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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「フライング・レザーネックス」(太平洋航空作戦) 中編

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ジョン・ウェインの海兵隊航空もの、「フライング・レザーネックス」2日めです。

■喪失


負傷兵の輸送のためにPPY(水陸両用機)がやってた夜、
ガダルカナルには大雨が降りました。


空襲がない代わり、海から海軍が派手に艦砲を撃ち込んできます。


昼間来たばかりのPPYは撃破され、非難していた穴に爆弾が直撃して
兄をミッドウェイ で亡くしたマラーキ中尉は即死しました。

晴れわたった翌日の哨戒で、またも犠牲者が出ました。


出撃するなりアーニー・スターク中尉が、
エンジンの不調を訴え、基地への帰投を要請しました。
言下に「ネガティブ!」とそれを拒否するカービー。
しかし、アーニー、度重なる要請を出し、OKを得て離脱しました。
さて、彼の機は本当にエンジンが不調だったのでしょうか。


直後、敵機編隊が現れて交戦になります。

零戦との空戦が終了し、編隊を組みなおそうというときになって、
ジョーゲンセン大尉が、弱った敵機を見つけ、
ニヤリと笑って編隊を離脱し、追いかけていってしまいました。


しかし、ジョーゲンセン機の背後から別の敵機が襲ってきます。


機体が今度こそ炎上し、ベイルアウトしたジョーゲンセンでしたが、
パラシュートで宙吊りになっているところを日本軍に発見され、射殺されました。


帰投した隊員たちが、ジョーゲンセンの身を心配していると、
ラインチーフのクランシーがケーキを運んできました。
「砲兵隊の食堂で出しっぱなしになってたもんで」

「砲兵隊の連中、どこでこんなものを作る材料を手に入れるんだろうな」


そこに、怖い顔をした隊長と副長がやってきました。
ジョーゲンソン大尉の遺体がジャングルで見つかったのです。

「遺体置き場に行け、そしてじっくりとジョーゲンソンを見てこい!
次に単独で勝手に攻撃に行きたくなったら思い出せるように」
みんなは(´・ω・`)として言われた通りにしますが、グリフ副隊長は
「皆思い知ったでしょう。あの言い方はどうかと思いますが」
「残酷だったとでも言いたいのか」
「せっかくクランシーがケーキを差し入れしていたのに・・」
そういう問題か?
カービーもわたしと同じ意見で、同じようなことを言い、
次の瞬間、唐突にシモンズの軍法会議行きを取り消すと宣言しました。

ジョーゲンセンの死が確実になった今、貴重なパイロットを軍法会議にかけている場合ではない、と言う判断です。
そして、冷酷にも(グリフにとっては)こう言い放つではありませんか。
「ジョーゲンセンの件はシモンズのより良い教訓になったしな」


■ つのる焦燥


カービーはジョーゲンセン亡き後の部隊再編成にとりかかります。

まず、彼のバディだったパッジ・マッケイブ大尉に、
今度はアーニー・スターク中尉と組め、と告知すると、
「嫌いな奴と組むと士気が下がります。
個人的には嫌いでも好きでもないすが、彼、『操縦がが荒い』んで」
アーニーは前回の哨戒でエンジン不調を理由に
途中で帰ってしまった搭乗員です。
カービーはそれを聞いても表情を変えず、あっさりと命令撤回。
「そうか、じゃ取り消しだ」
「え・・何か不味かったっすか」

「いいや、正直に言ってくれてよかった」
そしてその足でアーニーのところへ行くと、

「俺と組め」

「少佐、私の機はエンジンの調子が悪くて・・」

「君がそう言うならそうなんだろうな」


「皆わたしと組むのを嫌がるんです」
「俺と組め」
思い切った様子でカービーを呼び止めたアーニーは、

「少佐・・マッケイブ大尉はエンジンのせいとは思ってないかもしれません」

つまり、自分が臆病風に吹かれて帰投したのを彼には見抜かれていると。

「しかし君を軍法会議にかけたら良いパイロットを失う」
「良いパイロット・・?
少佐、優秀なパイロットが任務注撃墜が怖くて汗をかいたり、
口がカラカラに乾いたりすると思われますか」

「誰もがそうだ」
「少佐も?」

「スロットルをフォワードに入れるときはな。
そうじゃないと言う奴は相手にするな、馬鹿だから」
それを聞くとアーニーの顔は別人のように晴れやかになり、
「ウィングを引き受けます」

