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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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如何に狂風吹きまくも〜日向灘・掃海隊訓練

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掃海艇に乗ったのは一般見学も含めて初めての経験です。
舞鶴や横須賀の軍港めぐりツァーで乗るクルーズ船に比べると段違いの安定性があり、
少なくとも波のない港内を航行している限り、今日は楽勝!に思われました。

しかし、わたしははっきり言って冬の日向灘をなめていました。

この前日、山の上から「ぶんご」が給油しているとき、遠目にも、
甲板が全面的に見えたり、全く見えなくなったり、つまりあの大きな掃海母艦が
波にあおられて大揺れしていたのをさんざん見ていながら、
翌日、同じ海で、小さな掃海艇がどんな揺れに見舞われることになるのか、
神ならぬ身には、というか、掃海艇初体験の身には想像すべくもなかったのです。
(予告編)




ともかく掃海艇は今岸壁(に繋留した僚艦)を出港しました。
鳴り響く出港ラッパをしかとこの耳で確かめ、感慨に耽っていると、
赤いストラップの双眼鏡をつけた隊司令が颯爽と登場しました。
隊司令、誰かに向かって海軍式敬礼中。

うーん、さすがは司令、ラフで貫禄たっぷりの敬礼ですな。

メインマストには、目にも鮮やかな自衛艦旗が掲揚されています。
軍艦マーチこそ鳴らないけれど、掃海艇独特のキビキビしたスピーディな出港に、
護衛艦のときとは違う雰囲気を感じて、期待はいや増します。



外でずっと写真を撮っている報道の人もいましたが、わたしはとりあえず艦橋内に戻り、
操舵の様子を見守ることにしました。

掃海艇の艇長(艦長ではありません)は3等海佐です。
幹部は艇長ほか、船務長、機関長、掃海長。
水中処分員の乗り込んでいる艇には「処分長」がいます。

「航海長」「砲雷長」がおらずにその代わりと言ってはなんですが、
「掃海長」がいるわけです。

掃海長というのは、掃海に関わることすべて、つまり

掃海、敷設、水中処分、射撃、照射、運用、発射及び水測に関すること

を所掌する長なので、掃海艇においてはメインの役職と言えるでしょう。
補給長の仕事は基本的に誰が兼務してもいいそうですが、専門の長はいません。
そういえば副長という役職もいませんが、これは乗員の数が少ないからでしょうか。



掃海艇艇長は3佐ですが、艇長の椅子は赤青2色です。
護衛艦であれば「赤青の椅子は2佐」と説明してしまうところですが、
艇長および艦長であれば、階級が3佐であってもこのツートンカラーの椅子なのです。

出港後、隊司令が

「ここからしばらく何もないので、寒いですから中に入ってください」

と皆を促し、皆そこでぞろぞろと艦橋に入っていったのですが、そのとき

「ここは写真に撮らないようにお願いします」

と、報道に向かって注意がありました。
それが2枚上の写真の3尉が向かっているのと隣のモニターです。
上の写真も、とりあえず艦長の右上のモニターの数字は自主判断で消しておきました。



わたしたちに説明をする隊司令。
今回乗り込んだ「えのしま」、「ちちじま」、そして隣にいた「はつしま」
の三兄弟は横須賀の第41掃海隊の所属で、この方はそのトップです。

「今日この掃海艇の中で一番暇なのはわたしなので、
質問があればなんでも聞いてください」

と笑いを取りながら、実際にも色々と説明をしてくださいました。



激しくぼけてしまいましたが、艦長席の下側です。
やはり掃海艇ですから、椅子にはショックアブゾーバーを搭載しています。
昨日見学した「ぶんご」どころではない衝撃が来ますからね。



「座って見られたらどれだけショック対策がしてあるかわかります。
ぜひ一度試してみてください」

そう言われて畏れ多くも隊司令の席に座ってみました。
ちなみに、掃海隊の司令は2等海佐ですが、椅子は赤です。(護衛艦では赤は1佐)

椅子に落ち着くのにフカフカのクッションの山をよじ登る、
といった感じで、これならショックを全面的に吸収するだろうと思われました。
波の揺れも吸収しそうなので、長時間の航海もここにいれば楽かもしれません。



