アメリカでの用事も無事終わり、帰国してまいりました。
今回はパラリンピック開催中の帰国であり、そのせいでCovid19に対する
政府の水際対策と帰国者対策も前回とは全く変わっていました。
飛行機に乗るまで、空港に着いてから、そして帰国後。
今回の体験は今までの渡航経験ではありえないくらいのハードモードでした。
もし、何らかの用事で海外への渡航を控えている人がおられれば、
今こんなことになっているということを参考にしていただければ幸いです。
■ バックトゥースクールシーズン到来
と言いながらも、一応帰国前のことをさっくりとお話ししてからにします。
帰国少し前、大学地区の周りが交通規制されていることが2日続けてありました。
1日目はこの地域最大の規模であるピッツバーグ州立大学の、
2日目はそれほどでもない規模のMKの在籍する大学の入学式があったのです。
昨年はセレモニーの全てがオンラインで行われましたが、
アメリカの大学はほとんどが通常セレモニーをキャンパスの芝生で行うので、
マスク着用の上、出席者の椅子も距離を空ける以外平常に戻ったことになります。
各大学が少し前、学生にはワクチンを「mandate」つまり義務付けていましたが、
これらもスクールイヤー開始のための準備だったということです。
そして、大学の周りは、多数の父親と母親と子供(一人のこともあれば複数の家族も)
が群れをなして歩くというおなじみの光景が2年ぶりに復活していました。
例年と違っているのは、全員が真夏の日差しの中マスクを着用していることです。
ちょうどその頃、ターゲットという生活用品スーパーに行ったら、
いわゆる「バックトゥースクール」客でレジがものすごい長蛇の列になっており、
買い物を諦めて帰りました。
前にも書きましたが、アメリカ人にとって、彼らの子供が入学した大学に行って
セレモニーに出席し、オリエンテーションに出て、子供の入寮のために引越しや
新しくシーツやなんやを回整えてやる、というのは親として感慨深い追体験です。
自分の入学の時を懐かしく重ね合わせたり、子供のカレッジが自分と一緒であれば
感慨もまたひとしお、といった具合に。
そしてこの時期、フレッシュマンとその家族が大学街に溢れ、生活用品店が混雑し、
しばらく街が活気づくのがアメリカのひとつの風物詩となっているのです。
MKの大学のキャンパスにあり、ギネス記録を更新している
「最も頻繁に塗り替えられた柵」ですが、COVID-19のせいかずっと
手抜きだったのが、久しぶりにちょっと凝ったペイントになっていました。
ただし「uPNC」という文字も、大腸を思わせるペイントも、意味不明です。
まさかどなたかこの意味おわかりですか?
アメリカの大学は、1年=フレッシュマン、2年=ソフォモア、
3年=ジュニア、4年=シニアといいますが、
うちのMKも早くもジュニアを終え、シニアに突入します。
最終学年に向けてティーチングアシスタントのオファーもあったそうで、
親としてはぜひあと1年、悔いのないように楽しく学業してほしいと思います。
■ Pittsburgh生活
この時期のピッツバーグは突発的な雷雨にしょっちゅう見舞われます。
近隣に雷が落ちる大音響で、びっくりして目を覚ますくらいだった雷雨の夜が明け、
いつもの公園に散歩に出たら、そこら中に雷が直撃した木がころがっていました。
たとえばこのくらいならなんとか乗り越えることができたのですが、
ここでデッドエンド。
諦めて元来た道を引き返す羽目になりました。
しかしこの辺ではよくあることなので、雷雨の次の日は早朝から森林管理局の作業員が、
とりあえず倒れている木を切って、人の歩くところを確保し、あとは脇によせてしまいます。
木をどこかに運ぶことは決してせず、とにかく小さくカットしてその辺に転がしておしまい。
森林はそんな倒木や根っこから倒れた木も基本放置。
できるだけ自然を自然のままにしておくというのがこちら流です。
ピッツバーグの夏は朝と昼で気温差が激しいので、
今年は日差しが高くならないうちに散歩を済ませてしまいました。
