USSシルバーサイズ潜水艦博物館の展示から、
今日はまず、潜水艦に不可欠な部品、クランクシャフトを作っていた
マスキーゴンの鋳造会社の技術についての展示をご紹介します。
クランクシャフトの「クランク」は、機械装置の一つで、
往復運動を回転運動にしたり、その逆に変えたりする装置のことです。
また、「シャフト」とは、機械などの動力伝達用の回転軸のことです。
クランクシャフトは、エンジンでピストンが往復運動をし、
その力をコネクティングロッドが伝達することで、回転の力を生みます。
赤い部分がクランクシャフト。
グレイがピストン、ブルーはシリンダーです。
■C.W.Cによるクランクシャフトの製造
このC.W.Cというクランクシャフトの会社について、
検索してみたのですが、すぐには引っかかってきませんでした。
さらに検索すると、
CWC Textron Castings
という会社がそれに該当することがわかりました。
1908年、3人のアメリカ人が立ち上げた製造会社です。
CWCという会社名は、彼ら3名の名前のイニシャルから取って
Campbell、Wyant & Cannon Foundries
というのが最初の名称だったことからきています。
ドナルド・J・キャンベル、アイラ・A・ワイアント、
ジョージ・W・キャノンの3人が会社を起こしたのは1905年。
1908年、彼らはミシガン州マスキーゴンで最初の鋳造品を生産。
(この日の生産量は5トン)。
1910年に法人化しそれからは既存の施設を拡張し、
新しい工場を建設し、繁栄、拡大の一路をたどります。
このような事業展開は、高い技術力、柔軟性を持った組織を構築し、
品質の高い新製品や改良品の開発に成功したこと、そして、
厳格な冶金管理による高い生産方式を鋳造の手法に応用したこと、
それらによって可能となりました。
高度に複雑な合金鋳鉄や鋼鉄鋳物の製造を専門とするCWCにとって、
新しい、これまでになかったアイデアは常に挑戦であり、ゆえに
多種多様な製品の鋳造に成功した最初の鋳造所になったのです。
現在、CWCの6つの鋳物工場は、1日に1600トン以上の合金鉄と
鋼鉄の鋳物を生産する能力を有しています。
戦時中、CWCは国際連合に不可欠な機器の生産に100%従事し、
1940年には事業を拡大してアメリカ合衆国最大の鋳鉄所となり、
1941年からカムシャフトの大規模な製造を開始しました。
マスキーゴンに本社工場を持ち、
年間1,200万本のカムシャフトを生産しているだけでなく、
4大陸に6,000人以上の従業員を擁しています。
事実、北米で生産される自動車の実に30%近くが、
マスキーゴン工場で生産されたカムシャフトを搭載しているのだとか。
さて、そのCWCが製造したシャフトですが、
クランクシャフトの製造法は、大きく分けて3種類あります。
1、鍛造(たんぞう)クランクシャフト
鉄の棒からロール鍛造で作る。
現在では、軽量・コンパクト・高減衰の点から
鍛造クランクシャフトが好まれる傾向にある。
2、鋳造(ちゅうぞう)クランクシャフト
ダクタイルからクランクシャフトを鋳造することである。
鋳鉄製クランクシャフトは、現在では
負荷の少ない安価なエンジンに多く見られる。
ダクタイルとは、グラファイトを球状にして、
強度や延性を改良した鋳鉄のことです。
3、機械加工クランクシャフト
高品質の真空再溶解鋼の棒であるビレットから機械加工する方法。
通常鍛造が困難な高級鋼を使用できる。
旋盤やフライス盤で削る量が多いこと、材料費が高いこと、
さらに熱処理が必要なことから、1本当たりのコストが非常に高いが、
高価な金型が不要なため、初期費用をかけずに少量生産が可能である。
C.W.Cが治金学や鋳造実戦に先駆けて残した影響のない鋳鉄所は存在しない、
とその世界の第一人者たる技術者なら、そのように述べるであろう。
というのがこのコーナーの最初の文言です。
その施設は戦時につけ平和時につけ、いつもアメリカの産業にとって
非常に重要かつ先進的な開発をおこなってきました。
C.W.Cの治金工学は、「鋳造クランクシャフト」「鋳造カムシャフト」
「遠心鋳造シリンダーライナー」「遠心ブレーキドラム」「遠心鋳造」
を生み出し、戦車の装甲から航空機の着陸装置のコンポーネントに至るまで、
さまざまなバリエーションを持ちました。
そして、戦争遂行に不可欠な、前例のない量の生産を、
最大の経済性で可能にしました。
クランクシャフトの鋳造技術はC.W.Cオリジナルの開発です。
戦前は民間生産で賄われていましたが、真珠湾攻撃後、
