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映画「海の牙」Les Maudits(呪われしものたち) 中編


ルネ・クレマンの限界心理ドラマ、「海の牙」二日目です。
本日はいつものイラストではなく、各国で上映された時の
ポスターを集めてみました。

まず冒頭画像は、フランスで公開されたときのメインポスター。
このポスターに「呪われしものたち」なんてタイトルなら、
オカルト映画かななんて勘違いする人もいそうです。

頭を抑えているのは、ガロッシ夫人ヒルデです。
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その2。
シルエットになっているのはフォルスター、女性はヒルデ(似てない)。
さて、それでは右側の男性は誰でしょう。

実はこの映画のポスターでトップに名前を記され、顔が描かれている
「ダリオ」という俳優は、まだ前半には出てきていません。

左は潜水艦のガンデッキで揉み合っている人影でしょうか。

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ハンガリー語でElatkozott Hajoは「呪われた船」という意味です。
このポスターでもダリオの名前が最初になっていますね。

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イタリア語は「呪われたものたち」と、原題そのまま。
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我が日本公開の時のポスターもどうぞ。
とりあえず映画のポイントを全部盛ってみました感がすごい。

「敗戦前夜密かに逃れるUボート乗組員の反目と憎しみ」

この煽り文句も火曜サスペンス劇場の予告みたい。
細かいことを言うようですが、彼らは「乗組員」じゃないんですけどね。

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日本公開ポスターもう一つ。
これもダリオの名前が最初に書かれています。

これらのポスターからは、ヒルデがこのあと、この絵のごとく、
ガウン?を翻して狂乱状態になるのがクライマックスと想像されますね。
さて、それでは「呪われしものたち」二日目です。

陸軍中将と元親衛隊の大物、その愛人「たち」と愛人の夫、
学者父娘、ジャーナリスト、途中でさらってきた医師、という
どう考えてもこいつらに何ができる的なメンバーでUボートに乗り込み、
第三帝国南米支店を創設して世界征服を企む人々。(というか二人)

そんなことできるわけないとこの二人以外は誰しも思っているわけですが、
乗りかかった船ならぬUボートは、大西洋を順調に進んでいきます。

そして南米に到着する前に1944年4月30日がやってきました。
■ ガロシの自殺

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ベルリン陥落、ヒトラー総統死去のニュースがもたらされます。

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しかしフォルスターとフォン・ハウザーにはそのニュースが信じられず、
戦略に違いない!もし本当なら公表するはずがない!と正常バイアス全開です。

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ジャーナリストのクチュリエは現実を見ようよ、と冷静。

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ガロシも今やナチスへの不信感を隠しません。

「この状況でまだ勝利を信じてるのか?」

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ヒルデはニヤニヤ笑いながら問題を矮小化してみせます。
自分に冷たくされて怒ってるのね、と言わんばかりに。
「あなたが苛立ってるわけはわかってるのよ。
でも、ずっと信念通り行動してきたのにどうしたの」

そんな妻にガロシは静かに、

「もう君の言いなりにはならない。もう終わりにしよう」

いつのまにかベルリン陥落のニュースと全く関係なくなってないか。

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夫婦の不仲の元凶がそのとき話に割って入ります。

「ちょっといいかね。
それなら君が約束したイタリア国内の産業を譲るという約束は反故か?」

「もう十分でしょう。
わたしが今までどれほど犠牲を払ったと思います?」

(ヒルデに)

「彼に教えてやれ。数えるんだ。幾晩だった?」

「な、何を言ってるの?」
「随分前から気がつかないふりをしていた。
彼と関係があることをな」

「じゃなぜ乗艦したの?
わたしなんかより自分が好きなくせに!」

「・・・・・君を愛してる。
私に残っているのは君への愛だけだ。
これ以上それを汚さないでくれ!」

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(0゚・∀・) + ワクテカ +

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そのままテーブルから立ち上がったガロシは、
「幸運を祈るよ」と皆に告げ、その場を去りました。

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そして一人甲板に出ました。
甲板では見張りが数歩歩いては折り返す規則正しい足音が響きます。

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構造物の影に降り立った彼は、自分の懐から全財産を海にばらまきました。
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そして皆の前から永遠に姿を消したのです。
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妻の裏切りを見てみぬふりをしてきた実業家のガロシですが、
第三帝国の終焉を知ると同時に、妻から悪意を浴びせられ、
彼女に自分への愛情がないことを確認するや、自分を消し去りました。

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もちろんそんな妻が夫の死に打ちひしがれる様子は微塵もありません。

額の傷を隠すためヘアスタイリングに苦労していたところ、
水兵に届けられた唯一の夫の遺品である財布に
小銭一つも残されていないのを確認し、不機嫌さを募らせます。

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そしてわかりやすく次の金蔓、フォン・ハウゼンに媚を売り始めます。

今までは愛人という立場でしたが、これからは全面的に面倒をみてもらわねば。
流石のフォン・ハウゼンも人目がある!とたしなめますが、

「夫はもういないの。気にすることないわ」

「気は確かか?少しはわきまえろ」

亭主に死なれても悲しむふりさえ見せず擦り寄ってくるこの女の厚顔に
げんなりというか辟易としている様子。

しかもこの会話を皆に聞かれているのですからたまりませんよね。
■ 蓄積する不満と悪意

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中でもジャーナリストのクチュリエは、弔意どころか、
死人が出たというのに平然としている連中にほとほと嫌気がさしています。