朝早く歩くことの恩恵は、動物たちの朝ごはんに遭遇する率が高くなることです。
この辺の鹿は人馴れしていて、ちょっとこちらを見てびっくりしますが、
慌てて逃げることなく、のんびりと朝ごはんを続けていました。
至近距離に近寄って写真を撮ったのですが、それでもこの通り。
ウィンクまでしてくれました。
公園の掲示板に「スポッテッド・ランタンフライ」をみつけたらやっつけてください、
というポスターが貼ってありました。
左が成虫、真ん中が幼虫、右がさなぎの写真です。
日本名「シタベニハゴロモ」は中国、台湾、ベトナム、韓国、そしてアメリカで
2010年以降爆発的に増えている害虫で、樹液を吸って植物を枯らしてしまいます。
硬いところに卵を生むので、公園から車を出す前に卵が産み付けられていないか
チェックしてください、と言うようなことが書いてあります。
公園でこれを一度見てすぐ、ホテルの駐車場でひらひら飛んでいる
小さな(小指の爪くらいの大きさ)虫に気がつきました。
「あれ、これって・・・」
あの悪い虫そのものじゃないですかーやだー。
ポスターには、見かけたら報告してください、と書いてあるのですが、
なんとなく忘れて帰国してしまいました。(今からでも間に合うかしら)
「それにしても凶悪そうな虫だなあ・・」
なんでもこの虫、韓国から渡ってきて富山県などで観察されているとか。
ところで、先日アメリカの通販サイトを見ていて、こんな服を見つけました。
・・・似てるよね。
ちなみにこれシャネルです。
MKは夏の間大学でオナー・リサーチ(選ばれて大学院レベルの研究を行うプログラム)
と並行して報酬がもらえるプロジェクトをやっていたので、
そのお金で、兼ねてから憧れだった(らしい)ブレビルのエスプレッソマシンと
コーヒー豆グラインダーをAmazonで安く見つけて購入しました。
エスプレッソマシンはあれでなかなか粉の分量や挽き加減が難しいらしく、
届いて何回もコーヒー豆を無駄にしたようですが、さすがは理系男子、
1gずつ豆の量を変えて試行錯誤を重ね、あっという間に使いこなせるようになり、
最後の頃になると、わたしは居心地の良い彼の部屋で出してくれる
ノンデイリー、ノーシュガーアイスのアフォガードにすっかりハマりました。
■ PCR検査を二回受ける
こちらに着いてワクチンを受けたとき、まず安堵したのは
これで飛行機の搭乗手続きが楽になるかもしれない、と思ったからでした。
しかしその後、ワクチンを受けていても、搭乗予定時間72時間以内に
PCR検査を受けなくてはならないことが、航空会社からのメールで判明しました。
そこで、前と同じようにオンラインでドラッグストアのドライブスルー検査を予約し、
ピッツバーグ出発の72時間前ギリギリを狙って検査を受けました。
結果が出るのが通常2〜3日なので、前回も出発前夜に結果を受け取り、
翌朝飛行機に乗ることができたのですが、今回は事情が変わっていました。
1度目の検査後、前回とは違い、今回日本はオリンピック開催体制なので、
乗り継ぎ便出発時刻が72時間を超えていても登場拒否されるらしいのです。
あらためてTOが航空会社に電話したところ、提出書類はドラッグストアから出る
「陰性」と書かれた紙ではなく、日本政府専用の所定用紙でないとダメとのこと。
つまり、日本語併記の書類に陰性を証明するファーマシストのサインが必要です。
どう考えても72時間前の通常検査では間に合いません。
そこで、これはいかん!と次の日、1日で結果が出るドラックストアに行って再検査しました。
アメリカでのPCR検査は、鼻腔に綿棒を入れる方式で、2〜3日でも1日でも、
なんならすぐ結果が出る検査も(数が少ないので店が遠い可能性あり)どれも無料です。
最寄りの1日で検査がもらえる薬局を探し、予約時間にドライブスルーに行くと、
長さ5cmくらいの付け睫をバサバサさせたカルメン系のお姉さんがキットをよこし、
鼻に突っ込んだ綿棒をそのまま綿棒の入っていた袋に入れて返せ、といいました。