細島岸壁のある奥まった港を抜けると、すぐに「竹島」が見えてきます。
本当に、全国どこにでもありますよね。「竹島」という名前の島。

竹島は島と言うより本土から繋がった半島のような島ですが、
グーグルアースで見ると満潮で孤立してしまうので、人工構造物はありません。



ジャイロの前の幹部は、掃海艇の場合船務長でしょうか。

船から竹島の端っこが見えていますが、竹島を過ぎると、ようやく
港の外側に出たところ、といった感じです。
海面に波はほとんど見えませんが、風はあるので船は大いに揺れます。



隊司令のヘルメットはいかにも臨時でつけたようなシール付き。
艦橋に幹部用のヘルメットが並んでいますが、掃海艇の場合
掃海作業に入るときには必ずこれを被ることに決まっているのかと思われます。



昨日、桃源郷岬というところから掃海母艦の給油作業を見守りましたが、
そのときに見えていた「枇榔島(びろうじま)」が近づいてきました。
人は住んでいませんが、これもグーグルアースによると、
島の頂上に何か塔のような建造物らしいものが見えます。
この写真を拡大すると、かすかになにかありますが、これ、なんだろう・・・。

秘密基地?



見張りの隊員が着用している赤い手袋も官給品でしょうか。
まるで鍋つかみのようにごついですが、これなら完璧に風を防ぎそうです。

波は穏やかなので一見快適なクルーズのように見えているものの、
実はこの瞬間もびょーびょーと風が吹きまくっていて、わたしなど、

「♪いかに〜きょおふうう〜吹きまくも〜いかに〜どとう〜は〜逆巻くも〜」

という一節が、頭の中にリフレインしたくらいでございます。
そして、わたしも手袋をしてくればよかった、と心の底から思いましたです。


今回は観艦式ではないので、乗り込んでくる「素人」はなく、報道も
少なくとも作業の邪魔になっているという様子はありませんでしたが、
出航作業のときに、何て言うのか忘れましたが、赤くて細いロープが跳ねて、
報道の人のカメラに当たったということがありました。

見ていても気の毒なくらい、近くの乗員は狼狽して、

「だいじょうぶですかっっっ!!!」

と声をかけてきたのですが、本来乗っているはずもないシチュエーションに、
部外者が乗っているわけだから、まあこういうこともあるだろうと皆思ったに違いありません。
わたしもあらためて、危険も起こりうる掃海艇に乗り込んできていることを認識したものです。



彼らは地元テレビのクルーだったような気がする。
訓練海域に到着するまでの間、しばらく全員がこんな感じで
出港の様子と艦橋などを写真に撮ったり、周りの景色を眺めたりして過ごしました。

後方に出港してきた港の入り口が見えています。



日向灘のこの辺りには「クルスの海」という面白い地名もあったりします。
リアス式海岸なので海岸線にも複雑な岩の形が見られるのですが、
この枇榔島は大変特徴があって、無人島なのに専門のwikiもあるくらいです。

それによると、今は無人島ですが、かつて「美女が住んでいた」という伝説があり、
(なんなのこの漠然とした伝説は)「美女島」とか「美女ケ島」という名もあるそうです。
島の形は柱状節理の切り立った岩断崖絶壁だそうなので、どう見ても人は住めませんが。



ちなみに最初の枇榔島の写真では切り立ったナイフのように見えていたのが
この穴の空いた部分で、ここはすでに枇榔島ではなく「タテベ」といいます。
タテベの左の部分が「小枇榔」(こびろう)。
タテベと小枇榔の間にある小さい岩、これが「ブリバエ」。

最後のは、こんな変な名前ならつけないほうがマシ、って気もしますが、小さな岩にまで
名称をちゃんともらっていて、どんだけ愛されているのか、という枇螂島さんでした。

なお、枇榔島は、1キロ半にわたる全島域が日豊海岸国定公園に指定されています。



そのときです。
東の空はこんなことになっていました。

「見てみて、太陽が・・・」

「まるで旭日旗ですね」

少し高くなった朝の太陽が、雲の上から見事な放射状の旭日光を作りました。
思わず見とれ、次に夢中でシャッターを切ります。

海上自衛隊の訓練がこれから始まろうという時、これはなんという吉兆でしょうか。
その途端、

「♪ みーよとおかいのーそーら明けて〜、きょーくじつ高くかーがやけば〜」


何かと言うと脳内で軍歌が鳴り響くこの体質、何とかならんか。



続く。


 



 


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