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映画「東支那海の女傑」中編

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新東宝映画、「東支那海の女傑」、2日目です。

李花が無情にも軍艦の砲を撃ちまくって敵に大ダメージを与えた夜、
アジトは勝利の美酒に酔う海賊たちの蛮声が響き渡りました。
海軍警備艦の乗員たちも混じって大宴会が行われています。

そんな中、横山大尉を体育館の裏に呼び出す李花。
ところが横山大尉、開口一番、こんなやばいことを言い出します。

「僕はあなたをそんな人だとは思いませんでした。
もっと・・・」

「もっと?」

「女らしいひとだと思いたかった」

アウト〜!ポリコレアウト〜!
さらに畳み込むように、

「なぜもっと女らしい道を選ばないんです!」

それを海賊の統領に言ってもだな。

自分の好み視点で相手を責める横山に、李花は、漢一族と黄一族の
東支那海の覇権をめぐる歴史的な相克について語ります。

「漢一族に復讐して東支那海を平和な海にしたいのです」

復讐、それは相手の殲滅と残党に対する容赦ない弾圧。
それを「平和」と言ってしまいますか。

しかし、これでおどろいてはいけない。
それを聞いた横山大尉、ツカツカと彼女に近づき、

「李花!」

と突然呼び捨てにして彼女の手を握ろうとするじゃありませんか。
それまでの話のどこでスイッチが入ったのか横山大尉。

っていうか人の話聞いてた?

手を握ることに失敗した横山大尉が宴席に戻ってくると、
用心棒の張恵烈がいきなりナイフを投げつけ絡んできました。

これはあれだな、嫉妬というやつだ。

いきなり殴られた横山ですが、きっかり相手を投げ飛ばしてお返しを。

この一連の激しいアクションを、天知茂はスタントなしで演じています。

横山にコテンパンにやられ、悔し紛れに短刀を振り回し、
それもやられて短銃を持ち出した張を阻止したのは李花でした。

ところで海賊たちと李花の会話は全て中国語です。
高倉みゆき発音こそあまり上手ではないものの、
長台詞もちゃんと演じています。

その晩、泰明号の周りをうろついていた漢海賊の一味が捕らえられました。
なぜそこにいたか聞き出すために、まず手下が拷問し、
縛り首にする寸前で女統領の元に連れて行きます。

すると彼女はにっこりと、

「目的を話してくれたら縄を解きます」

これで簡単に彼らは口を割るというわけですね。
そして彼らの目的とは。

「トランクを探して来いと言われました」

そこでピコーンときた李花、横山大尉をわざわざ呼びつけ、

「やっぱりあなた、何か隠していますね」

「・・・・・」(; ̄ー ̄)ぎくーっ
横山大尉、無言でしらばっくれます。

さて、ここは「呉竹」改め泰明号艦上。
「呉竹」の乗員がぷんすかしながら、海賊を指導しています。

「貴様らなんて物覚えが悪いんだ!
貴様らがちゃんとやってくれなければ俺たちは日本に帰れんのだぞ」

確かに海軍と海賊の契約は、軍艦を海賊に売って、そのかわり、
海賊は海軍艦で東支那海を突破して日本に送り届けるというものですが、

ちょっと待って?

この海賊が軍人を差し置いて海軍艦を運用する意味ってなんなの?
逆にいうと、海軍軍艦なら東支那海を突破できるってことなんじゃ?

それなら、何もこれを海賊ごときが無理して運用する意味もないですよね?

眉根を寄せながらアンニュイな表情で舷側をそぞろ歩く横山大尉を
田木少佐が呼び止めます。

「横山大尉、だんだん海賊ヅラになって来たな」

そもそも「大尉」を「だいい」と発音しないのがもうダメなんですけどね。
当ブログ的には。

「このまま海賊の頭目にでもなりますか」

「はっはっは」

しかし、田木少佐、そうボンクラでもないと見え、こんなことを言います。

「貴様の大冒険も悪い目が出そうな気がするよ」

「どういう意味ですか」

海賊同士の争いに巻き込まれかねないし、
そもそもあの女頭目が信用できない。
そういう田木少佐に横山が彼女を信用するべきだとおずおずと反論すると、

「惚れたな?あの女海賊に。
なに、海賊の女頭目をいっそのこと女房にするか」

気まずく薄笑いを浮かべる横山大尉でした。

そのとき、中国海軍が黄一族のアジトに乗り込んできました。
彼らは漢一味の密告により、日本の軍艦の存在を知ったのです。

中国海軍は李花に軍艦と日本人乗員の引き渡しを迫ります。

彼らを追い返した後、横山を憎む張は、日本人を軍艦ごと引き渡せ、
と李花に言いますが、彼女はこれをはねつけ、
我々と日本人が手を組めば中国海軍にとって脅威となる、と断言します。

「我々は無血で日本軍艦と日本軍を手に入れたいのです」



その晩、またしても李花の個室に侵入した横山大尉。

中国海軍から守ってくれた礼を言いにきた横山大尉に、
李花は、我々は中国海軍とは必ず戦う、なぜなら

「あなたたちを守って日本に返すのが海に生きるわたしたちの魂です」

とかいうんですよ。

女らしくない李花に失望したくせに、逆に海軍軍人たる自分が
女性に守ってあげると言われることになんの痛痒も感じないのか横山?