おそらくこのストアは薬局内ですぐ検査ができる設備があるのでしょう。
案内では翌日結果、ということになっていましたが、結果が来たのは2時間後。
そこですぐさま同じ薬局のカウンターに行って、ファーマシストに
日本政府の所定用紙へのサインをしてもらうことができました。やれやれ。
ちなみに最初の検査ですが、TOの結果が出たのはシカゴから国際線に乗った後でした。
待ってたら間に合ってなかったっつの。
■ 空港
翌日、出発時刻7時の2時間前に空港に到着。
機械で自動チェックインするように指示されたのでやっていたら、
パネルに「カウンターの係を呼んでください」と表示がでました。
やってきた地上係員は、
「こちらでチェックインする前に(今画面に出ているアドレスの)
日本の厚生労働省のHPに行って、登録を済ませてください」
と思わぬことを言い出すではありませんか。
うっわ、めんどくせー。
2時間前に来ておいてよかったよ。
厚労省のHPに登録するのは、帰国者管理のためでした。
つまり、厚労省が帰国者の帰国後の行動を見張り、追跡するためのシステムです。
わずか半年前とは全く変わってしまった手続きに驚きましたが、
それもこれも、オリパラ開催のための対策であり、このときはまだ
パラリンピックが開催中で、海外からの選手が入ってきていたからです。
変わったといえば驚いたのが、ピッツバーグ空港のコンコースの、
確か前は即席マッサージパーラーだったお店が、コロナ検査センターになっていたこと。
しかも公的機関の検査ではなく、民間らしく、PCRが129ドル、
Antigen(抗原検査、10分で結果が出る)が95ドル、両方でお得な175ドル。
そもそも、ここまで入ってきている時点で陰性証明済んでるのに、
飛行機に乗る直前に高額の検査を受ける人っているのかしら。
と思ったのですが、乗り継ぎ便出発が最初の検査の72時間以内でなければ、
不合理だろうがなんだろうが、もう一回ここで受けるしかありません。
つまりこの業者はそういう特殊な事情のニーズに合わせてというか、
悪く言えば「足下を見て」商売をしているというわけです。
現にその後、オヘア空港のANAのカウンターで、出発時間72時間以内というリミットに
書類の数字が間に合わなかったらしく、係員と揉めているアメリカ人女性を見ました。
どうやら1度の検査で乗り継ぎもできるとたかを括ってここまで来たのでしょう。
渡航先の日本がパラリンピック開催中という特殊な事情で、
地上係員もお役所仕事的にあなたは乗れません、というしかないわけですが。
「搭乗拒否されたらどうなるの」
「どこかで検査を受けてもう一度帰ってくるしかないんじゃない」
なるほど、そんな人のために空港内に民間検査場があるというわけか。
というわけで、ANAの成田行きが無事シカゴを飛び立ったとき、
安堵のため息を漏らしたわたしたち。
キャビンには相変わらず全部で4人くらいしか乗っていません。
しかし、気のせいか機内食がコロナ前より美味しくなったような気がします。
ただし、目に見えて一食のボリュームが小さくなりました。
量も、昔はよく食べる人に合わせていたようですが、今は搭乗客が少ないので、
これで足りないという人の追加オーダーにもきめ細かく対応できます。
廃棄する食品も少なくなるし、いいことだらけ。
出発してしばらくしてから窓を開けてみたらこんな景色でした。
そして出発から13時間後、飛行機は着陸態勢に入りました。
この写真はかすみがうら市(ひらがながデフォらしい)上空です。
最近はiPhoneで写真を撮ると撮った場所の地名が表示されます。
■ 空港での”オリエンテーリング”
着陸して降機まで、かなりの時間待たされたのは前回と同じでした。
アナウンスにより、まず乗り継ぎの乗客、それからパラリンピックの関係者
(乗ってたのか・・)が降り、最後に一般乗客の順で降機します。
降りてから検査上では一切写真撮影は禁止。
まず、誘導されてコンコースをぞろぞろ係員に着いていくと、
パイプ椅子が並んでいるので、そこに到着順に座っていきます。