日の丸をカーテンにするなっつーの

ある日、グリフ副長から素敵なお知らせがもたらされました。
台風が来るので敵が動けない24時間だけ航空隊は休みになるというのです。

わっと湧き立つ搭乗員たち。

「風呂入ろ!シービーズの奴ら、俺の風下に立つと鼻を鳴らしやがるんだ」

「海軍は狭い船で集団生活する形態上、清潔にこだわり不潔を嫌う」というのはどうも世界共通の傾向のようですね。
しかし、そんな彼らのささやかな期待は、次の瞬間
搭乗員の招集命令がきて、あえなく打ち砕かれました。

砲兵隊の援護任務について、砲兵隊大佐を交えた会議が行われるのです。



ピンクの横線は前線に、矢印は90m後ろに目印として設置します。
航空隊に与えられた任務は、矢印に沿って低空飛行し、
前線を攻撃しおわったら、前線と並行に退避すること。

すると、よりによってこんな会議の最中に「カウボーイ」がこんなことを。

「俺ら、休暇だと聞いてたんですがね」

他所様である陸軍大佐の前で任務に不平とはやってくれますなあ。
これは外部的にもみっともない上、隊長に恥をかかせているようなものです。
カービーはそれは噂だ、と一言で切り捨て、作戦について、

「とにかく低空飛行が作戦成功のカギだ。私の機についてこい」



するとカウボーイ、無視されて怒りが治らないせいか、

「少佐、ついでにプロペラのハブに銃剣をつけちゃどうです?」
と混ぜっ返してきました。
カービーは即座に、

「よし、貴様が大佐と一緒のジープに乗って偵察に行け。
そしたら前線で誰かが銃剣をつけたライフルを渡してくれるだろう」

とっさにこんな嫌味で答えられる、そんな人にわたしはなりたい。

砲兵隊の大佐はカウボーイの冗談になんの反応もしませんが、
彼のロデオブーツを見て呆れたような顔をします。
カービーは本人ではなくグリフに向かって、

「カウボーイ、あいつは馬鹿なのか。
ブリーフィングでジョークを言うなんて、君が義弟を甘やかすからだ」

しかし彼を庇って一方的に叱責されるグリフも面白くありません。

「休暇がもらえると思っていたところに、危険な攻撃を命じられたんですよ。
たまには休ませてやることも必要では?」



「戦場では誰にも休暇など必要ない!」

カービーはさらに、吐き気を訴えている隊員(ビリー・キャッスル)にも
出撃させろと言い放ちます。
それってマラリアじゃないのか。



ベテラン下士官でカービーの旧知であるクランシーは、
映画全編を通して「コミックリリーフ」(ボケ役)です。

燃料を手で入れるのはもううんざりとばかり、海軍設営隊の使っていた
自動食器洗い機を拝借してきて、そのポンプを「有効活用」するのですが、
このシーケンス、海軍とのカルチャーの違いもあって個人的にウケたので、
英語を一字一句漏らさず翻訳しておきます。

クランシーは大阪弁にしておきました。

「海軍さんて、こんな野営地に食器洗い機持ってきてるんですわ。
あいつら食器を手でよう洗われへんのやろか」



そこにシービーズの水兵がやってきて、

「航空隊に専用のキッチンはあるか?」

「いや、マッドマリーン(海兵隊歩兵)と共同やけど・・・何か?」

「今全部の厨房を調べてるんだが、’食器を洗うやつ’がどこかに行った」

「そらそいつ、勝手にどっかに行ってもうたんやろ。どんなやっちゃねん」

「やつじゃねーし。マシンだ」

「マシン?機械が皿洗うんかいな?」

「ああ」

「はえ〜、んなアホな話、聞いたことあらします?」

「ないなー」←カービー

「携帯キッチンユニットの一部なんだけど、自分が荷出ししたから間違いない。
もし盗んだやつを見つけたら・・・」

「砲兵隊の食堂は探しました?あいつらネコババやら平気でしよんねんで。
倫理観っちゅうもんがない連中やさかいに。ほら、あの辺におるわ」

「む・・・行ってみる」

ケーキを盗まれた上に窃盗の常習呼ばわりされて砲兵隊もいい迷惑だ。
ちなみに会話中の「mud Marine」は海兵隊の歩兵の通称というか愛称で、
同じ海兵隊でも他の職種と分けるためにこういう言い方をします。



