて進軍しております。
そのとき爆音が聞こえてきて瞬時に全員が地面に伏せ。
敵ではなくトリー准将の乗った輸送機と護衛戦闘機2機でした。
トリーは上空から作戦変更の指示を書いた紙をを地上の空挺隊に落としました。
これもブローデリックの裏をかくためですが、何を内部でごちゃごちゃやっているのか。
そんなことでは日本軍に勝てないぞー(棒)
帰還したロックにさっそくマウントを取りにやってきたブローデリック。
記者団を引き連れて、作戦がうまくいっていないことを指摘しようとしますが、
ロックの作戦変更によっていつの間にか日本軍は撤退し島は抑えられていました。
「チッ・・君の親父さんに出し抜かれた」
しかし息子ジェアはなぜか嬉しそうです。
要するに彼は二人の提督の資質の違いを目の当たりにしたのでした。
その後ポールは他のメンバーがいつの間にか(棒)消えてしまったバスルームで、
「腰巾着らしく親分と一緒に帰れ!」
とオーウェンを三発も平手打ち。
怒り心頭のオーウェンですが、悲しいかな武闘派とは程遠く、
ポールがいなくなってから
「軍法会議にかけてやるうう!」
と叫ぶのがやっとです。
しかも、それを冷たい目で見ていたジェアは、オーウェン中佐が
軍法会議の証人になれというのを拒み、さっさと彼の下を去っていきました。
ここで是非覚えておいていただきたいのは、ジェアが
ブローデリックを見限ったのはポールが去ったあとであり、
ポールはそのことを知らないままでいるということです。
敵の情報を探るため、ロックは現地人を敵の視察のために
日本の基地に忍び込ませることにしました。
オージーのオージーさんは、まず潜水艦から深夜ボートで岸に上陸し、
木の上で酒席の会話をこっそり聞くという効率の悪そうな諜報作戦を展開。
ってこのおっさん、そもそも日本語聞き取れるんかい。
日本軍なぜか地面に畳?を敷いて宅飲み真っ最中で、
BGMはお正月のレストランのようなお琴のミュージックです。
しかもこの将校たちの日本語、「日本語でおk」なザパニーズ。
わたしが何回聞き返しても何を言っているのかさっぱり聞き取れないのに、
オージーのおっさんにこれが理解できるわけないと思うがどうか。
こちら、オーウェンに切られてPTボートの任務に戻され、
地道に郵便物を配る仕事をしているトリー少尉です。
病院に行けばガールフレンドのアナリーに会えるのは役得です。
二人はいつの間にか婚約していました。
さて、場面は思いっきり変わってここはサンフランシスコです。
夫のマコーネル中尉がMIAであった妻べバリーが家から出てきました。
ここはロンバードストリート(坂がきついのでここだけ蛇行の道になっている)
の始まるところですが、お節介にも現在のストリートビューを貼っておきます。
驚くことではありませんが、べバリーが出てきた角の家などは昔のままですね。
ここはいつ来ても観光客と「坂降り待ち」の車で賑わっているところです。
家を出てすぐケーブルカーに乗り込みます。(右は2018年)
彼女の向かったのはサンフランシスコ港でした。
MIAだった夫のマコーネルは実は生存しており帰ってきたのです。
おまけに死んでもいないのに2階級特進で少佐に昇進しています。
マコーネルは休暇の後はトリー准将の下で任務に就くことが決まっていました。
さて、こちらはトゥルボン島の看護師たち。
看護師と兵たちの合コンじゃなくてピクニックにでかけるアナリーに、
老婆心ながらマギーが苦言を呈しています。
「エディントンとは会わない方がいいと思うけど。
あなたジェアを選んだんでしょ」
「みんなで行くのよ」
「でもエディントンと一緒になるでしょ」
「たぶんね」
「どうしてジェアにもらった指輪をしてないの」
「ちょっと大きいから失くしちゃいけないと思って」
「そうなの?」
「エディントンにはジェアと婚約したことをいうわ」
「OK」
「マギー、ちょっと楽しみたいだけよ(Just little fun)」
「エディントンと遊ぶのはやめなさい」
「なぜ嫌うの?トリー准将の親友でしょ」
「カンよ。魅力的な男だけど裏に何かある」
「何?」
「”ニジェールの微笑む若い女”を忘れないで」
マギーのいう「ニジェールの若い女」とは、イギリスの詩人、
ウィリアム・モンクハウスの詩からきています。
There was a young lady of Niger
Who smiled as she rode on a tiger;
They returned from the ride
With the lady inside,
And the smile on the face of the tiger.
つまりこういうことになるわよ、ってことですね。
注意はしましたよ、注意は(マギー談)
なのにああ、アナリーさんったら、そのトラを誘って抜け出し二人っきりになり、
わざわざ自分から服を脱いで海に飛び込み、ご丁寧にも濡れた下着姿を見せつけて、
「こっちを見ないで〜」
なめとんのかおい(怒)
男としては当然こいつ誘っていると思いますよね。
ところがこの後に及んで
「やめて!わたしジェアと婚約してるのよ!」
言うのが遅いよお嬢さん。
ほーら、おじさん目がすわっちゃった。
というわけでニジェールの若い女はトラに食べられてしまいましたとさ。
どう思います?
フェミ的にはこれでも「女は被害者、男が悪い」ってことになるのかしら。
続く。