前の集団がいなくなるとそこに移動していくという形で進みますが、
その間、コンコースの反対側通路を、パラリンピックに出場する
中国選手団(車椅子の人も)が、皆支給らしい透明のフェイスカバーを着用し、
マスクもつけて歩いていくのをみました。
そこから、怒涛のオリエンテーリングが始まります。
機内で記入させられた書類などの束を手に持ち、何箇所も部屋を移動するたびに
それを見せ、チェックされ、その度にパスポートを見せ、書類に何か書かれたり
押されたり、パスポート に勝手にシールを貼られたり・・・・、
そしてようやく最後に唾液によるPCR検査が行われました。
その結果が出れば、やっと放免です。
ところで、シカゴの空港で、地上係員にQRコードから獲得しておくように、
といわれたのは、
これと、
この二つのアプリでした。
空港では、携帯を見せてこのアプリが入っているか、そして
位置情報機能がオンになっているかをチェックされたものです。
前回の渡米帰国後は、2週間の自宅待機期間、毎日地元の保健所から
メールが来て、それに発熱等の有無、自宅待機をしているか、
ということを返信するシステムになっていました。
しかし、メールに返信だけして自宅待機しない人が後をたたなかったらしく、
日本政府はその後、スマホの位置情報を利用して、帰国者の所在位置をチェックする、
という強行手段にでることにしたらしいのです。
いわば、個人の公徳心というか良心に任せていたこれまでの性善説から、
人は基本待機義務など守らないもの、という性悪説に舵を切ったといえましょう。
悪貨は良貨を駆逐するの好例ですね。
しかしそもそも、この監視態勢を確立させるためには帰国者が
全員スマートフォンを持っていることが前提になるわけです。
「スマホ持ってない人って、どうするの」
「書いてあったよ。2週間の待機期間だけ空港で借りろって」
「・・・まじか」
荷物をピックアップして(荷物は全てターンテーブルから降ろされていた)
外に出たのは到着時間から2時間半後だったと思います。
公共交通機関を使えないので、その日はレンタカーを借り、
地元で乗り捨ててタクシーで帰宅しました。
■ そして・・待機期間
そして今、絶賛待機期間中なのですが、生活を毎日アプリに見張られています(笑)
8時から5時までの間、アプリからアトランダムな時間に、
「現在地報告をしてください」
「健康状態の報告をしてください」
というメッセージが入ります。
すぐさまアプリを開いて「現在地報告」を押す、あるいは
「熱がありますか」などに「いいえ」とチェックして押します。
スマホの位置情報を利用しているので、登録した自宅から
離れているときに位置情報確認が来て報告を押すと、
「自宅にいないようだが今どこにいるのか」
的なことを聞いてくるそうです。
(TOが食料品を買いに出ているときに言われたらしい)
そして、もうひとつ、アプリから電話がかかってきて
それに出ると、画面中央の楕円の部分に自分の顔を写し、
そのまま30秒間じっと自分の画像を見ていなければなりません。
これら3種類の確認は毎日全く違う時間に入り、予想は不可ですし、
位置確認はもう今日は朝終わったから、と思っていても、たまに
夕方に2度目が来たりするので油断なりません。
元々家で携帯を手にする習慣のなかったわたしは、帰国以来
どこにいくにも携帯を持ち運び、pingが鳴るたびビクッとして
「来たっ!」
「来た?じゃこっちも来るかな」(同時に登録しているせいか続けてくることが多い)
などといちいち夫婦で確認し合うという緊張した日々が続いています。
誰が考えたかこのシステム、確かにその目的を考えれば良くできていると思いますが、
見張られる方はたまったものではなく、帰国の度にこんな目に遭うとわかっていれば、
誰しも不要不急の渡航をしようとは思わなくなるだろうと思いました。
というわけで、我が家が厚労省に見張られる生活もあと少しで終わりますが、
さて、こんな状況そのものの終わりは果たしていつやってくるのでしょうか。