従来の鋳造方法では、潜水艦や護衛艦、貨物船など、
軍需品に欠かせない大型エンジンのクランクシャフトに足りません。
C.W.Cの独自技術は、1年間に合計7,500基の
ディーゼルエンジンクランクシャフトの製造の達成を可能にしました。
オートマチック・スピードシリンダー
6分でクランクシャフトの金型を打ち込むことができる
鍛造クランクシャフトと比較して、鋳造クランクシャフトの最大の利点は、
設計上の制約がないことでしょう。
鋳造の場合、金型は設計者が希望する通りの仕上がりにすることができます。
この金型で10,000ポンドのクランクシャフトができる
金型に注ぎ込まれてできたクランクシャフトの塊
さまざまな用途別の各種クランクシャフト
パワーグラインダーとクランクシャフト 洗浄中
ゴンドラ鉄道車両に積載して出荷される、
潜水艦に使用される予定のティーシリンダーエンジンのクランクシャフト。
第二次世界大戦中、CWCは55万トンもの鋳造による製造を行いました。
余談ですが、戦後すぐCWCは航空機製造会社TEXTRONに買収され、
事業拡大を達成し、2003年にKAUTEXという
ドイツの自動車部品メーカーと合併し、現在に至ります。
■ マスキーゴン・クロニクルのヘッドライン
地元紙である「マスキーゴン・クロニクル」の、
戦争中の象徴的な第一面が並んでいます。
真ん中の
「エクストラ!エクストラ!」
は「号外!号外!」でよろしいでしょうか。
日付の古い順に挙げていきます。
【1941年12月7日】
アメリカ陸軍輸送船魚雷攻撃さる
アメリカと日本交戦状態に入れり!
日本の飛行機と艦船がハワイとマニラに大規模な攻撃を開始
最新レポートではアメリカ軍が新しい世界紛争で
敵との最初の戦いに勝利したと示す
【1941年12月8日】
議会合同で召集される
米国側の死者数多数
日本警告なしに太平洋の米海軍基地を攻撃
敵による空襲の報告でホワイトハウスが仄めかした黒い知らせ
【1941年12月8日】
?隻のアメリカ戦艦日本軍によって沈む
米国議会戦争布告
米軍は3,000人の死者、負傷者
東京はアメリカ海軍艦艇に大きな損害を与えたと声明
世界の呪いはルーズベルトにかかっているという
下院と乗員が大統領の対立の呼びかけを応援
【1942年2月26日】
アメリカの潜水艦が4隻の日本艦艇を撃沈
マッカーサー元帥の軍隊が攻勢に出る
敵軍は不意の突撃に後退
ナチスの軍艦に重大な損傷を与えたとの報告
日本機を21機撃墜
【1942年5月9日】
ジャップ艦隊は撃退された!
珊瑚海海戦は「一旦停止」として日本艦隊撤退
【1942年6月6日】
ミッドウェイ海戦 大勝利!
8隻の大型日本艦に損傷を与える
【1945年8月14日】
平和!
日本はビッグ4によって定められた降伏条件を受け入れる
敗北した敵は国連の厳しい要求に頭を下げる
ワシントン 8月14日
トルーマン大統領は中央戦時今夜、日本が降伏条件を受諾したと発表。
準備が整い次第、ダグラス・マッカーサー将軍に承認される予定。
トルーマンは日本の指導者がポツダムにおけるビッグ3会議によって
定められた条件による降伏を受諾した、という
スイス政府を通じて中継された正式なメッセージを読み上げた。
トルーマンは次のメッセージを発表した。
「8月11日に国務長官から送られたメッセージへの返信として
本日午後日本政府のメッセージを受け取りました。
その返答は、日本の無条件降伏を明記した
ポツダム宣言の完全な受諾であるとみなされます」
ちなみに冒頭の紙面左下の顔写真は、以前もここで扱ったことがある、
ジョナサン・M・ウェインライト少将のもので、
戦争初期、英雄に与えられた拷問
というタイトルで、高級将官が日本の捕虜になって酷い目にあった、
ということを報じています。
マッカーサーはここぞとかつて自分が蹴落としたこの少将を
調印式に担ぎ出し、痩せ細った体を抱き寄せたりしていましたっけね。
(悪意ありまくり)
【1945年9月1日】
日本降伏調書サインの準備が整う
ミズーリ艦上で7時に降伏;8:30より放送
東京湾は大忙しに;
アメリカ人は策を弄することを良しとせず
「ルーズベルトが呪われている」とか、
ちょっとわけのわからないタイトルもときどきありますが、
まあだいたい日本人にはお馴染みの文言ばかりです。
アメリカ人は策を弄することを良しとせず、
というのもあまり意味が分かりませんが、これは
おそらく記事を読めば納得のいく内容なのかもしれません。
さすがにそこまでは文字が読めなかったので、
さすがのわたしも解読は諦めました。
続く。