しかもほれた弱みというのか、思い入れたっぷりに

「あなたのことをもっと知りたいのです」

とかいわれて、ぺらぺらとダイヤモンド運搬の密命を喋ってしまいます。
(ちなみにこのダイヤで敗戦後の日本の再建をするそうです)

その任務遂行に力の及ぶ限り協力します、という李花。

前回拒否されましたが、今回は彼女の手を握りしめることができました。

よかったですね(棒)


ところで、新東宝と天知茂主演映画にありがちなことですが、
この映画は戦争ものではなく、主人公が海軍軍人というのは、
あまり本筋に意味がないというこの事実です。

「終戦のどさくさに日本にダイヤモンドを持ち帰る密命を受けた主人公が
海賊の助けを借りて東支那海を突破し日本まで送り届けてもらう_」

というこのあらすじにおいて主人公が軍人である必要はありませんし、
繰り返しますが、なぜ海軍が海賊に守ってもらわねばならないのか
全くわけがわかりません。

いくら沿岸に海賊が跋扈しているといっても、前半でもそうだったように
艦砲もないジャンク船など軍艦の相手ではないのですから、
軍艦でそのままぶっちぎって日本に帰ってしまえばいいのです。

考えられる可能性としては、敗戦したので中国海軍に見つかったら、
そのダイヤを接収されてしまうから、裏道を海賊に案内してもらう、
ということになろうかと思いますが、そんなこと言ってないんだよな。

いずれにしてもこの大前提にあまり説得力がないのは困ったものです。

李花をとられてやけ酒を飲んでいる張に、
当初から軍艦の中でこそこそ秘密を嗅ぎ回っていた怪しい日本人、
成見が、ダイヤモンドの奪取をけしかけます。

そのとき、前回李花が釈放した漢側の海賊二人が
やすやすと艦長室に忍び込んで、トランクを探し出しました。

あのさあ。

国家予算に相当するほどのダイヤを、どうして洋服ダンスの棚に入れて
鍵もかけず見張りもおかずに放置しておくと思うわけ?

もちろん、彼らはたちまち見張りに見つかって、
気の荒い乗員たちにタコ殴りにされるのですが、その騒ぎの中、
転がったトランクをこっそり持っていく人物がいました。

そう、もちろん成見ですよ。
なんと自分でカッターを下ろして軍艦から逃げ出しました。
もと海軍軍人かな?

ワクワクしてトランクを開けたら中から出て来たのは艦長の下着でしたとさ。
クローゼットに入っていたのですから当然でしょ?

その頃、「呉竹」あらため泰明号では、
横山らが李花に無事にダイヤモンド(らしきもの)を見せていました。

いくら説明するためでも現物を見せる必要あるかなあ。
しかもこのダイヤ、キラキラ光って原石にはとても見えません。
ブリリアントカットしてあるのかしら。

海賊団で会議が行われています。
議題は、いまさらなのですが、

「中国海軍に日本人を引き渡すかどうか決める」

それはしないと頭領の李花がもう宣言したんじゃなかったっけ。
つまり張が蒸し返してしつこく引き渡しを主張しているだけなのですが、
中国語でワイワイやっている彼らを眺めながら日本側は

「我々を引き渡すかどうかもめているようです」

と心配しています。
海賊と軍艦の売買契約をしてバーター成立したんじゃなかったのか海軍は。
もしかしたら文書とか全く取り交わしてないとか?

「我々は日本人との約束を守る!」

改めて李花が鶴の一声で議論を打ち切ったとき、ちょうど
漢一族のジャンク船がこちらに攻めて来たという知らせが入りました。

しかし、現れたのはジャンク船一隻のみ。
そのマストには、

「黄李花 大歓迎 漢万竜」

と書かれているではありませんか」

「謀られたっ!」
この一隻は囮で、軍艦をアジトから遠ざけるためだったのです。

主力軍の留守にアジトに攻め入った漢一族は、
留守番をしている者を無残にも殺害していました。

李花の侍女、長老も・・・・留守部隊は壊滅です。

ところがその中で一人生き残っていたのが成見でした。
当然彼は裏切り者の疑いをかけられます。

必死で言い訳をしますが、持っていた銃に硝煙反応がないことを
横山大尉に突き止められてしまい、田木艦長はいきりたって

「日本人の面汚しだ!俺が殺してやる」

などと銃を突き付ける騒ぎに。

そこで李花が成見を取り調べることになりました。
最後に生き残った無電師が成見を指差して死んだことから、
彼が無電師を使って漢に信号を送ったのだろうという推理です。

もう少しで自白するという時に、張がしゃしゃり出て来て、

「こんな奴は俺が本当のことを吐かせてやる!」

とか言いながら連れて行ってしまいました。
なぜかって?

もちろん彼らは裏でつるんでいるからですよ。
そして今回のことも実は張が計画したことなのです。
目的はダイヤモンドの奪取(だと思う)。

無残な殺戮の痕跡を目の当たりにした横山大尉は、今では
李花と黄一族が漢一族に持つ憎しみがよく理解できる、
と言い出しました。

「死んだあなたの部下の霊を慰めるためにも、今漢万竜を討ち、
復讐を遂げるべきです!」

「しかしわたしたちは1日も早くあなたがたを送り届ける責任が」

「ありがとう。
しかし、今この時を逸しては漢万竜に報いる時が無くなります。
我々に協力させてください!」

いやいや、軍隊というのは所属する国の防衛が主任務であって、
他所の国の、しかも惚れた女の復讐を果たすために、
一大尉が動かせるものではないんだが。

横山大尉、すっかり海軍部隊を私物化してるっぽい。
そして、

「我々は少数でも戦闘にも絶対の自信があります!
必ず勝ちます!我々を信じてください」

と胡散臭いセールスマンみたいなことを言い出すのでした。
戦闘に絶対の自信があるならどうして海賊なんぞに(略)


続く。


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