自衛隊音楽まつり鑑賞記、最終回です。
第3章のテーマは「to the world」なのですが、そのラストに
ドボルザークの「From The New World」を持って来たということに
気づいた人はこの会場で何人いたでしょうか。
「TO」と「FROM」じゃ全く意味が全然違ってくるだろこれ、
とわたしなど思ってしまいましたが。
というようなことはさておき、その第3章が終わり、第4章のテーマは
「for Japan」。
いかにもじゃぱーん!な自衛太鼓で幕を開け、フィナーレへとなだれ込みます。
その前に、国旗が通る赤絨毯を敷く迷彩服の隊員たちを紹介するのも
毎年の恒例となっているようです。
東部方面隊から選抜された隊員で構成した部隊で、
演技支援隊
と名付けられています。
大きな楽器や大道具の出し入れなど、音楽まつりの円滑な実地の為
あらゆる仕事をする縁の下の力持ち部隊。
縁の下のといえば、本日の音楽まつりはストリーミング配信されています。
こういったことや写真、動画の撮影は
陸上自衛隊第301映像写真中隊
が請け負っているそうです。
後日この様子はDVDにして販売するので、その意味でも重要な任務です。
まず本日出演した4カ国の国旗が入場してきます。
オーストラリア、日本、フィリピンそしてアメリカ。
ふと気づいたのですが、日本以外は大戦時同盟側だった国です。
あれから70年、時は流れ、かつて太平洋で戦火を交えた4カ国が
かつての彼らの敵国である日本に会して同じ音楽を演奏しているのです。
平和って実に素晴らしいですね。
全出演音楽隊での合同演奏はまず映画「マン・オブ・スティール」
(スーパーマンシリーズ最新作)のテーマより、
What Are You Going To Do When You Are Not Saving The World?
(もし世界が救えないと知ったとき君はなにをするか)
が演奏されました。
この曲は「パイレーツオブカリビアン」、「バックドラフト」、
「ザ・ロック」「ダークナイト・ライジング」などの作曲で有名な
ハンス・ジマーの作品です。
Hans Zimmer - What Are You Going To Do When You Are Not Saving The World?
演奏の間、楽器を演奏しない隊員たちは起立して待機。
先ほど「Let It Go」をロングスカートにしろジャケットで歌った
三宅由佳莉三曹は、全身黒のパンツスーツ型制服に着替えです。
海自から二人男性歌手が出ていますが、彼らも去年とは違うメンバーです。
歌手というのは専業ではないため敢えて固定せず、上手い人には
機会を与えてできるだけたくさんに歌わせようという方針なのかもしれません。
去年は全員合唱の曲としてあの「花は咲く」が選ばれました。
皆に歌わせるため、各部隊の団員が観客席通路に並んだりしていましたが、
自衛隊側が思っているほどこの歌を歌える人というのがいなかったため、
全員が声を合わせて大盛り上がり、という目論見は「不発」でした。
自衛隊なのに。←顰蹙
余談ですが、今日たまたま車の中で海自の「花は咲く」が鳴ったとき、
(というか自分のiPodに入れているんですが)改めて気づきました。
この歌詞、もしかしたらこれを語っている人って・・・・・、
すでに「この世を去った人」=「災害で亡くなった方」なんじゃないですか?
「叶えたい 夢もあった 変わりたい 自分もいた」
「わたしは何を残しただろう」
なんで過去形で語っているのかというと、もうこの人には未来がない、
つまりもう肉体はこの世にないからではないのかと。
復興ソングのようで実は死者の立場で語る「鎮魂歌」であると。
だとしたら・・・・・・・
ちょっと評価しなおしてもいいかな、この曲。
などとひねくれ者のわたしは思ったりするのだった(笑)
しかし、だとしたら、さらに音楽まつりの最後に
皆で声を合わせて歌う曲としては相応しくないってことになりますが。
などという問題提起はともかく()去年その「花は咲く」であったところの、
「最後に皆で声を合わせて一緒に歌いましょう」的なフィナーレ曲は、
「RESTART 」。
知らねー(笑)
東日本大震災後、雨後の筍のように生まれた復興チャリティソングの一つで
(刺があるかしらこの言い方)
TUBEの元メンバー(あ、今もか)が作曲したのだそうです。
テレビを見ている人は、もしかしたら知っているのかもしれませんが、
わたしは最初の
「さあ、その顔を上げて」
の部分に聞き覚えがあると言う程度でした。
わたしがその程度の認識ってことは、会場で歌えるほどこれを知っている人は
皆無と言っていいほどだったのではないかと思います。
現に、周りの人は誰一人歌っていませんでした。
はっきりいって去年の「花は咲く」より知名度ないよこれ?