彼は、死んでもう何にも悩まずにすむガロシを羨ましくさえ思い、
忍び持っている毒をいつ飲むかというところまで追い込まれていました。

ただし、彼の焦りにはまだ皆が知らない理由がありました。

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こちら、その恥知らず4人組。

フォルスターとフォン・ハウゼンの間のチェスボード越しに、
ヒルデはウィリーに笑いかけ、ウィリーもニヤニヤ笑い返します。

あんたらどっちもこのおっさんたちに囲われてるのと違うんかい。

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そのとき、Uボートの水兵たちが皆で歌う
「別れの歌(ムシデン)」が聴こえてきました。
別れ (歌詞つき) 鮫島有美子 ムシデン  Muss i denn
「ムシデン」 Muss i denn は、映画「Das Boot」(Uボート)でも使われた
ドイツ民謡で、日本では「さらばさらば我が友」という歌詞で歌われます。

元々シュバーベン地方の歌詞で、愛する女性を故郷に残し、
出征する兵士が故郷に戻って結婚しようという内容であるため、
陸海空問わずドイツ軍の兵士に愛唱されていました。

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たちまちフォルスターが血相変えて怒鳴り込み、やめさせます。
言うに事欠いて

「総統が亡くなったんだぞ!それでもドイツ国民か!」

死者(ガロシ)にもう少し敬意を払え、とクチュリエにいわれて

「碌でもない男を敬っても仕方ない」

と嘯いたその直後に。

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その後、フォン・ハウゼンにチェスで負けたフォルスター、
それを軽く指摘したウィリーをいきなり引っ叩いて八つ当たり。

ウィリーの怒りのゲージが溜まっていくのが見える・・。
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潜水艦は南米に近づいてきましたが、現地の工作員から連絡がありません。
連絡がないと、上陸もできないという切羽詰まった状態になり、
フォン・ハウザーは計画者のフォルスターをなじり始めます。

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そのとき、ジルベール医師にクチュリエが近づいてきました。
君の身が危険だ、フォルスターに殺されるぞと脅しつつ、

「上陸時に逃してやるから、その代わりいざというとき証人になってくれ」

と交換条件を出してきます。
実は潜水艦にはクチュリエがスパイであるという報告が入っていました。

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上陸の知らせにヒルデは大喜び。

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クチュリエはジルベール医師に証言の約束を取り付けて一安心。

証人として彼がどこで何をどのように証言させようとしているのか、
一切説明がないのでわかりませんが、命の保証を得たと思ったのでしょう。

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学者エリクセンは、こっそりお金をポケットに詰め込んでいます。

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ジルベールは、これが逃げる千載一遇のチャンスと考えました。

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しかし前回確認した場所にボートとオールはありません。
彼はフォルスターの差金だと思っていますが・・。
■ 上陸

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フォルスターらは、とにかく誰か上陸させて様子を探ることを決定しました。

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ウィリーとUボートの少尉一人が上陸を命じられ、

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二人はゴムボートで漕ぎ出していきます。

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それを見送るUボート乗組員。

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南米の某国に上陸した二人、
現地の連絡&調達係とされる人物の会社を目指しました。

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輸入会社の社長、フアン・ラルガという人物です。

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車から降りてきた男にラルガの居どころを聞いたらシラバックれ。

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本人であることがすぐにバレて、二人に追求されたラルガは、
工作員はもうとっくに逃げ出した、と連絡しなかった言い訳を始めました。

元々ナチスの残党と一旗上げようとして、
物資調達と南米での要人への連絡係を引き受けたこの人物、
戦争が終わった今、こちらに付いても全く旨味がないと踏んだので、
勝った方のアメリカに鞍替えして商売しようとしていました。

何とかしようと口では言いながら、給油も物資調達もする気がなく、
わずかなドル札で彼らをていよく追っ払おうとします。

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Uボート士官が上に聞いてくるといって出ていった後、
彼は残ったウィリーを手なづけようとします。
ちなみに、このラルガを演じているのがマルセル・ダリオという俳優です。彼の名前は知らなくても、「カサブランカ」「キリマンジャロの雪」
「紳士は金髪がお好き」「麗しのサブリナ」「陽はまた昇る」
「おしゃれ泥棒」に出ていたということで、人気と実力をお察しください。

「落ち目の連中とは手を切るんだ。もはやドイツの時代は終わったよ」
そういって匿ってやるからコーヒー豆の倉庫に隠れていろ、
とバカなウィリーを唆していると、

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士官が怒り狂ったフォルスターを連れて帰ってきました。
居丈高に約束を破ったラルガを責める責める。

しかし、ラルガも海千山千、脅しをのらりくらりとかわします。

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ふと気づくとウィリーの姿がありません。
ウィリー、どうやらさっきのラルガの甘言を真に受けた模様。

「どこにいった!」

「知らん。ただもうあんたにはうんざりだと」

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ウィリーはラルガの言ったとおり、コーヒー豆倉庫に潜んでいました。

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ラルガを殴りつけ、ウィリーを探しにくるフォルスター。

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しかし、豆のこぼれる音で居所を知られてしまいます。

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不思議なことに、この男にひと睨みされただけで、ウィリーは
蛇に睨まれたカエルのように従順になり、前に進み出てしまうのでした。
そして、階段を登る彼の後をうなだれて着いてきます。

・・・共依存かな?
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部屋には恐怖で蒼ざめたラルガが直立していました。

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フォルスターは顎でテーブルの上のナイフを指し、
ウィリーはナイフを手にとると、ラルガに近づいていきます。

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それを見ながらタバコを咥えるフォルスター、
目線を二人にやったままライターで火をつける士官。

誰も一言も発しません。

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「Non.....Non!」

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ウィリーが外れたカーテンレールを見やって無言の殺人シーンは終了します。


続く。





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