「Mud Marine」で画像検索するといくらでもこんなのが出てくるのですが、



昨今は女性隊員も普通にこういう訓練を行います。



まあ、世の中にはこういう「マッドマリーン」(海の泥美容)も存在するので、
女性にはこの訓練、パックも兼ねて一石二鳥かもしれませんが。



見事食器洗い機のポンプで給油をしている現場を見てカービーは

「クランシー、君のこれからが心配だ」

「少佐、水陸両用部隊で海軍の食器洗い機を使うことを承認してくれますか」

「即興で創意工夫できるラインチーフを承認するのが少佐というものさ」


■ ガダルカナルの死闘

陸軍の要請を受けてカービー新隊長のもと、前線を支援する攻撃が始まりました。


朝鮮戦争で負傷者を担架で運ぶシーン
担架の背後を担いでいる兵が、撃たれたのか倒れ込んでいる



航空隊は歩兵も驚くほどの低空攻撃をやってのけます。

「これ以上低く飛べるものか?」
「独身ならね」

しかしこの日、嘔吐がとまらないと訴えていたのに
出撃を強制されて飛んだ搭乗員が撃墜されて未帰還となります。



砲兵隊大佐はその日のうちの再攻撃を要請してきました。
カービーがその時間を打ち合わせしていると、グリフがやってきて
デスクにコーヒーカップを叩きつけるように置き、睨みつけました。



死んだビリー・キャッスルのマグでした。

ちょっと余談をします。

山口の海兵隊飛行隊の基地内部をパイロット直々の案内で見せてもらったとき、
このような名前が書かれたパイロットたちのカップが
壁のボードに掛かっているのを見たことがあります。

海兵隊飛行隊だけの慣習なのか、他でもこうなのかは知りませんが、
レガシー・ホーネットの部隊であるそのユニットでは
ほぼ全員が、飲んだ後、洗わないカップをそのままラックに戻していました。
どれもこれも真っ黒なカップを見たパイロットの奥さんが呆れて、

「Boys.....」(男って・・・)

と呟くと、新婚の旦那さんであるパイロット(大尉)は慌てて

「僕はちゃんと洗ってますよ?」

と言い訳していたのが可愛かったです。


このカップは映画の中でしょっちゅう出てきますが、
(なぜか日本の旗を飾ったラックにかけてある)
カリフォルニアのメーカーがジョン・ウェインのオーダーで作ったものです。

なんでもウェインは、ここで作ったオリジナルマグに
映画クルーの名前を入れて全員にプレゼントしていましたが、
その慣習はこの映画から始まったと言うことです。

各々のカップには「デューク(ウェインの愛称)より」と書かれていました。

さて、死んだ隊員のマグをこれ見よがしに置いて見せたクリフ副長。
それは「吐き気があるのに無理やり飛ばせたから」という抗議ですが、
カービーは軍医から「吐き気は大したことなかった」と言辞を取り、
暗にそれを否定するのでした。


「文句あっか?」


「ありません」



ここで案外食えない砲兵隊大佐が、飄々とした様子で嫌味を言います。
さっき「歩兵と一緒に偵察してはどうだ」と
カービーに叱責されたカウボーイに向かって、

「君、やっぱり偵察として一緒に連れて行ってやろうか?」

それに対し、カウボーイはクソ真面目に、

「いや、私は飛ぶ方がいいです。陸の連中は荒っぽいから」

すると大佐、ニコニコしながら(怖い)

「いやいや、こちらこそ荒っぽい航空隊には怖がらせてもらってますよw」

これは、低空飛行のことを言っているのかもしれません。



カービーは例のクランシー曹長に命じてテントを集めさせます。

低空飛行に必要な目標にするつもりですが、
案の定、クランシーはそれを砲兵の部隊からこっそり「調達」してきた模様。

「砲兵の連中、自分たちのやー言うて取り返しに来たんですわ。
穴が空いてるとこにシリアルナンバーがあったはず、とか言い張るんで、
それ証明してみい、でけへんのやったら帰れ!言うたったんです」



クランシーの「調達」はこれだけではありませんでした。
カービーが去った後、MPがきて、クランシーにこんなことを。

「1時間前、トラックからランタンが十個盗まれたが、何か知ってますか」

このおっさん、調達とは他の部隊から盗んで間に合わせることだと思ってないか。

「あーそれな。ここだけの話やけど、あそこでシービーズの連中を見たわー」

食器洗い機を盗まれただけでなく、
ランタン泥棒の濡れ衣を着せられる海軍もいい迷惑だ。

ちなみにMPが去った後、クランシーは、

「Copper.」(カッパー)