まあ、良い曲かそうじゃないかというといい曲なんでしょうが、
わたしはいいたい。
何でいつまでも復興チャリティソングなの?
「復興応援」はトロンボーンの「ソング・フォー・ジャパン」で
十分、というかあれはあれで大変効果的かつ感動しただけに、
今年の選曲ははっきりいってもう少し別のものはなかったのか、
と思わざるを得ませんでした。
いわゆる「チャリティソング」というカテゴリの音楽に対して
そのあざとさとか『一緒に感動しましょう!』みたいな下心が鼻につくので、
いつも辛辣な目と耳で評価してしまう、わたしのような人間だけかもしれませんが。
自衛隊の音楽まつりというステージの構成上、ここに持って来る曲は
「そういう曲」が無難というか定石であるのはよくわかります。
個人の好き嫌いとは全く別に、音楽まつりは隅から隅まで、
勿論この部分もこういう風に考えさえしなければ完成度が高く、
エンターテインメントとして完璧に満足いくものでしたが、
あえてこの傾向に、わたしはここでひっそり苦言を呈しておこうと思います。
今年は陸海空から各4人ずつ出された歌手が
少しずつソロを取り声を披露しました。
空自の男性歌手はどちらも長身の男前です。
出演部隊が総出で手振りを付けて歌います。
防大儀仗隊の中に去年ノリノリの君がいたので今年はどうかなと
探して見たら・・・・いました。
第302保安警務中隊だけが何もしません。
彼らはこんな瞬間にも起こるかもしれない不測の事態に備え、
特に政治家のいる中央席を警戒する必要があるからです。
まあ,ここでだけは起こらないでしょうけど。不測の事態。
そこの防大儀仗隊の君ー、
そこは拳を合わせるだけで、においを嗅ぐのではありませんよー。
ともかく、自衛官たちの素顔らしきものが垣間見られるのがこのパートの楽しいところ。
こちらは歌わずとも、十分楽しませてもらえます。
空自の旗ふりガールズ。
正確には
航空自衛隊演技隊
と名前がついています。
頂いたコメントによると、20代の隊員に声をかけて選抜するようですね。
衣装は毎年同じなので、取りあえずこれが着られるのが最低条件。
メイクも、たとえばアイシャドウにブルーを使って工夫しています。
ピアノ、ハープ、ドラム、パーカッション、シロフォン、ベース・・。
ドリルを行わない音楽隊もしっかりステージで演奏を支えました。
復興チャリティソングが終了した後は、なぜか
「タラのテーマ」
で退場となりました。
なぜこの曲?と首を傾げた人も多かったと思いますが、
単に「風と共に去りぬ」→「去りぬ」→「退場」→\( ̄▽ ̄;)/
ではなかったかと・・・・。
タラのテーマはいつのまにか團伊玖磨の
「祝典行進曲」
に代わり、厳粛な雰囲気を取り戻して終わりです。
祝典行進曲の似合う第302保安警務中隊。
彼らの白い制服とドリル演奏が見られるのはこの音楽まつりだけ。
2008年、保安中隊は方面総監直轄部隊から防衛大臣直轄の保安警務中隊となり、
司法警察職務任務が付与されるようになりました。
保安中隊時代には広報活動の一環としてファンシードリルを行っていましたが
保安警務中隊への改編に伴い行なわれなくなったため、
この音楽まつりにおけるドリルの参加は一般の目に触れる唯一の機会です。
ですから一層貴重な彼らのドリル演奏をわたしは食い入るように見てしまいます。
目の保養とか、そういうつもりじゃありませんからね!///
全部隊がフロアからいなくなった後、イングリッシュホルンとバスーン奏者だけが
そこに残って、「新世界より」の第二楽章「家路」のメロディを奏でます。
その静かな響きの中、はためく日の丸の前まで歩んだ空自音楽隊長は
最後の敬礼をして音楽まつりの終了を告げます。
来年は海上自衛隊がメインとなるわけですが、またそのご報告を
ここで出来ることを祈って平成26年度音楽まつりのご報告を終わります。
というわけで今年最も印象的だった一節は?
♪ すこーしも寒くないわ ♪(ち~ん)