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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「08/15」〜ドイツ国防軍兵士の「ありふれた」死

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1955年ドイツ制作、ドイツ国防軍を描いた「08/15」続きです。

砲兵学校で若い兵士たちが戦地に送られているのを見て、
鉄十字章授与された砲兵のフィアバイン伍長は決心しました。

この若い兵士たちを一人でも余計に死なせないためにも、
自分はとにかく前線に行って任務を果たさなければならないと。

フィアバインは、空軍少佐に足止めを解いてもらうよう直訴します。
彼がプレニエス中佐から授かった「魔法の呪文」を持って。

「中佐は少佐に『まだ煙突から煙が出ている』とお伝えしろと」



効果はてきめん。

その日の夜中、フィアバインの邪魔をしていたシュルツ中尉に、
中佐から直々に怒りの電話が入りました。

フィアバインの要求通り、即刻12名を戦線に派遣せよと。
もちろんシュルツが嫌がらせでやっていたフィアバインの足止めも中止です。

「君が我々をこれ以上困らせるなら、即刻前線にきてもらう。
そしたらケツが冷えるまでスケート三昧だな !」


「あんた・・なんなら前線に行ったら?」
電話の内容を聞いていた妻ローレは軽蔑しきった目で夫に言い放つのでした。



さてここはその戦線。
慰問団のステージ設営は終わり、それに便乗したヴィッテラー大尉御所望の
「俺とリザ(美人軍属)との愛の巣」も完成しました。

全ては補給のプラツェク伍長の横流しによる物資で構成されています。



やってきた慰問団のダンサーを早速口説きにかかるコヴァルスキーですが、
彼女はお金のなさそうな下士官には興味がなさそう。



主人公アッシュは、ヴィッテラー大尉の命令でリザを呼びに行きました。

「大尉の部屋に行くの嫌なんだけど、どうしたらいい?」
「なら、行かなきゃいいさ」

リザはヴィッテラーなんかよりアッシュに興味があるようです。



自らが志望して任務のため戦線に発つことが決まったフィアバイン伍長。
最後に一眼婚約者(アッシュの妹)に会おうと
家(レストランらしい)を訪ねますが、運悪く彼女は留守でした。



代わりに彼が足を向けたのは、シュルツ中尉の家。
別れの挨拶を告げたかったのはシュルツの妻ローレです。

ローレは彼を励ますつもりで鉄十字賞の功績を褒めるのですが、
フィアバインはそれに触れられるのをやんわりと拒否し、
苦しげに、自分が見た敵戦車の「新戦法」について語り出すのでした。

「戦車はね、敵が塹壕に隠れたら、その上を通り・・・
それから、車体をねじるんだ。
こうやって・・・こうやって・・。
すると中にいる人は・・・」



戦車の動きを模してテーブルクロスをねじる彼の手を、
ローレの手が押しとどめました。



そしてその繊細な手を握ったまま、部屋の隅のピアノに導きました。

「ピアニスト志望だったでしょ」



喜んで鍵盤に指を置き、ベートーベンのピアノソナタ「熱情」の
変イ長調の第二主題を弾き始めますが、直ぐに間違え、狼狽して

「ダメだ・・・すみません。もう弾けない。
音楽家に大砲は撃てない。

大砲を扱うようになると音楽はできなくなる。
音楽が僕の全てだったのに・・・」

すると、ローレは彼の首をかき抱き、囁くのでした。

「あなたのすべて、ですって?」


そのころ、戦線のヴェーデルマン中尉とロシア娘ナターシャも、
もうすでに一線を超えていました。

今夜出発する、という中尉に、ナターシャは
あなたが大事だから連れて行ってほしい、などと言います。



しかし、彼が去った直後にやってきた姪に、涙を堪えながら
何かをロシア語で教え込んでいます。(翻訳なし)
ドイツ軍が今夜出発するという今聞いた情報を軍に伝えさせるのでしょう。