と呟きますが、これは「銅」ではなく、警察官のことです。
おまわりめ、といったところで、ここではMPを意味しています。
(でもこれはある意味フラグ)



その夜、隊員は「ニップ」から略奪した「サケ」を飲んで大はしゃぎしていました。



マッドマリーンが日本の将校を殺して奪い、椰子の木の陰に隠していたのを
例によってクランシーがこっそり「調達」してきたのです。

皆の前で毒味と称して一気飲みし、その強烈さに目を白黒させるカウボーイ。



喧騒をよそに、カービー少佐は死んだビリーの家族に直筆の手紙を書きかけますが、
数行を書いたところで筆が進まなくなりました。



両親の写真、本人のID、そして遺して行ったカップ。

そこで、家族から送られてきたボイスレコード(シート)
の子供の声を聞いて気持ちを紛らせるのでした。



ミッドウェイにいるときに本国から送られてきた家族の声のシートを
彼は持ち歩き、何度となく戦地で再生しているのです。

遺族への手紙を書くのは、通常従軍牧師の仕事ですが、
牧師は今日戦死してしまったということで、隊長が書くしかありません。

しかも、今日亡くなったビリーは、マラリアの嘔吐に苦しんでいたのに
医務室に送るどころか、彼自身が命令して無理に出撃させているのです。

「本当のことなんて書けるものか!
なーにが『カクタス作戦』だ。こんなもん『靴紐作戦』だろうが」

つい軍医に愚痴を言ってしまうカービー隊長。

靴紐=shoestringは、「手元不如意」とか「物質不足」という意味があります。

日本語字幕ではこういう面倒くさそうな用語は一切翻訳できないせいか、
単に「危険すぎる」となっていますが、この翻訳はかなり変です。

どんな危険な任務であっても、部下にそれを命じ自分も毅然と出撃する軍人、
というカービー隊長という人物のキャラクター設定を考えると、
「危険すぎる」は彼がもっとも言わなさそうな台詞ではありませんか。

このように、この作品は、ネイティブにしか理解できない部分が多く、
(わたしもほぼ聞き取れず、文章で読んで初めてわかることばかりでした)
したがって、日本語字幕に頼って観ても、その面白さはおそらく
10分の1も伝わってこないんだろうなあとこういう誤訳に出会すたびに思います。



その夜、カービーは海兵隊の将軍に呼び出され、陸軍との連携でなく、
「我が歩兵の援護を低空飛行なしで」したまえ、とにこやかに釘を刺されます。
一見人が良さそうと言うか温厚ですが、なかなか腹黒い親父と見た。



日本酒でしたたかに酔い、今日のフライトは「地獄確定」となったグリフに、
翌朝クラン軍医が声をかけ、様子をうかがいます。
これも軍医の役目の一つです。



グリフは戦地での現状に苦しみ、隊員の喪失に苦しみ、
そして、その原因の一部はカービーにあると考えていました。

そんな「優秀な」指揮官だから、ここでも結果を出して上に評価されるだろう、と。

ちなみにこのとき、彼はカービーのことを、
「ダニエル・グザビエー・カービー少佐」とフルネームで呼んでいます。
アメリカ人が相手をフルネームで呼ぶとき、得てしてそれは
相手を思いっきり皮肉っているので念のため。


次の哨戒でナバホ族出身のパイロット、チャーリーが脚に銃撃を受けました。

最初のシーン(右足)


次のシーンでは左足に。もしかして単にフィルムが裏?


飛行機がひっくり返るシーンは模型使用?



彼は機体をなんとか着陸させますが、片足切断となりました。
切断したのが右が左かは不明です。



その夜野戦病院のベッドに様子を見に来たカービーに、彼は

「ナバホ族居留区の世話役に手紙を書いてくれませんか。
その人が字を読めない家族に手紙を読んで聞かせてくれるから。

そして僕の馬を売ってくれと。
この脚では荒馬はもう乗れないから・・・。
でもこれからは馬より車の時代ですよね」

と微笑みながらいうのでした。
カービーが慈愛に満ち溢れた笑顔で(こう言う時のウェインの優しそうなこと)
彼を励まして枕元を去ると、チャーリーの顔からはスッと笑顔が消えました。


続く。




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