シュルツが前線に送った12名が到着しました。
彼らはヴィッテラー大尉の無能な指揮の噂を聞き及んでいて、
本人に向かってそのことを揶揄したりします。



その晩、急拵えのステージでの慰問団のショウが始まりました。



肌も露わな美女が飛んだり跳ねたりするだけで兵士たちは大喜び。



皆がショウに気を取られている間に、プラツェクは、
食料などの物資を勝手にどこかに盗み出そうとしている模様。

何をしているんだ、と人に咎められると、

「お前らは08/15(くだらん任務)でもしていろ」

と捨て台詞を。



ステージでは、その名も「08/15の歌」が始まっていました。

08/15の歌なら知ってるでしょ
兵士の『彼女』の歌だから

どんと行け! そら一目惚れ
どんと行け!そら突っ込んだ
どんと行け!モタモタせずに

女は激しいのがお好き どんと行け!
兵士の彼女はライフルなの
このライフルの音、半端じゃない

扱い方も楽じゃない
そして撃てばその反動の激しいこと



サビ部分は全員で合唱です。


ちょうどその時間、フィアバイン伍長は、空軍少佐に
前線に戻るための飛行機を出して欲しいと頼んでいました。

少佐は、この一徹な若者に対し、

「急ぐことはない。この際だから休暇も取りたまえ」

と彼の前線行きにせめて猶予を与えようと腐心するのですが、
彼は一刻も早く戻りたいと訴えるのでした。



フィアバインに輸送機の手配を約束した少佐は、彼のような若者が
無駄な犠牲にならざるを得ない状況に、思わずため息を漏らします。



若い兵士たちの合唱はまだ続いていました。

空軍少佐がいうように、彼らは何も知りません。
自らが「無駄な犠牲」となる、このあとの運命について。



ヴィッテラー大尉に狙われていることがイヤで仕方ない軍属のリザは、
アッシュと流れでそうなってしまいます。
あれ?アッシュって確か妻子持ちだよね。



こちらはコヴァルスキーと歌手シャルロッテの即席カップル。
ベッドで寝たまま足で香水瓶を拾い上げながら(行儀が悪いな)、

「わたし、実は婚約しているの」
「あ・・ああ、そりゃおめでとう」



プラツェク伍長といい感じのこの女性は、
彼の横流しした「プレゼント」がお目当てのようです。



その頃、すでに前線に向かう機上の人となっていたフィアバインは、
婚約者のイングリッドに宛てて手紙を書いていました。
人妻ローレとのことは、死を前にした若者にとって、
心の隙間を埋めるための代償行為だったということでしょうか。

このときBGMに流れるストリングスの音は、
まるでリヒャルト・シュトラウスかと思うような壮大な調べです。
さすがはドイツの映画音楽です。


その夜の撤退作戦を控えて、出発の時間で言い争っているのは
前隊長ヴェーデルマン中尉と現隊長ヴィッテラー大尉。

「貴様、自分が優秀だと思っているのか?」
散々喚き散らして行ってしまったヴィッテラーに、
残された二人は苦々しげに吐き捨てました。

「あの08/15め!」


撤退の準備真っ最中のフォン・プレニエス中佐の元に、
防衛部隊の伍長と名乗る男が特別に面会を求めてきました。
「ソ連のスパイが3日前に我々の退却を知らせていました。
我々はその発信元を突き止めました」

「どこだ」
「第三砲兵隊の中からです」

まさか、と信じられない中佐は

「それが本当なら今すぐ攻撃してくるだろうが、何も起こってないではないか」

次の瞬間、彼の報告を裏付けるかのように砲撃音が響きました。
敵が攻めてきたのです。



この義眼の情報伍長の顔がものすごく怖い。

情報が漏れたことにいまだ半信半疑である中佐の、

「なぜ私のところに来た」
という問いに、伍長はニヤリと不気味に笑って、

「『まだ煙突から煙が』」

「な、なんのことだ」

「あなたの電話を盗聴しました」


こえ〜〜〜〜

「『煙突から煙が上がる』ことには賛成ですよ?」

「な・・・何が望みだ」

「我々の手を煩わせずにことを治めていただきたい」

つまり、中佐本人で情報の発信元を突き止めて、
ちゃっちゃと犯人を処分せよということですな。

それにしてもどこから情報が流出したのか。
中佐は考え込みながらいつもの癖で蓄音機を巻き始めましたが、
その動作がごく身近な人物の名前を想起させたのです。

「ヴェーデルマン・・・」
「ヴェーデルマン!」
そして、たった一枚残ったはずの貴重なレコードを叩き割りながら、
中佐は大声でその名の人物を呼びつけました。

「ヴェーデルマン!」



場面は即代わり、ここはナターシャの住居。

ヴェーデルマンの気配で、ドイツ軍の出発に付いていくために
荷物をまとめていた彼女が振り向くと、



彼は彼女に向けて銃を構えていました。



状況を察し、泣き出す寸前の子供。



「スパイめ、だましたな!」



「わたしの命なんて惜しくないわ」
太々しく居直る女に対してヴェーデルマンは、

「それでは、わたしの命は?」
彼女の行為は、恋人である自分の命を危うくしたという意味です。

「撃つがいいわ」
という彼女。
「女は撃たない。君のことはもう忘れた」
と冷たく言い捨て、彼女の元を去るヴェーデルマン。



残された彼女は力無く呟くのでした。

「それでもわたしは忘れられない・・あなたを」
そしてなぜか部屋の灯である蝋燭の火を摘んで消します。
何をするつもりなのでしょうか。



司令部に戻ったヴェーデルマン中尉に、フォン・プレニエス中佐は、
彼女がスパイだったかを問い、「ヤボール」という返事を聞くや否や、
彼のピストルを抜き取って銃口の匂いを嗅ぎます。
「撃ってないな」
「失態の責任を取る覚悟はできています」

「自分を軽蔑しているんだな」

そして、中尉が驚くことに、わたし自身もそうだ、と告白するのでした。

「わたしは嘘つきだ。子供もいない。
なによりこの欺瞞に満ちた戦争で祖国を危機に陥れた責任がある」

「この腐敗臭の漂う戦争に立ち向かうために、
誠実な君は生き残って手伝ってくれ。わたしのために」

命令とあらば仕方ない。
彼は自決を思いとどまり、軍の後退作戦に加わることになりました。



村落に降り注ぐ砲弾。

ドイツ軍のトラックが後にする中、家屋が破壊されていきます。

ナターシャの家も爆撃を受け、
彼女が水汲みをしていた井戸の釣り桶だけが虚しく揺れていました。



これはナターシャが最初に登場したシーンでアップされた井戸の足元ですが、
これってすべって落ちたらどうなるの?と不安になる作りです。

爆撃で犠牲になったのか、あるいはこの井戸の底に身を投げたか・・。
いずれにせよ彼女はもうこの世にいないと思わせます。



撤退が始まりました。
しかしここで問題が。
歩兵の指揮官が、自分の隊のトラックばかりを優先するので、
砲兵隊のトラックは道にすら出られず、ずっと動けない状態です。


後ろからはお構いなしに砲弾が迫ってきます。
砲兵隊は仕方なくトラックから降りてぬかるみの道に伏せますが、
そのうち車両に直撃を受け出しました。
おいおい、歩兵隊、砲兵隊を全滅させる気か。



全ての元凶はこの歩兵隊少佐。



この土佐犬みたいなのを、アッシュは適当に嘘を言って追っ払い、
代わりにヴェーデルマン中尉が立って、第三砲兵隊の移動が始まりました。


砲撃を受けて焼け野原となった旧駐屯地に戻ったアッシュは、
そこで通信機を持って帰ってきたフィアバインと再会しました。
二人で撤退先の新しい駐屯地に戻ります。



そこで待っていたヴィッテラー大尉は、フィアバインの敬礼を受けるなり、

「ああ、あの7台の戦車の(撃破で鉄十字をもらった)か」

そして、お手並み拝見とか言いながら、丘の上から敵の戦車隊を見張るという
なんのためにするのかわからん任務を押し付けようとします。



対戦車砲は戦利品のうえ、弾もろくにない状態なのに、それを使えと?


前線に着くと、彼らはさっそく5台の戦車を発見しました。
同じところで円を描くような不思議な動きをしています。


戦車は歩兵部隊のタコツボ塹壕を潰してまわっていました。
逃げ場をなくしておくためです。


もう弾が5発しか残ってないので、全発命中させでもしない限り、
相手から反撃されてこちらが不利になるのは自明の理。
・・・のはずなのに、無理やり撃たせるんだよこの馬鹿隊長は。
結果、5発全弾撃ち切って、さすがのフィアバインも1台破壊がやっとでした。



1台をフィアバインの砲撃によってやられた残りの4台の戦車が
こちらに向かってくると、ヴィッテラー大尉、
対戦車砲を牽引してきたトラックに乗って一目散に逃げてしまいました。
部下は置き去りか。



そして対戦車砲に就いていたフィアバインが戦車のターゲットにされました。



逃げ惑う彼はタコツボ塹壕に身を躍らせます。
自分がローレに説明した通りのことが起ころうとしていました。



そしてフィアバインは、頭上に戦車の影が覆いかぶさってくるのを、
塹壕の底でただ手を組み合わせて祈りながら見ていました。

この時の音楽は、不安でドラマチックな響きにアレンジされた
ベートーベンの「熱情」のテーマです。



戦車が退避してから現場にかけつけたアッシュとコヴァルスキーは、何度も何度もフィアバインの名を大声で呼びますが、
捻られて平らになった凍土からは、何の返事も帰ってきませんでした。



そして彼のいた場所から、婚約者イングリッド宛の手紙が見つかりました。

僕のイングリッド

戦争のときは皆離れ離れ 一緒の生活は許されない
みんなそうだ
だけどどんな戦争も終わる
生きていたい 君のため 子供のために

子供は女の子がいい
男の子より愛されるし 直立不動も少なくて済む
名前はカトリン バルバラ エリザベト どう思う?

人生を覗けるような窓があるといいな
戦争のない人生を
そんな窓のある家がいい
窓を開けると楽園のような庭が見えるんだ

カトリンはお花を バルバラは蝶を エリザベトは太陽を見る

平和が戻ればまた音楽とハーモニーに包まれて
おとぎ話のように 僕らは二度と離れない
それまで君のことをずっと思うよ

数百万の人がこんな生活を送っていて
でもみんな戦争のない時代に憧れている
僕と同じように
君も再会を楽しみにしていてほしい

サインはしないよ
これが最後じゃないから

「08/15」はシリーズ作となっていて、同じ登場人物が
全く違うストーリーで語られるバージョンもあります。

08/15 (1954) ORIGINAL TRAILER
この映画の「前段階」が同じ役者で演じられています。
フィアバインがかつてシュルツ中尉の妻と
何かあったらしいことがこのトレーラーで判明しました。
(1:14~)
フィアバイン、アッシュ、コヴァルスキーは訓練施設の同期で、
フィアバインはなぜだか猛烈に苛めを受けた様子が語られています。

またいつか機会があれば、こちらも観てみるかもしれません。



終わり。


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